第1023話 三国対面

「……というわけだ」



 ふぃー、なんとかスルトルが荒らした場をシヴァが期待通り納めてくれたよ。客観的に見て、自分たちにとって都合の悪いことは隠しつつ神樹国側の人たちが欲しかった情報を出した感じだけどね。だから内容的にはスルトルが話したことと大差ないんだけど、対応の差ってやつで納得させたね。

 ……んー、事実を話してくれないのは俺にとっても不都合だけど、前に事実を知ると危ないって魔神のうちの誰かが言ってたし、俺を基本甘やかしてるシヴァが俺にすら言わないって選択してるなら知りたがる必要もないのかな。こんなこと、他の誰かに行ったらなに魔神相手に心を許してるんだなんて言われそうだけど。でも仲良くしてこようとしてる相手には厳しく接せないでしょ。基本的に。



「重要な情報はぼかされた気がするが、まあ大方いいじゃろうて。そもそも魔神とこうしてゆっくり話し合うことが大切だったのじゃ」

「しかし変な感じするぜ。話してみると案外普通なんだもんな。おとぎ話や昔話で魔神は強大な存在で恐怖の象徴なんて言われていたから」

「でもこの封印から出したらそうなるんじゃないかの? アリムだからこそやれとるんじゃろう」

「そういやそうか」

「なああゆちゃん、我はもう引っ込んでもいいか?」

「うん、いいよ。お礼は後日ね」

「期待している」



 本当に後日、スモッグを着ながらあどけない顔をした姿を見せなきゃいけないのかな。約束だから絶対やるけど。まったく、そんなのシヴァ以外誰が喜ぶんだろう。……心当たりは沢山あるな。ミカでしょ、それにラーマ国王……。

 そういえばラーマ国王ってあれからどうしてるんだろう。すぐ戻るって言った割にはもう二日過ぎてる。お付きの人置いてってるから心配だな。もう俺から連絡しちゃおうかしらん。



「魔神との話合いは終わっただろうか」

「国王様! 今終わりましたよ!」



 終わったことを魔力で感知したのか、国王様が魔神達との話合いに用意した部屋に入ってきた。なにか神樹国の人たちに話したいことがあるように見える。



「そうか、ご苦労だったアリム。……神樹国の代表の方々よ、少し提案したいことがあるのだがよろしいか」

「ん? なんだ?」

「実は先日、少々自国で誘拐事件に関するトラブルが発生し単身帰国していたブフーラ王国のラーマ国王が今戻ってきた」

「おお、あのダンスマスターの」

「そこで、この機会だ。ブフーラ王国での誘拐事件の程度の把握をすると同時に、我々魔神やそれを封印する人材を抱えていた大国三ヶ国での話合いをしようと思うのだが」

「おお、いいんじゃねぇか! そうしようぜ」

「ふむ……たしかに今後お互い協力するにあたって我々の話し合いは必要不可欠かもしれんな」



 ラーマ国王様が帰ってきたのか。ちょうどそのことを考えてたからなんかホッとした。この提案には神樹国の宰相さん達も賛成なのか割と乗り気である様子が見て取れる。

 ただ、今まで敵対姿勢を取ってて積極的に交流を取ろうとしなかった神樹国を加えてのアナズムを代表する全大国の話合いとは、さらりと歴史的場面に立ち会ってるんじゃないだろうか。



「それでいつにする? ……俺達が原因なのはわかっているが、もう何十年も三国が集まることなんてなかったんだろ?」

「ああ、その通りだトール。できれば今日にでも」

「なんじゃ、まさかだとは思うがあの若僧国王がキレておったか?」



 ヘイムダルさんのその質問に、国王様はゆっくりと頷いた。ラーマ国王がキレてる……ちょっと想像できないけど、帰ってくるとしたらまず俺に連絡すると予想してたのに、国王様にしか連絡してないとなるとそうなのかも。ラーマ国王にとって俺のファンとして振る舞うのは真面目な内容じゃなかったってことか。……まあ俺も本気出さなきゃいけない時はゲームしないしそんなものか。



「あの……流石にボクはその話し合い、席外したほうがいいですよね、国王様?」

「ああ、そうだな。少々今抱えてる問題とは別の問題についても話し合うだろうし、その方が良いだろう」

「では夕方にでもしますかな」



 きっと色々言い合ったりするんだろう。たぶん今後のあり方とかについても。下手したらその会議一日じゃ終わりそうにない。ま、なんにせよ子供の出る幕じゃないね! 

 俺はカルアちゃんとミカが遊んでいるであろう部屋へ戻った。




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今日はちょっと短めでした!

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