第1060話 ラストマンとポイズンマン 2

〔く……うっ……うおおおおおおおお!〕

〔ハハハハハ、っ……! ハハハハハハハ!〕

〔ヒーロー・パンチ!〕



 ラストマンは拳に光属性を纏わせポイズンマン・カラミティを殴りつけた。まとった光はポイズンマンに着弾するとともに強く発行し、爆発する。その爆発は地面を揺るがすほどの衝撃であった。



〔ぐおおおっ。今のは俺様の本体まで響いてきたぜ……だが、まだまだだなぁ! カラミティ・キック〕

〔ヒーロー・グリッター!〕

〔なにぃ!?〕



 ラストマンの全身が光りだした。先ほどまとっていた光の対象が拳から全身に変わったのは明らか。慣れない巨体の操作に途中で蹴りを止めることができず、カラミティ・キックはそのままラストマンに当たる。



〔ごふっ……くぅ……〕

〔しまっ……ぬああああああああッ! は、はなせ!〕



 ラストマンはポイズンマンの足を掴む。そしてラストマンとポイズンマンが接触した箇所から、ラストマンのまとっている光が剥がれたものが、ポイズンマンの身体のなかに流れていった。やがて光はポイズンマンの中に満遍なく行き渡った。



〔まるで……毒みたいだろ〕

〔何を、何をする気だ!〕

〔こうするんだ……よっ!〕



 ラストマンがようやくポイズンマンの足を離す。それと同時に素早やく体を持ち上げ、上空へ投げ飛ばした。空いた手の平を合わせ、そこに魔力を集中させる。



〔くらえ、ヒーロー・レイ!〕

〔うお、うおおおおおおお!!〕



 超巨大な光線がポイズンマンの元へ飛んでいく。やがて着弾。ポイズンマンの中に入り込んだ光と共鳴し、毒を全て蒸発させてしまうほどの大爆発を引き起こした。



〔あああああああああああああああああッ〕

〔はぁ……はぁ……うぐっ……〕



 ラストマンは膝をつく。そして、体がどんどんと縮んでいった。三分経ってはいなかったが、他の魔法とスキルに魔力を使いすぎたためであった。変身した姿すら解除され、元のウルトの姿になる。しかし彼は一段落済んだような顔をしていた。



「とっても強くなってた……。でも、俺が勝ったんだ。……魔力を回復させたら城に戻ろう」



 ウルトはその場に座り込む。そして周りの凄惨たる状況を眺め、ため息をついた。



「しかし酷いなぁ、これは……。あいつと戦うと毎回ろくなことにならない。確かミカちゃんの妹が物だけの時間を巻き戻せたっけ。自然だけでも復活させてもらわないとな……」

「そうか? この光景、俺様は好きだけどな」

「……!?」



 ヒュドルの声が聞こえた。ウルトは慌てて立ち上がる。しかし、すでに時は遅かった。足元はまるで沼になったかのようであり、足を捉えられてしまう。毒でできた沼であった。その毒沼は不自然に広がっていき、その端から全身が紫色に変色したヒュドルが上半身だけをだした。



「これはポイズン・ポンド。足元を毒の沼にする技だ」

「なぜ生きて……!」

「うおー、あああー。……どうだった? 俺様の演技は。ハハハハ! あんなの大技を仕掛けてくるなんてすぐわかる。この本体を離脱させたに決まってるだろ」

「くそっ……くそっ……」

「やっぱまだまだ若いなぁ、お前は。なんでこんなのに一度負けちまったんだか。しかも、こんなのがもう父親だなんて笑わせるよなぁ」

「……」

「わかってるって、あの奴隷ウサギの夫はテメェだってことくらい。……とりあえずよく聞け、これはお前を殺すために、お前のためだけに作ったスキルだ。ポイズン・ダークネス〕

「なっ……!」



 ウルトの身体が一気に沼に引きずり込まれ、首から下は全部埋まってしまった。しかしこれがポイズン・ダークネスという技でないのはウルトにもわかった。まだ何かが起こる、そう感じさせる。



「無様だなぁ、おい。ポイズン・ポンドはこのまま俺様が移動すれば付いて来させることもできる。つまり、お前はこんな晒し首のまま町を歩くんだ……そんで、これがポイズン・ダークネスだ 俺様の毒の質を変える」

「う……うがあああああああああああ! あっ……はぁ……はぁ……も、もう適応した……かなり強い毒だったけど……」

「早すぎるな。さすがは不死身のヒーローだ。だが、その不死身も今日で終わりなのさ。じゃあ、おかわりだ」

「ぐああああああああッ、なっ、何故!?」



 首だけとなって苦しむウルトを眺め、ヒュドルは嬉しそうに笑う。しゃがみこみ、ウルトに言い聞かせるようにスキルの説明を始めた。



「だから、これはテメェのために作ったって言っただろ? この毒はお前と同じ……。相手に合わせて毒の効果を変える。常に新種の毒に変わっていくのさ。どれだけお前が毒に耐えようが、すぐにそれを超える毒を作る」

「……あ、が……」

「もう言葉も出ないか? 仕方ない。だが実は威力は抑えてあるんだぜ。これからみせたいものがあるからな」

「ぐ……ぅ?」

「……記憶が正しけりゃ、こっちに城下町がある」



 ヒュドルは指をさした。何も見えないが、ウルトは自分の飛んできた方向を覚えていた。たしかにその方角は正しかった。



「まず、宿屋ヒカリに行くんだよ。ああ、お前の本性もイルメっつう仲間に調べてもらったんだ。そしたらテメェの奴隷……ハハハ、失礼。テメェの愛しい愛しい奥さんが、中でテメェの帰りを待っているだろう?」

「……何をする気だ」

「簡単だ。まず神経を麻痺させる毒を使って痛みを感じないようにする。んで、腹のなかを搔っ捌く。……今何ヶ月かはしらないが、中のガキを取り出してテメェと奴隷の前で握りつぶす」

「……!」

「それから回復魔法で腹の傷を癒してやるよ。優しいだろ? だってそのあと毒の中に漬け込むんだ。しみたりしたら大変だもんな。そしてショック状態のウサギちゃんを襲うのは俺様が生み出した地獄のような激痛だ。拷問用の毒ってのもあるんだぜ。ま、それを作ったのはテメェに捕まる前だが。……それから指一本ずつ酸の毒で溶かして……ああ、いや、お前の前で寝取るのもいいな。たしか顔は悪くなかったし案外いけるかもな。んで、そこから直接毒を入れて二度と子供ができないようにするんだ。もっとも、その日のうちに拷問し尽くして殺しちまうから意味なんてねぇけどな……んでもって________________

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