閑話 反射スキルの練習 (翔)

「アリムちゃんの言っていた通り、スキルの練習をしよう」

「そうだな」



 リルのスキルはダメージを無効化し攻撃してきた本人に跳ね返すもんだ。これを練習するったってどうすりゃいいのか俺には検討がつかねーが……。



「まず自分で自分を攻撃してみようかな」

「なるほど、スキルの性能を発見するところから始めるんだな」

「わーっふん!」



 パッと見じゃわかんねーが、リルはどうやらあのスキルを展開したみてーだ。握りこぶしを作り、自分で自分を思いっきり殴った。

 どうみたって思い切り殴ったってのに、リルの様子は何も変わらない。



「わふーん、なるほど」

「何かわかったのか?」

「ダメージの無効化だけできたよ。反射はできなかった」



 そうきたか。もしかしたらダメージの無効化と反射は別扱いなのかもしれねーな。威力の倍率も調節できることだし。

 


「じゃあ次……ショー、私をくすぐってみてよ。脇だよ脇」

「わかった」



 リルはバンザイをして俺に脇を見せてきた。改めて思うがリルは脇だけでもかなりセクシーだ。……なんか俺、どんどんリルに対する嗜好が増えてる気がする。とりあえず普通にくすぐってみた。



「……どうだ?」

「わふー、何も感じないよ」

「リルって元々くすぐりに強くなかったか?」

「そうかな? そういえばあまり脇をくすぐられたことなかったよ。でも今のは無効化されたってことでいいのかな? ……わかりにくいから二倍で跳ね返してみるよ」

「お……うっ……!? ふ、や、やめ……やめ……」



 ど、ど、どうやらちゃんとリルをくすぐれていたみたいだ。やばい、笑死にそうだ。やめてくれ。俺も筋肉のおかげでくすぐりには強い方だが、指を動かすもぞもぞとした感覚が脇にめちゃくちゃ集中していて気持ち悪い。



「わふー、解除したよ」

「はぁはぁ……あー、2倍でもやばいな」

「あんなショー、あんまりみないよ」

「だろうな。もう勘弁して欲しいぜ。次はどうする?」

「んー、一回私を投げ飛ばしてみてくれないかい?」

「普通に柔道でか?」

「わふわふ」



 リルにとって全く痛くないのはわかっている。だから俺はリルを勢いよく背負い投げした。リルはうまく受け身を取っていたが、顔がキョトンとしている。俺も今かなり罪悪感が湧き上がってきていた。



「お、おれ……女性を痛めつけるために投げたの初めてだ……」

「わふー、痛くも痒くもないよ。大丈夫だよ。まあスキル使ってなかったらと思うとドキドキするけど。ショー、これは実験なんだから気にしないでね」

「ああ……」

「さてと。じゃあこれから今の衝撃を第三者に移せるかどうかやってみようと思うよ」

「たしかに攻撃してきた奴以外を対象にできたら面白そうだよな」



 その発想はなかなかいいんじゃねーだろうか。リルはダークマタークリエイトで等身大の自身と酷似した人形を作り出した。リルは等身大フィギュアになっても可愛いな。

 


「さて、どうだろう。等倍でいいかな」



 リルはその人形の方を向いたままスキルを解除した。本来なら解除した瞬間にそのままダメージが返ってくるんだが……。

 俺の背中が痛むことはなく、人形が大きな音を立てて倒れた。どうやら成功したみたいだ。



「わふん、どうやら反射のダメージの対象を深く意識すれば決めることもできるみたいだね。今のはもしちゃんと集中してなかったらショーに跳ね返っていたわけだ」

「だがなかなか使えそうだな。味方からわざと攻撃くらって、それを何倍にもして敵に返すとか」

「わふー、そういう使い方ができるね。このスキルがより強力になったよ」



 だがこの屋敷にいるのって皆んな身内を傷つけることなんてできねーだろうから、実用は難しそうだな。リルが自分で自分を殴りまくって……って感じか。これなら防御面も攻撃面も完璧だな。



「あんがいこんな単純なスキルでも練習できるものだね」

「そうだな」

「よし、じゃあ次は毒物摂取してみようかな」

「たしかそういうのも反射できるんだったか。……だがやめておいた方がいいんじゃねーか?」

「んー、毒物程度なら私、まだマシなんだけどな。それなら代わりに幻術かけてみてくれるかい?」

「わかったぜ」



 リルは見事に幻術も無効化し跳ね返してみせた。すげーな、ほんと。俺もこのスキル覚えようかな。



「じゃあ今度は不快さを感じないことでも無効化して跳ね返せるかやってみよう」

「美味しいもの食ったりとかか?」

「そうだね! 協力してくれるよね、ショー」

「いや、さっきから協力してるが……」

「わふわふ、じゃあよろしくね。ちょっと強めにね!」



 そう言ってリルは自分の胸を差し出してきた。……味覚じゃダメだったのだろうか。リルはな……いつからか忘れたが、何か隙があれば自分の胸揉ませようとしてくるからな……。

 お望み通りにしてやる。相変わらずの心地よさだ。リルは顔を赤らめながらもじもじし出した。



「……わっ……ふっ……。あれ、やめちゃうのかい?」

「おいリル、触らせたかっただけだろ」

「わーふー、どうだろなー、なんのことかなー、これは実験だよー。スキル使うの忘れただけさー」

「まあいいが……それなら後でいくらでも……だな。とりあえず今はやれることやっちまおうぜ」

「約束だよ?」



 結局不快感を感じないことは無効化できねーみたいだった。肉を食わせても無効化できなかったみたいだからな。臭い匂い、不協和音などはいけた。特に臭いに関しては敏感すぎてたまに困らせられるリルはもうこれで大丈夫だとかなり喜んでいた。

 一通り終わったら間髪入れずに約束を果たさせられた。



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2巻……2巻の情報を開示……!

あと少しで開示……!

そういえば久しぶりですね、こういう閑話は。

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