閑話 可愛い (翔)

「ごめん、どうやらトラウマを蘇らせてしまったみたいなんだ」



 リルのお父さんに呼び出され、そして謝られた。

 リルの母さんは真顔のまま何で自分が泣いてるかわかんないような顔をしているリルを抱きしめていた。



「同様会話の経緯でああなったんですか?」

「実はね……」



 リルの祖父祖母の話になり、そこでリルは自分にエルフの血が混じってることを初めて知ったらしい。前に旅行行った時の話は本当だったということだ。

 エルフの血が混じっていたらたしか3代先までは必ず美人になる。ちょっと長い気もするらしい。その後も美人が生まれやすく……アナズム全体で顔の偏差値が高いのはそのためみたいだが。


 つまり今まで自信なさげだったリルに、自分が美人だという確たる証拠が生まれたわけだ。

 俺が……いや、周りにいる全員があいつの事を「美人」とか「可愛い」などと本音を言っても、心底喜びはしながら「私は可愛いんだろう、みんなにとっては」「お世辞だろう」という態度だったが、それもそうはいかなくなったわけだ。


 そこでリルにとって幼少期から俺に助けられるまでの12年間言われ続けたことと矛盾が生じて、トラウマがフラッシュバックしたんだな。案外なにが地雷になるのかわかんねーな。



「き、今日はショーのところで安静にした方がいいって話だよ」

「そうかもな」



 両親から引き取って部屋に戻った。不思議そうな顔をしているが、やっぱり涙は流れ続けている。リルを抱きしめた。



「わーふ」

「リルは可愛い」

「……らしいね?」

「リルは本当に美人で可愛い」

「そんなに言われたら照れちゃうよ」

「ちゃんと理解するまで言い続けてやる」



 何度もなんども繰り返して言い続けた。言ってる俺が恥ずかしくなるくらい。でも無我夢中でひたすらとにかく言い続けてやった。全部本心を込めて。鏡をその場で取り出して、どこが可愛いとかどこを褒めるべきだとかも熱弁してやった。俺がリルなら引くレベルで。



「わーふぇ……」

「いいか、まだ言うぞ……」

「わ、わかった、わかったよ! ありがとう!」

「なあリル…」

「な、なんだい?」

「やっぱすっげー可愛いよ。そんなリルが側にいて俺は幸せ者だと思う。キスしてもいいか」

「わ、わふ……いいよ」



 許しをもらったから即座に唇を奪う。可愛いって言い続けて、俺の気持ちは完全に昂ぶっているみてーだ。メッセージてでまだ可愛いと伝え続けながら襲うようにキスをしまくった。



「ふっ……」

「はぁ……はぁ……は、激しいよ」

「まだいけるぞ」

「の、望むなら幾らでも。と、ところでショーは……あの……」

「なんだ?」

「そんなに私を可愛いって言ってくれるけど、一番好きなのはこれじゃないのかい?」



 リルは戸惑った表情を浮かべながら、服をはだけさせ、今日の深緑色のブラと大きな胸を露わにした。



「まあ、それも好きだ」

「そうかい。じゃあ一番は?」

「仕草……そして、それを表現する顔だ」

「わふぇ、そうだったの!?」

「お、おう……何回か言ってると思うが? お世辞で可愛いなんて言った事一度もねーぞ。これは俺だけじゃなくて周りもだと思うが」

「わふぅ……そんなに顔が……」



 耳をピクピクさせながら寝耳に水だと言わんばかりに驚いた顔をしている。

 実は何回も言ってるが、やっぱ俺が胸が一番好きだって言うことと自分が可愛くないってことを深く思い込んでたから、今までいった事がそこまで響いてなかったんだな。

 やっぱ美人って物理的証拠があるのが強いのか。



「じゃあ私の玉砕覚悟の告白をオーケーしたのも? べったりするのを許すのも?」

「ああ、そういうことだ。わりーが案外面食いなんだよ」

「わふぇ……た、たしかにあれだけ昔から美人に囲まれてたら目が肥えるのも仕方ないか」

「その俺が心の底からお前を可愛いと思ってるんだぜ?」

「わ、わふん!」



 すっげー俺らしくない事をたくさん言っちまったが、この状況においてはいいだろ別に。



「じゃあ……もっとこれからは自信を持つことにするよ!」

「トラウマから脱却できるか?」

「とりあえず、容姿に関して罵倒され続けたことは忘れるさ! なにしろエルフが入ってるし、ショーや皆んなが可愛いって言い続けてくれるからね」



 ほっ……よかった、一件落着だな。しかし自分に自信がない割にはリルってかなりオシャレなんだよな。そこんとこ不思議だな。



「なあリル、容姿に自信なかった割にはオシャレだよな? デートでしてくる化粧も薄めだし。地球での話な」

「化粧は薄めだったかな? あまり自覚なかったけど、それでいいならそのままにするよ。あとオシャレだったのはあれさ、容姿に自信がない分、ショーが彼女のことで蔑まされないように精一杯の努力をしてたんだ!」

「そうか、ありがとな」

「どっちみちスタイルには自信があるしね!」



 スタイルにはがいいのはわかる。現にまだ腹と胸を見せつけてるままだ。顔の方が好きだとは言ったものの、相変わらずデカイそれを見せ続けられるとそっちに目がいく。



「……ショー、遠慮はしなくていいんだよ?」

「じゃあ遠慮なく」



 そのまま押し倒した。



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小説家になろう、カクヨムに掲載しているLevelmakerは変わりありませんが、アルファポリス版Levelmakerの更新はストップし、7/16に削除することに決定しました。

また、本日よりカクヨム版Levelmakerの第1話と第2話をアルファポリス版Levelmakerと同じものにします。

よってカクヨム版の1〜2話は2018年1月に書き直したものとなり、なろう版はそのまま書き始めのものとなります。

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