第1084話 神の器
【まさかよ、それって有夢を】
【兄ちゃんが地球で死んだ理由って、アンタが殺したってこと?】
俺より早く叶君が反応した。それだけじゃねー。ここにいる全員、俺や叶君と同じことを考えたみてーだ。しばらく時間が経ってからアナザレベルからその答えが返ってきた。
【……その通りですよ。あの子は三代目アナザレベルにするつもりで、この場から地球に干渉して殺しました】
【ちょっと前にあった、隕石とか氷漬けの家みたいに?】
【その通りです】
なんで家を氷漬けにしたり隕石落として来たり、雷を大量に降らせたりはできたのに、有夢を殺すときだけアパートから鉢植えをおとすだけだったんだ? ……まあ、それはいいとして自分で有夢を殺してここに連れて来ておいて危険因子になっちまったから別世界を作って封印するなんて、あまりにも自分勝手じゃねーだろうか。
【……テメェは昔から勝手だよナァ】
【……魔神は黙っていてくれませんか】
誰よりも先に身勝手だと指摘したのは意外にもスルトルだった。それに対してアナザレベルは答えるつもりはないようだが、昔からとはどう言うことだろうか。いや、神様どうしなんか因縁があるんだろーけどよ。
【そうだ、スルトルの言う通り。デイスはどこにやった?】
【彼女のことは今はどうでも良いではありませんか】
【そうだな、我が心配なのはあゆちゃんと、みかちゃんだ】
【……本当に、魔神は黙っててください】
魔神達からの質問はなぁなぁで流してやがる。特に最期のシヴァの一言にはキレ気味だった。やっぱなんかあるんだろうな。有夢と美花について問われたからキレたというより、シヴァがその発言をしたからキレたといった感じだ。
【……話を戻しましょう。私はあの子を三代目アナザレベルとしてこの世界に連れて来ました。容姿はともかく、あの器量、あの人望、あの発想力、なによりあの忍耐力……この世界において神になるにふさわしい人間であると、目星をつけていたのです】
【まあ兄ちゃんは確かにそうかもしれないけど、で、なんでそれが危険因子としてここまで嫌がらせしなきゃいけないことになったの?】
【……私の誤算でした。あの子は中途半端で満足してしまった】
中途半端で満足しただと? これだけやってどこが中途半端なんだ? むしろあいつはレベルを上げにあげて、あげ続けたじゃねーか。まあいい、話の続きを聞かなきゃわかんねーよな。
【うちの子は転生だって500回以上したんだ。それでも貴方の言う神の器に足りなかったの?】
【ええ。……ではここでレベルメーカーの正体についてお教えしましょう。レベルメーカーとは……スキル、そしてそのスキルを手に入れた瞬間に入手できる称号のことです】
【マァ、ただのスキルと称号じゃねーけどナ!】
【魔神は黙れと言っているでしょうに】
有夢がレベルメーカーつうスキルと称号をずっと手に入れなかったことで、アナザレベルはしびれを切らしたってことか。そういやあいつ、アイテムマスターのスキルを手に入れてから単純な攻撃系スキル以外はほとんど作ってこなかったな。レベルとステータスは上げるだけ上げていたんだが。
【神の器となるにはレベルメーカーは必須。しかしどう作るかを教えるわけにはいかないのです。教えたら作りかたが変わってしまう特殊なものだから。……だから私はあの子に自力でレベルメーカーになって欲しかった。しかし、あの子はアイテムマスターだけで満足してしまったのです】
【わふ、それならそれで他の神の器を探せばよかったんじゃないの?】
【狼族の娘よ、だから私はそうするためにあの子を別空間に送ったのです。あの子は私の期待にそぐわなかった。しかし、あの子を残したまま次の神の器を呼ぶわけにもいかない。確実に、あの子のペースに飲み込まれて堕落するでしょう。……心当たりのある方は何人かいるはずです】
ま、まあ、この世界に来てアイテムマスターの恩恵にあやかってからは俺たち色々楽しまくったからな。たしかに神の器とやらの新しいのを用意しても、有夢はお人好しだから、同郷の人として近づいてもてなしただろう。んで、そいつがレベルメーカーっていうスキルを作るに至るまで頑張ろうとは思わないわけだ。
【うちの子を勝手に連れてきておいて、やれ失敗だのやれ期待はずれだの失礼なことを言ってくれるけど……。まあ、世代交代を急いでいたのはわかったよ。地球にも誘拐した子供を自分の跡取りとして勝手に育てるっていう事案、ないわけでもない。でも、それじゃあ美花ちゃんや翔くんはどう説明するの?】
【そう……そうですよ! 俺や幻転丸さんはなんなんですか!? どうして俺達は連れてこられたのです? 賢者はたしかに何人もいる。しかし、俺達だけ扱いがまるで違うではありませんか! 何百年もいいように貴方や魔神に利用されたのですよ?】
有夢んとこのおじさんと、光夫さんがそういった。すぐにアナザレベルの答えが返ってくる。
【彼女達はあの子のために用意しました。そして、メフィストファレス、幻転丸、貴方達は神の器候補だったのです】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます