閑話 ある両親との一日 (リル)
「ママーッ! パパーッ!」
「わふー、今日はこっちに来る日だったわね」
1週間に1日か2日、私はママとパパと1日を過ごすことにしている。本当だったら彼氏より両親といるべきなんだけど……すぐショーシックになっちゃうからダメなんだ。
「ママ、パパ、元気かい?」
「わーふ、見ての通り元気よ。毎回同じこと聞かなくても一緒だや」
「わふん、そうだよリル」
「でも元気が一番だし!」
アリムちゃんが住む場所を提供してくれて、本当に助かってる! 部屋は別だけど同じ屋根の下で暮らせてるわけだし。こうやって簡単に元気かどうかもわかるんだ。
ちなみに、流石は私のパパとママ、死んじゃってから生き返るまでの12年間分の知識の穴をもう埋めてしまっている。最近の流行まで把握しちゃってるんだ。
「クンクン……まぁまぁ」
「わふ? ママどうしたの?」
ママが私の髪の毛の匂いを嗅いでニヤニヤし始めた。頭はちゃんと毎日洗ってるんだけど?
「ショー君の匂いがするよ。来る前にたっぷり甘えてきたでしょ?」
「わーふー、その通りだよ……。バレるなんて恥ずかしい」
「なにも恥ずかしがることなんてないよ。ほら、母さんと私だってべったりなんだし」
そう言ってパパはママの後ろに立ってママを抱きしめた。ラブラブだよぉ……流石まだ23歳前後だね。や、40代が近いあゆちゃんやミカちゃんの両親もベタベタだから、これが普通なのかも……。
「ただ……」
「わふ? パパ?」
「この感情をなんというべきなんだんだろうね、ろくにリルを育ててやれなかったのに、いっちょ前に嫉妬心というか、なんというか。ふつふつと……」
「よく聞く、『お前に娘はやらん!』的なやつかい?」
「わふわふ、そう、多分それだよ」
実はそれ一回言われてみたかったんだ! まあ、言われても困るんだけどね。
「私にそんなこと言う権限ないしなぁ……」
「でも気持ちは分からなくもないわ」
「わふ、母さん……」
「私のパパから私を貰う時、とっても大変だったものね?」
「わふぇ……うん、そうだったよ」
わふー、なんだか苦労したご様子。やっぱり私は両親のことを詳しく知らない……。どんどんこれから聞いていけばいいね。とりあえずは……。
「ママ、パパ、私のおじいちゃんとおばあちゃんってどんな人だったの?」
「わふ! そういえばなにも話してなかったっけ」
「話す前に死んじゃったからなぁ。これを期に教えよう。とは言っても私はそんな特殊じゃないよ?」
「そうなの?」
「うん」
パパのおじいちゃんとおばあちゃんは、それぞれ私の故郷で生まれて故郷内で結婚し、パパを産んだらしい。普通に冒険者をやっていたため、魔物に殺されてしまったのだとか。
だからパパは15歳のギリギリ冒険者になれる年齢から、冒険者以外の職業をしてたんだって。
「あの村にいたら特に変わったことではないよ。強いて言うなら、私の父親の方が村の中では罠使いで名前が通ってたくらいか」
「わーふー、なるほどね! ママは?」
「私の両親は村に駆け落ちしてきたんだよ」
「わふぅぅ! そ、そうなの!?」
なんとびっくり衝撃的。思わず目玉が飛び出てしまうこと思ったよ。駆け落ちなんて本当にあるんだ。私だったら理論ぜめにして無理やりにでも納得させるなぁ。
「うん、私のパパ……リルにとってのおじいちゃんが私たちと同じ、白狼族だったんだけど、ママがね……」
「わふわふ、エルフだったんだよな」
「わふぅぅぅ!?」
旅行中に私、エルフの血が混じってるかも……なんて言われたよ!? それがまさか本当だったなんて! エルフだよエルフ、少し血が混じってるだけでも相当美人になるあのエルフ!
わーふー、でも、お母さんはすごくすごーく美人だから納得だけど、私は……。
「わふぅ……だからほんと苦労したよ。本人が苦労してるから、生易しい気持ちじゃ結婚許してくれなくて」
「大変だったねぇ……」
「で、でもママ、パパ!」
「なんだい?」
「私、美人じゃないよ!? ママはすっごく美人だけど!」
そう本音を言うと、二人とも不思議そうに顔を見合わせてから首を傾げた。
「それはないよ……ねぇ?」
「リルはとっても可愛いよ」
「廊下で出会ったショー君やアリムちゃんにも聞くことあるけど、リルは本当に美人だよ?」
「そ、そんな事きいてるんだ……。でもみんなお世辞で……」
「チキューで通ってる学校でも人気者なんだってね?」
わ、私やっぱり美人……なのかな。
今まで概念的なもので言われ続けたけど、エルフの血がしっかり混じってるっていう確信できる情報が得られた…から、そうなんだろうね。でも、じゃあ、なんで……。
「で、でも私、10年間ずっとブサイクって言われたよ? アンデットより酷い顔だって。見てると吐き気するって。醜い顔をしてたから耳も切られたし、顔に汚物も浴びせられたし、それに………」
「…………っ。ごめん、ごめんね、リル」
パパとママが謝る事じゃない、私が言われたことを言っただけなのに、なぜか強く抱きしめられて……私じゃなくて二人が泣いたの。
なんでだろう。いや、わかるよ、科学的な意味じゃわかるし……私が……うん……悪いのも………わかる……。わかるのになんで悲しくなるんだろう。
「ふぇぇぇ……ぐすっ……うぐっ…」
「大丈夫、リルは綺麗よ。そんな言葉じゃ陳腐なくらい」
「そうだよ。うん、彼にも聞いてみるといい」
そのあとショーを呼び出されて、私は引き取られていった。パパがショーになにやら謝りながら私を引き渡した。
そしてショーにずーっと可愛いだとか美人だとか、思わず尻尾がちぎれそうなくらい振っちゃうことをたくさん言われたんだ。そしてキスもたくさんしてくれた。鏡まで使って私の顔のことをずっと熱く語ってくれた。
ブサイク相手だったらこんなことしないぞ、なんて、柄にもない変なことを言いにくそうに言いったあとエッチもしてくれた。
わふん、みんなが私のこと美人っていうんだったら、ずっと美人に見えるような立ち振る舞いをこのまま続けなきゃね。
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あ、これショー目線書こう、そうしましょう。
なので次回は通常話を投稿予定でしたが、閑話にします。
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