閑話 リルと翔の新婚生活 (リクエスト)

______何年後かの話。


 

 俺は大学を卒業してキャリアを積み、無事に警察にて警部補となった。それから一年仕事も身体で覚えてきて精神もある程度安定してきたのでリルにプロポーズして結婚した。

 プロポーズした時のリルはなんと言ったらいいか、目から滝のように涙が流れていたっけな。あそこまで嬉し泣きしている姿を見るのは、出会ってすぐ、森の中以来だったと思う。

 それからややあって、仕事の合間を縫ってスケジュールが合う日に盛大に結婚式を挙げた。婚姻届を出したのはその前日だ。花嫁衣装に身を包んだリルはいつもと違った綺麗さがあった。この一連の出来事は何一つ忘れることができねーだろーな。絶対に。

 そして俺たちは今、結婚してから二週間未満の新婚ホヤホヤの夫婦だ。リルの名字もしっかり『火野』に変わっている。結婚したての夫婦は関係がしばらく猛烈に熱くなるという話だが、ウチも例外ではない。……いや、ぶっちゃけ結婚する前と変わんないんといえば変わんないんだがな、内容が新婚ネタになっただけで。

 そして今俺は仕事場からリルとの二人だけの家へと移動中だ。親父達の元から離れ、土地を買って家を建てた。……金は柔道で色々やって大学生の間に稼いだんだ。正直言うと株のおかげでリルの方が金持ちなんだがな。今となっては二十代前半にして健康用品を売る商社を立ち上げたしアイツ。だから俺、まともに仕事してるのにアイツに半ば養ってもらってるような状態かもしれない。天才ってのは恐ろしい。

 家の目の前についた。リルの方が一時間ほど先に帰ってきているのは知っている。この玄関のドアを開けたら待っていてくれるんだろう。今日はどんな甘え方をしてきてくれるのか期待を込めながら開けた。



「わーふ、お帰りなさい! あ、な、た!」

「おう、ただいまリル……今日はそうきたか」

「わふん、五日ぶりだしそろそろいいかなって。さあさあ、私はショーのお嫁さんなんだから、好きなだけ穴が空くほど、遠慮なく見てよ」

「つーか、そんな格好で待ってたら寒くないか?」

「だいじょぶ、ショーから帰るって連絡きてから、玄関に到着するまでを逆算して着替えたから」



 リルは全裸にエプロンだけをつけている。相変わらず俺に煽情的な行動をするのが好きなんだよな、こいつは。結婚しても変わらねー。裸エプロンなんて高校生の頃からやり続けてきていてウン百回目だが、こう新婚となると特別味があるような気がする。見慣れてはいるが未だに慣れてはいない。



「あ、そうだ。……これからどうしよっか。ご飯にする? お風呂にする? それとも、ワ・タ・シ?」

「それ毎日聞かなきゃダメか」

「ショーが毎日きちんと反応してくれるからね」

「リルがやりたいなら付き合うけどな」

「わふわふ、ちなみに今日のオススメは私を食べることだよ。ほら、今せっかく全裸なんだし、この状態からどこからでも襲ってきていいよ!」

「……とか言って飯用意してくれてあるんだろ?」

「わふん、もちろんさ!」

「サンキューな。じゃあいつも通り、飯、風呂、お前の順番な」

「何を選んでもご飯もお風呂も私と一緒だけどね?」

「まあな。最高じゃないか」

「わふー! じゃあ服着直して、ご飯仕上げしてくるから、部屋着に着替えてきてね、アナタ! わっふっふ!」


 

 リルは嬉しそうに尻を振りながら台所へと消えていった。

 ……リルも仕事というか会社経営をしてるっつーのに家事はだいたいアイツがやってる。俺と分担してやろうって話だったはずなんだが、リルはどうにも俺に亭主関白気味の態度でいてほしいらしい。尽くして尽くして尽くし倒したいそうだ。俺が手伝おうとする態度だけでもめちゃくちゃ嬉しいんだと。いつかめんどくさくなったらすぐチェンジしてやるから言えって言ってあるけどな……あの調子だとそんな日が来るかどうか。リルにやってもらって当たり前にならないよう、心持ちだけでも今のままで一生いよう。

 部屋着に着替え終えた頃にリルに呼ばれた。今日はどうやらビーフシチューみたいだ。ちなみに服もちゃんと着てくれている。



「召し上がれショー」

「いただきます」

「わーふん!」



 最高に可愛い嫁が作った飯を、ガキの頃から望んできて実際成れた仕事の後に頬張る。なんという幸せ。俺はいったい前世でどんな徳を積んだんだか。幸せを噛みしめるってのはこういうことなんだな。



「おいしー?」

「今日も最高だぞ」

「よかったよかった」



 リルは俺が一口飯を頬張るたびに心底嬉しそうな顔をする。それがまたなんとも言えない愛らしさ。毎日、食事の中で一口を噛みしめるたびリルを抱きしめたくなってくる。まともに飯食えないからそんなことしないがな。

