第1022話 スルトルと神樹国代表
あれから一時間が経って、予定通り神樹国から来たトールさん、ヘイムダルさん、そのほか国の重鎮やお付きの人たちにシヴァとスルトルを面会させることとなった。スルトルは結構人が気にしてるようなことをズバッと言ってしまう性格なので、そこは気をつけるよう忠告してある。シヴァは俺に執着してること以外は常識人だとも。
「ではどちらから話しますか?」
「ふむ、とりあえずウチの国の魔神からじゃろうて」
「わかりました」
ちなみに、当然だけどこの場にカナタやショー達は連れてきていない。ショーに甚大なストレスがたまるし、そもそも合わせる理由がないからね。とりあえず俺はスルトルが入ったこけしのスイッチを押した。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ〜〜ンッ! どうもォ、オレ様、黒魔神スルトルどぅぇええスッ」
「ふざけないでスルトル、君のこと恨んでる人も少なくないんだからね?」
「ああ、あのクソ野郎を殺したからだロォ?」
「クッ……クソ、クソ野郎とは誰の……!」
「あんた確かデイスが来るまでクソ野郎の右腕秘書だった男だっけ? 誰って、わかるデショ?」
ほらあああ、わざわざ煽るような言い方するもん! 俺らにはシヴァが目を光らせてるからか比較的おちゃらけ程度の物言いだけど、それ以外が絡んでくるとこうだもん! はぁぁ……一気にみんな機嫌悪くなっちゃうよ。でもこれで俺が仮に攻められたとしてもお門違い。俺は会いたいって言うから連れてきただけだもんね。
「この……!」
「これ、落ち着かんか。ただの光を立体的に見せている存在にすぎない今の魔神に怒りを抱いても無駄じゃ」
「おっ、さすがヘイムダルの爺さんじゃネェか! わかってルゥ」
「ま、ワシとトールは王に執着はしておらんかったからの」
この二人がなんとか中和してお話が進みそうだね。よかった。純粋かどうかは知らないけど国王を一応慕っていた素振りをみせる人達はしばらくしてから落ち着き始め、各々スルトルに質問をし始めた。といっても大体は他の国と同じようなもので、どこから来たのだとか本来の目的はなんなんだとか、アナザレベルについて教えて欲しいだとかって内容。
封印してる中からいつも通り神様の力とやらを使って様子を観察して、今までのシヴァやサマイエイルの受け答えを把握してたのか、本人達にとって触れて欲しくないような場所はうまく受け流しつつ似たような答えを繰り返していた。
ただ今までと違う質問をしたのはヘイムダルさん。その内容は俺もちょっと知りたかったものだった。
「これはほんの素朴な疑問なのじゃが、なぜ賢者だけ、同じ対魔神の特性を持つ者……勇者と導者より数が圧倒的に多いのじゃ? 勇者と導者は一世代に一人、それどころかいない時代すらある。しかし賢者は歴史に残された書物をみても最低一度に二人召喚される。そもそも今回だって賢者は敵側に二人もおるのじゃろう。なにか知らんのか」
「ほォー、爺さんいい所に目をつけるじゃネェか。なんで他のは一人ずつなのに賢者だけ頻繁に召喚され、数も多いのかねェ……。実のところオレ様もワカンネェんだワァ」
「嘘をつけ! さっきから曖昧な回答ばかり! なにか知っているに違いない!」
「ソリャァ、教えたところでテメェら如きになんとかできる代物じゃネェからナァ。……っと口が過ぎちマッタ。とにかくあれだ、教えられネェんだよ。テメェら、自分の城の弱点教えろって言われて教えルカ? 教えネェだろ、それと同じ。……爺さんへの回答、続けるゼ?」
「……クッ」
えー、そんな理由だったの、なんか曖昧だったのって。まあそりゃ俺だって例えば予想外のことがあったらカナタはフリーズする、みたいな不利になるようなことは他人に教えたくないし、スルトルの言い分はわかるけど……いろんな質問を曖昧にするってことは、案外、魔神って封印する以外の弱点が沢山あるのかもしれないね。
「ま、一つ違いがあるとスりゃ、オレ様はオレ様を葬るための存在である賢者に取り憑くことができるが……サマイエイルとシヴァはできネェ。二人以上に絶対になるのは……おっとこれ以上はイケネェや。へへ、今日は喋りすぎを未然に防げる絶好調の日ダゼ。シヴァとサマイエイルからドヤされなくて済む。アリムちゃん、ワリィけどオレ様はもう今日は眠らせてもらうゼェ」
「え、あ、ちょっと!」
「じゃアナ」
か、勝手に引っ込んでしまった。うーん、この答えじゃ絶対満足してないよね神樹国の人達。様子を見る限りでは……うん、やっぱり腑に落ちてないみたい。こう言う時に俺以外に対しては常識人のシヴァだよ。早めに呼び出さなきゃ。
「シヴァ、スルトルが空気悪くしちゃったから、なんとかして欲しいの! お願いっ……!」
「おほっ。よかろう。あゆちゃんのその何者にも越えられぬ絶世の美貌に免じて場をなんとかしてやろう」
「ありがとう、助かるよ。今度、健全な範囲内だったら好きな格好一回だけしてあげる。これがうまくいくかいかないかで、もしかしたらメフィラド王国と神樹国の今後の関係が悪くなる可能性だってあるんだ」
「ならば幼稚園のスモッグをきて無邪気な表情を今度してくれ。それで良い」
「わ、わかった。頼んだよ」
正直自分の身を売るのは仕方なかったけど、最近シヴァは働きどうしだし少しは労わなきゃね。……でも俺の幼い頃の姿みたいなら幼稚園の頃の写真を見せろって言ってくればいいと思うんだけどな、なんで今の俺がスモッグ着るなんて遠回りなことさせるんだろ。
#####
今日は元気でした! ご心配をおかけしました。
この投稿は月曜日分なので、明日、普通に投稿します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます