閑話 リルとリロ

「わふ、ちょっと出かけてくるね」

「……お? おう」



 ショーがドラゴンフラッグをしながら私に返事をした。あんなハードなトレーニングをさも当たり前のようにやってるショーは、流石だといえるよ。……そういえば私が、ショーだけでなくミカちゃんもサクラちゃんも誰も連れずに一人でお屋敷の外にでるのはすっごく久しぶりかもしれない。下手したら初めてまだあるよ。

 どうして私がこうして一人でお外に出たか。それはとある人に呼ばれたからなんだ。相談があるって。私とその人の接点は、友達の友達……かな? 一緒に遊んだことはあれど、二人で話したことはない間柄。それに生まれが違いすぎる。この国の大臣の娘さんだからね。まあでも、呼ばれたからには行くしかないよね。

 すぐにお城について中に入れてもらうと、私を呼んだ張本人が迎えに来てくれた。たぶん普段着なんだろうけれど、貴族の普段着だからとても高級感あふれたものを身に纏ってる。



「リルちゃん、急に呼んでごめんね!」

「わふわふ、大丈夫」

「じゃあ私と部屋に行こう!」



 私は連れられるままに彼女のお部屋に入った。わふー、貴族の子供のお部屋ってこんな感じなんだね。お姫様のお部屋とあんまり変わりがないよ。



「じゃあとりあえずこの椅子に座って」

「わふん」

「それにしても助かるよー! ミュリや姫様には相談できないことだからねー。私の友達でこの悩みを共感してくれそうな人はリルちゃんだけだったの!」

「わーふ」

「そういえばリルちゃんと私って結構似てるとこあるよね。ほら、リロとリルって、一文字違いだし!」



 わふん、確かにそう。私もアユちゃんから紹介された時はちょっぴり驚いたよ。名前は一文字違いで、髪の長さは一緒(私はクセがあるから一見違うように見えるけど)、身長も近くて、何より特徴的なのが胸だね。

 自分で言うのもなんだけど、アユちゃんと姫様を中心とした十代の集まりの中でも二人は圧倒的な大きさなんだ。まあ、ミカちゃんもほんとうはかなり大きいけど、アナズムサイズの時は姫様より一歩先程度だから。



「それで、相談したいことって?」

「……うん、これのことなんだけど」

「……あー」



 リロさんは私よりも一つか二つカップが上の大きすぎる胸を持ち上げた。この間、みんなで水着になった時、ものすごいインパクトだった覚えがある。リロさんの胸を見ていたミュリさんの目、あれが死んだ目っていうやつなんだなーって思ったよ。



「ミュリに相談しても、『イヤミですか!?』っていきなり怒鳴られちゃって……。だから体型が近いリルちゃんに相談をね」

「わふわふ。リロさん自体はそれをどう思ってるの?」

「んー、重いし、前見づらいし、肩凝るしで邪魔かなーって。でも体の一部だから切り離したりできないでしょ? リルちゃんも同じくらい大きいのに胸が邪魔で悩んでるってことなさそうだったから、相談してみたの。さっき急に思い立っちゃって」



 わふわふ、なるほど。リロさんはリロさんなりの悩みもあったと。ミュリさんと比べたら些細な問題だと思うけどね。



「太って見えてるんじゃないかって考えることもあるの。でも、リルちゃんはとってもスリムでしょ? 何か秘訣があるんじゃないかって思うの」

「わふー、あるよ! わふわふ、私に相談したのは大正解でしたね」

「そーなの!?」

「わふん、リロさんの胸に関する悩み、全部一気に解決しちゃうよ!」



 というわけで私は今まで培ってきたノウハウをリロさんに教えた。最近、私ってこういうことばっかりアドバイスしている気がするんだ。地球で、将来はこういうアドバイザーにでもなろうかな? 

 ただ、胸が大きすぎて悩んでるって相談者は初めてだったから、今回は私としてもいい経験になったよ。私が日頃やってることそのまま反映させられるのもいいね。



「なるほど……」

「わふー、男の人って絶対、どんなに紳士でも、どんなに正義のヒーローでも、どんなに女の子みたいな見た目をしていても、絶対胸が好きだからね!」

「これを邪魔モノじゃなくて、魅力と考えるのかぁ」

「あとは私が教えたストレッチも欠かさないように!」

「うん、頑張る! ありがとうリルちゃん!」



 リロさんが私に抱きついてきた。圧迫感がすごいね。私も他の人に抱きついてる時はこのくらい圧迫感を与えてるのかな。まあショーにはわざと思い切り押し付けてるし、感じてくれてるはず。



「よーし、さっそく私の魅力を使って、もっとルインを虜にするんだから!」

「わふん、私もそれで自分の彼氏を虜にしたからね。絶対有効だと思うよ! じゃあ私はこれでおいとまするよ」

「ありがとうねリルちゃん! 本当に相談してよかった! ミュリにもリルちゃんに相談するよう促してみようかな?」

「わふわふ、呼ばれれば来るからね!」



 わふー、一仕事終えたよ。みんな理想の体型を追い求めて、私がその手伝いをするのはとても気持ちがいいね!

 ……でも待ってね、たしかリロさんの彼氏のルインさんってこの国の王子様だったよね? そんな人を私に対するショーのように、リロさんのあの大きな胸の虜にする……? あれ、私ってもしかしてまずいこと教えたかな? リロさん、触らせる気も満々だったしなぁ。リロさんが触らせることの、ルインさんが触ることの中毒にならなきゃいいけど……。

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