第1054話 災厄の竜の敗北
<では……これを教え終えたら吾輩の命は尽きるだろう、故によく聞くがいい。ドラゴンスレイヤー はドラゴンを狩り尽くした人間や、その血族がなるものだと思っている者が多い。吾輩の仲間にもそう思い込んでいた者が何人かいた。しかしそれは違う。……発動する条件は二通りだ>
「二通り?」
<ああ、まず一つは吾輩に対して一つの生命体が何度も挑み生き残ること。吾輩に付与されている称号、『竜の頂点』の作用だ。もう一つはその称号を所持していた者の子孫が吾輩と接触することだ。これも同様の称号の作用である>
<つまりガバイナは後者だな>
ガバイナが調べた自身の祖先達の記録にはドラゴンスレイヤーは完全に原因不明の称号として扱われており、カオスブラックドラゴンと対峙するまでドラゴンの魔物は一匹たりとも倒したことがなかった者も発現していた。やっと線が繋がったとガバイナは感慨深い気持ちになった。
<しかしまさか称号がダンジョンのボスでもない魔物単体のために作られるとは……ならばなぜ、さもドラゴン全体を指すかのような名称なのだろうな、その称号は>
<簡単だ、吾輩自身が数多の竜を殺したためだ。竜の間で語られている程度の、さらにその何倍もな……。早い話、成体となったドラゴンがダンジョン以外では他の魔物よりあまり見られないのは吾輩が原因だ>
<なん……だと……!>
<吾輩を馬鹿にした奴らを身内共々バレぬように消していただけの話だ。ドラゴンを狩り尽くしたドラゴンを討伐しうる可能性のある者……神、アナザレベルが人間達に与えた対抗策だな>
カオスブラックドラゴン曰く、三魔神に最も近い力を手にしていた自身に人間も滅ぼされないようにするために、神は、特別に魔神達で言う勇者や賢者のような対抗できる称号を用意したのだという。そこでその場にいた二匹と一人に一つの疑問が生まれた。
<ならばなぜ、お前は今、アナザレベルに従って我々を襲ってきた? 自身が倒される理由を作った存在になぜ従う。孤高の存在であったのに、仲間まで作って>
<簡単な話だ少女よ。……今、アリムとやらを付けねらっているのはドラゴンスレイヤー に称号を与えたアナザレベルではない。人間らが崇めているアナザレベルは称号を与えたほうだ。要するに今貴様らが敵対している存在を『偽のアナザレベル』と呼んでいるのはあながち間違っていいないのだ。別人が吾輩を蘇らせた、そして面白そうなことを計画している。だから従ったまで>
<仲間の奴らとはうまくやっていたようだが、それは>
<一匹ぼっちは……寂しいから……な。仲間が与えられたなら……仲良くやってみようと思ったまでだ。実際に吾輩とあそこまで相性がいい人間がいるとは思わなかった。どう見ても狂ってるが故に良き友と言えるかどうかは別として。……贅沢を言えば相方は現勇者くらいの美少女が良かったな。無論、ニャルラトホテプではダメだ>
弱々しい声でカオスブラックドラゴンは呟く。二匹と一匹の誰もがそろそろ息絶える頃だろうと理解した。
<吾輩はもう復活することはないだろう。固く封印されることは目に見えている>
「ああ、アリムがきっとそうするだろう。魔神達のように」
<……ふ……まあ、それでかまわん……>
ついにカオスブラックドラゴンの魔力や生気など全てが消え去った。その場に残ってるのは死骸のみ。ガバイナはその場につかれたように座り込んだ。
「勝てた……か。はは、正直、皆からアイツを引き離すだけで良かったんだがな」
<誇るがいいガバイナ、お前は余らの協力で魔神に匹敵する魔物を倒したのだ>
「そうだな。だが……本物の魔神はもっと……」
<少女もよく頑張った。人間の姿に戻るがいい。それがお前にとっての本来の姿なんだろう?>
<じ、実は我、人間からドラゴンに戻るのは初めてで、うまくできるかどうか……>
「心配するなローズ、もし元に戻れなくても、俺たちが得た『人間化』のマジックカードを使ってやる」
<わ、わかった! じゃあまず普通に戻れるか……>
ローズは自分のステータス画面をやりくりし、マジックカードの使用なしで、金髪の少女の姿に戻ることができた。とてもホッとしたような表情を浮かべる。
「良かったな、戻れて」
「うむ」
「ところで魔物の時の名前はなんだ? あとお前を人間にした奴も」
「我の名前はゴールディローズクィーンドラゴン。ローズドラゴンの最上位、ローズキングドラゴンのメスの亜種だ。我を人間にした人物はアリムだぞ」
<なんと、勇者がそうだったのか>
「そうか……いや、思えば確かにアリムくらいだな、あの子はたまに突拍子も無い事をする」
「我をダンジョンのボスとして討伐した際、我が人間に憧れていることを察してくれたんだ。感謝している。おかげでこうして……が、ガバイナとも……出会えたわけだし?」
「ははは、そうだな!」
顔をほんのり赤くさせ、誇大な口調も詰まったようになるローズの態度を見てファフニールは彼女がガバイナにどういった情動を抱いているか察した。
<少女よ、その男はとてつもなく鈍感だ、せいぜい頑張るがいい>
「うん……我は諦めないぞ」
「なんの話だ?」
「い、いや! なんでも」
「とりあえず5分ほど休んでからアリムや王様達の加勢に向かおう」
こうしてガバイナら二人と一匹の手によってメフィラド国王やアリムを偽の神の陣営で最も苦しめたと言っても過言では無い、災厄の邪竜は打ち倒されたのであった……。
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すいません、昨日は投稿する前に寝落ちしてしまいました。
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