閑話 有夢の「かわいい」 (美花)
もう一ヶ月以上有夢と美花のやり取りを書いていない気がし、我慢できなくなったので書くことにしました。
舞台は地球です。
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「あゆむーっ!」
「なぁに?」
私は有夢の部屋に窓から侵入して抱きついた。有夢は私を抱きしめ返してくれる。でも今日はイチャラブしに有夢の部屋に侵入したわけじゃないの。私はあるものを見にきたの。そう……「可愛い有夢」そのものを見にきたの。有夢は女の子みたいな容姿をしているどころか、女の子だとしても伝説に残るくらい可愛いのは周知の事実。本気であざとさを全開にした有夢は胸の奥からキュンとなって死にそうになる。例え本物の女の子でも。
そしてそんな有夢の可愛いさをある程度操れるのは私の特権。彼女だからというのはもちろん、幼馴染という立場を利用して昔から女装させたり少女趣味のものを身につけさせても大丈夫なように洗脳……じゃなくて育ててきた。今日はそんな有夢の可愛い姿を見てキュンとしようと思った次第。有夢の可愛さを独り占めする、最高の贅沢。
「有夢、可愛い格好して! 今日はそのためにやってきたの!」
「えーっ! いちゃつきにきたんじゃないの?」
「いいでしょー、キュンってさせて! キュンって!」
「おとといアナズムで依頼されて写実撮影のために天使っぽいふわふわした格好一緒にしたばかりじゃない。あれじゃダメ?」
「あれも鼻血が出そうなくらい可愛かったけど、足りない! 私は有夢のキュートさを求めてるの!!」
「むふー、まあこっちでは久しぶりだしいっか。あ、久しぶりだからこそ暴走してるのかな? なにか来て欲しい服とか小物とかある?」
昔は私が着てた服を貸したりしてたんだけど、今はアナズムに行ってから服装を自由自在に変えられるようになったから有夢はこう聞くようになった。ファッションが自由ってこういうとき便利。間違い無く、本当に女の子になったこともあって、アナズムのおかげで有夢の女装癖は加速したわ。抵抗のての字もなくなった。
「ビキニ姿みたい。布面積ちーーっさいやつ」
「今はアリムじゃないからね、それはやめておこうよ。男だからね、一応地球では」
「着てくれたら私も同じの着てあげようと思ったけど、まあ仕方ないか。今は可愛さを求めてるもん。男らしさはまた別のときに求めるわ」
「う、うん。それがいいよ」
「じゃあとりあえず内の制服で。ほら、私の着ていいから」
「こういうことする時って一回は制服頼んでくるよね」
「やっぱり鉄板じゃない?」
「そっか」
付き合う前から私が有夢の可愛い姿を拝む時は制服を貸していた。身長は私と有夢で15センチくらい違うけど、無理をすれば有夢にも割と普通に入るのよね。有夢、肩幅も含めて女の子の骨格そのものだからだと思うな。
……そういえばここのおじさん……将来のお義父さんと言うべき人が「自分と有夢は単なる女性ホルモンが異常に多い男性だと思われがちだけど、ちょっと調べてみた結果、実際は違う」とか独り言で言ってたわね。「正解は胸の成長しない女性の体に男性器がついる状態。精神とそれのみが男性である。つまり七割は見た目通り本当に女性。人間の突然変異」だとかって……。あ、でもそれって夢だったっけ? 盗み聞きでよくきこえなかったし、寝ぼけてたからよくわかんないや。まあ仮にこれが本当だとしてもしっくりくるけど。
「……ぼーっとしてどしたの?」
「あ、いやちょっと。有夢の可愛い姿を見るのが楽しみで」
「そう? じゃあ着替えるからあっち向いててね」
「や、私の制服嗅いだりしないか見張ってる」
「着替え見たいだけでしょ」
「うん、だってほんとはむしろ嗅いで欲しいもん」
「んもー! 目瞑ってとにかく向こう向いてて!」
魔法か何かで無理やり目を閉じさせられてしまった。だがしかし、残念ながら私はこっそり透視のスキルを獲得している。有夢のお風呂とか覗くために。だから瞼を透視して有夢の着替えをのぞいちゃうの。これは僥倖、目の薬。やっぱり可愛い子の着替える姿を覗くのは私の趣味にあってるわ。まっ、有夢と私が立場反対だったら有夢が逮捕されちゃいそうな案件だけどね。
「着たよ! 目を開けていいよ!」
「……はっ、はぁあああ……可愛いっ……!」
「相当欲求溜まってたんだね、おかしいな、アナズムでも普通に同じことしてるんだけどな。あっ、ヨダレ垂れそうになってるよ。まあ垂らしても美花だから怒らないけど」
「うへへへへ、こう、小首を傾げて! 上目遣いして! わ、私の近くまで来て! なんかそれらしい台詞お願い!」
「はいはい」
私が注文した通りに有夢はこなしてくれた。とてもなれている。昔からこう言うことさせまくったから仕方ない。ちなみに有夢がぶりっ子っぽい動作をすると耐性のある私や翔といった身内とも呼べる存在より下の関係性の人は老若男女問わず必ず悩殺されてしまう。文化祭でメイド服着せた時は大変だった。そりゃもう、大惨事。鼻血の海ができてたからね。
あ、次はメイド服着てもらおう。
「どうだった?」
「相変わらず可愛すぎて。有夢、やっぱり私なんかより一億倍可愛いよ」
「それはないって! 俺になんかあざといことしてみてよ、顔を真っ赤にしてそのことを証明してあげるよ!」
「私に首ったけな有夢にそういうことしてもね、有夢は絶対可愛いって言ってくれるし。それより次はメイドさんの格好でお願いね」
「じゃあこうしよう、俺と美花でメイド服きてお互いにぶりっ子しあって勝負だよ。可愛さで腰抜けになった方が負けね!」
「ふっ、面白いじゃない。いいよ、やろう!」
私と有夢の熱いバトルが始まった。なんてことはない、ただ単に私も有夢に可愛いって思って欲しいから乗ったまでのこと。ちなみに結果は相打ちだった。
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