 しばらくして全部食い終わった。リルは満足気な顔をし、食器を片付けてから俺の隣にスススっと近づいてきて寄り添ってくる。



「さ、お風呂いこうか」

「一緒に入るんだろ?」

「もちろんさ」



 いつからだったか、リルとは一緒に風呂に入るのが当たり前になっちまった。かなり昔だ。高校卒業してすぐあたりだったか。なんでそうなったかは今ちょっと覚えてないが。俺ももう完全に受け入れちまっている。にしても。



「リルはやっぱすげーよなぁ」

「何が? 胸の大きさ?」

「それも含めてよ。お前、六年前にその最高の体形を維持し続けるって宣言したじゃねーか。実際その通りになってるどころか、そのノウハウを生かして商売してやがるんだもんな」

「わーふっふっふ、そのことね。言っておくけどねショー、あの時宣言した通り、私、五十歳半ばまでこれ維持し続けるつもりだから。……歳食ってもポイッてしないでね? 浮気したり風俗行ったりしなくてもいいよう、私この体で頑張ってショーを……」

「しないって、絶対に。俺がんなことすると思うか? こんなに愛してるのに」

「ショー……! 私も愛してるよ」



 風呂桶の中だが俺はリルを抱きしめる。こういう盛り上がった時はすかさず抱きしめてやらないとな。リルはめっちゃ喜ぶから。

 そのあとお互いにお互いの身体を洗い、ゆっくり湯船に浸かってから風呂から出た。あとはリルのメニューの最後をこなすだけだ。俺たちは家を建ててからこっそり作ったマジックルームに直行する。大人になった今でも……いや、大人になったからこそマジックルームの活躍は健在だ。1時間が基本10時間から調整次第では100時間以上になるなんて素晴らしすぎる。だいたいリルが家に持ち込んだ仕事をするか、二人での時間をたっぷり過ごすために使われる。



「ねぇ、ショー……」

「ん、どうした?」



 色々と準備をしている間、リルが少しモジモジしながら話しかけてきた。いつもと若干様子が違う。



「ショーは、昔私がなんてショーに告白したか覚えてる?」

「あ、ああ、戦闘民族として強い子を今すぐ残したいだっけか? インパクトでかい告白だったな」

「概ねあってるよ。でもあの頃はまだ私、あの年齢で子供を作るっていう意味をわかってなかったからショーに迷惑かけちゃったよね」

「実を言うとな、まあリルみたいな子に積極的に言い寄られるのは悪い気分じゃなかったが」

「わふ……でもね! 私たち、もう社会人だし……結婚したし……その、ね? あのアイテムのスイッチは切っていいんじゃないかな? こ、子供……そろそろ作らないかい?」



 ……ああ、なるほど、そういうことか。たしかにそろそろ子供を欲しがってもおかしくない頃だったな。俺達ももう23歳。家庭も作ったわけだし、リルと出会ったばかりの頃のお願いをやっと叶えてやることができるのかもな。

 父親になるってことか!? この俺が!? 親父みてーになるのか!? お、おおお、どうしよう。いや、どうしようってか。こんな話をし出すってことはリルはもう心の準備はできてるわけだな。なら俺も……俺も……。



「わ、わかった。そろそろ数年越しにお願いを叶えてやってもいい頃だな、うん」

「わふー、ほんとにいいの?」

「不安っちゃ不安なんだが。それに妊活しててもよ、絶対するってわけでもねーしな……」

「うん、だから一緒に頑張ってこ?」

「……だな。よし」



 俺はこの部屋のダブルベッドの枕元に置いてあった機械のスイッチを切った。




#####


リクエスト10件、二~三ヶ月にて全部消化終わったでござるよぉぉぉ!! ここまでの長期イベントをやるのは拙者、初めてだったでござるよ。

拙者が書きたかったものはついつい長くなってしまったでござるな。特に今回と女子会。やっぱりイチャラブさせるのは長く楽しんで書いちゃうでござるよ。

いやぁ、ここまでお付き合いしてくださって誠に有難く思うでござる。これからはまた閑話の頻度がそこそこ下がってしまうと思うでござる。


ちなみにこのリルと翔の話はIF系じゃないでござる。

Levelmaker本編が終わったら番外として載せようと思ってたものを引っ張り出してきたでござるよ。つまり色々済んだ後の話でござるな。こんな感じでLevelmaker本編が終わったらこのような話を載せていくつもりでござる。そうなったら隔日投稿から週一投稿、あるいは高頻度の不定期投稿にしようかと思ってるでござる。


あ、そういえばLevelmaker本編もあと五十話前後で終了する予定でござる。いつもみたいに終わる予定だって言ってから+100話するだとか、500話増やすだとかしないつもりでいるでござるよ、多分。多分きっと大丈夫、今回こそちゃんと終わらせられてあげられると思うでござる……多分。だって1000話超えちゃったし……。


何にせよこれからも本作をよろしくお願いするでござるよ!



・アリム×翔 【済】

・アリム×父親【済】

・アリム×リル【済】

・アナズム女子メンバーによる女子会(アリム有) 【済】

・有夢×翔 (出会った当初) 【済】

・翔×リル(新婚生活)【済】

・侍(幻転丸)×翔 (武人談義)【済】

・有夢家父×カルア 【済】

・ウルト×シヴァ【済】

・ローズ×ラハンドやガバイナ 【済】

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