第894話 元勇者と聖龍
最重要連絡です。
諸事情により大変忙しくなってしまうため、7月1日から『Levelmaker』は毎日投稿から隔日投稿となります。
また、もしかしたら『私は元小石です』の方もその日より4日に一度の投稿から週に一度の投稿になるかもしれません。
誠に申し訳ありませんが、ご理解の程をよろしくお願いします。
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<あいつがいるのか……!>
「なんだ、そのドラゴン、ヘレルに関係があったのか」
「そうみたいですね、ボク達も初耳ですが」
ファフニール・ロットがミカの腕の中で暴れて這い出そうとしているけど、ミカはステータスをきっちり使って離さない。むしろファフニールが苦しそうにしている。
<ぐええ、もう暴れないからやめてくれ!>
ファフニールが諦めて大人しくしたのを見ると、ミカも力を緩める。人形を抱きしめてる時みたいでちょっと可愛かった。ファフニールには気の毒だけどね。
<大人しくはするが、ならば、あいつを呼ぶのだ! 余を封印した彼奴を!>
あ、なるほど、話の筋からしてそうなんじゃないかと思ったけど、このファフニール・ロットを封印したのはヘレルさんなんだ。まあ元勇者だしそのくらいはできるか。あの人を倒したギルマーズさんが強すぎるだけで。
「呼んだ方がいいと思うか?」
「一応その方が。暴れないようにボク達が管理しますし、大丈夫でしょう」
「それもそうだな」
メッセージで呼び出したのか、しばらくしてヘレルさんがやってきた。最近では、この国からでれないことにはなってるけれども、そんなことは関係なくノアさんとのんびり暮らしてる。
国王様から与えられた仕事である、正しい歴史の訂正と整理が未だに終わらないみたい。そういうのって長くかかりそう。
それはさておき、やってきたヘレルさんはまず国王様にひざまづき、俺とミカの方を見た。
「国王様、用事というのは? 現勇者達がいるということはダンジョンに行く準備ができたとか」
「そうでなくてな、どうにもヘレル、お前の知り合いが来ているらしい。恨みを持っている相手かもしれないから気をつけよ」
「俺に恨みを? 悪魔の時のですか?」
「詳しく話しを聞いていないので分からん。とりあえずそこにいる」
国王様に示され、ヘレルさんはミカの方を向く。そしてやっと腕に抱いているトカゲに気がついた。一人と一匹は目が合う。
そしてファフニールは再びジタバタし始めた。
<勇者! 余を忘れたとは言わせないぞ!>
「こんな可愛らしい魔物は知らないが……」
<そこの美少女に小さくされただけだ! 名前を言えばわかるか? 余の名前は聖龍ファフニール・ロットである!>
「ああ!」
ヘレルさんも覚えていたようだ。ファフニールはすっかりイライラしてしまっている。そりゃ封印してきた相手に対して一度は覚えてないって言われたらイラつくだろう。
<しかし残念だったな。勇者の容姿から見るに余を封印してからまだ5年も経ってないと見える。封印が弱かった証だな>
ファフニールにとっては煽ってるみたいだけど、この場にいる俺を含めた全員が首を横に振った。威厳のあるドラゴンらしくないキョトンとした表情で俺たちの顔を見回す。
<どういうことだ?>
「実はね、現勇者はヘレルさんじゃなくてボクなんだ」
<なんと美少女が! その美貌を持つ少女の勇者となると、さぞ人間から注目を受けているんだろうな。しかしなぜ二人同時にいるはずがない勇者が二人も?>
「色々あったんだ聖龍。アリム、ここは俺が責任をもって説明する」
「わかりました」
ファフニールをヘレルさんに明け渡す。もう暴れる気は無いみたいでