第893話 求められる事

「おお、きてくれたかアリムとミカよ」

「お久しぶりです、国王様」


 

 お城の中は特に変わったことがなさそうだね。国王様が元気そうなら、カルアちゃん達も元気だと思う。それはすぐ確認できるね。

 どうせこの要件が終わったあと、カルアちゃんの部屋で遊ぶか泊まっていくことになるんだもの。



「ん? その腕に抱えてるのはなんだ?」

<現代のメフィラド王国国王よ! 余は___むぐぅ!>

「実はボク達の方からも訪ねたい理由がありまして、タイミングよく呼ばれて良かったなって思ってたところなんですよ。このドラゴンはその理由ですね」

「そうなのか」



 今喋らせたら変なことしか言わなさそうだからしばらく黙ってもらう。べつにこのドラゴンを受け渡すなんて今より先でもいいから、先に国王様の要件から聞くことにした。



「国王様の要件からお願いします」

「実は、ここ最近厄災ともいうべきほどSSSランクの魔物が過去最多で頻繁に出現していてな。いや、知っているか。ヒノやカナタらもSSSランクの魔物を退治したとラーマ国王とエルフの村の者から連絡が来ている」

「ええ、あとで詳しく話しますけど、この子もそのうちの一匹ですね」

「なんと、そうだったか……! 正規の鎮静化報酬は……」

「あ、要りません」

「そう言うと思った。また貸しでいいな」

「はいっ」



 もっとも、そろそろ返してもらう借りもないけど。国としてやってもらいたいことが今のところ全くない。

 生きていればいつかできるよね。



「それは一度置いといて話を続けよう。そこで国の代表として我々も大量に出現しているSSSランクの魔物を対処すべく、また、再び魔神との大戦争のようになるかもしれない。それに備えるのだ。故に力をつけたいと思っていてな」

「ふむふむ」

「ティール、ルイン達に教えたダンジョンによる急激な特訓を再び詳しく教えてくれないだろうか? しばらく政治の方はティールに任せ、それに専念する」

「なるほど」



 たしかに今の時期、SSSランクが増えていると言う事実を知っている人物がそれに対抗できるだけの力をつけてくれるのは俺としても助かる。個人で世界を監視するのも楽じゃないからね。



「実はこう思い立った経緯もあるのだ」

「そうなんですか」

「これを見てくれ」



 そういうと国王様は自分の目の前に召喚魔法陣を魔力で描いた。たしかカルアちゃんから聞いた話だと、国王様の召喚できる魔物って二匹で、どっちもめちゃくちゃでかかったはず。そんなのをここで出して大丈夫なのかしらん。

 直接見たのはベヘモットという名前の大きな象さんだけだけど……いや、魔方陣もっと大きかったような。



「こい、ベヘモット!」

<パオン>

「わぁお」



 やっぱり普通の魔方陣より小さかった。出てきたのはその魔方陣のサイズに合わせられたベヘモット。小さい象、単純にかわいい。



「最近、新たに契約した魔物の大きさを数値上の強さはそのままに、自由自在にできる術を習得してな。これでダンジョン攻略とやらが捗るだろうと考えたのだ」

「なるほど……たしかにそれはダンジョン攻略したいとも思いますね」



 今まで魔物が大きすぎてまともにできなかっただろうしね。この時期にちょうどよく新たな力が手に入ったなら試したいと思うのも分かる。



「そこでアリム達にお願いしたいのは、ティール達のサポートとダンジョンに関する持っているだけの知識を私達に教えてくれないかということだ」

「いいですよ」

「助かるが、そんなにすんなりと承諾していいものなのか。忙しくないか?」

「忙しいですけど、ボクにしかやれないことですし」



 頼られるのは嫌いじゃないしね! もし本当に忙しくってもアイテムの力でどうにでもできちゃうから問題もない。それよりSSSランクの魔物と戦って確実に勝ってくれる人が増える方が今はいい。



「すまないな、毎度毎度」

「いいんですよ。んーと、ちょっと待っててくださいね?」

「うむ」

「ミカ、ファフニール持ってて」


 

 ミカにファフニールを持ってもらい、俺はトズマホを取り出した。大事だと思ってることはこれにメモしたりしている。そこから過去の文献などを組み合わせて……一冊分の本の文章を作り出し、それを本に作り直した。国王様に手渡す。



「これに全部書いてます」

「ダンジョンの秘密がこれ全てに入っているのか? ありがとう……しかしこれは用が終わり次第、禁書に指定しなければ」



 少し笑みを浮かべながら国王様はそう言った。たしかにこの本の内容を悪用されたら最悪だ。悪い人がダンジョンを好き勝手にしてレベル上げまくるなんてことになったらヤバイ。

 下手に俺くらい忍耐力があるなら世界を滅ぼしかねないほどの実力を手に入れてしまうと思う。



「本当に助かる。こういうことはもはやアリムにしか頼めない」

「ちなみに国王様だけじゃないんですよね? ダンジョンで訓練するの」

「ああ、前セインフォースの面子と元勇者のヘレルだ」

「へぇ、ヘレルさんも行くんですか」

<なにぃ!? ヘレルだとぉ!?>

「ん?」



 ミカに抱きかかえられてるファフニールがいきなり叫び出した。元勇者のヘレルさんと何か因縁があるんだろうか、うーん、あるんだろうね。

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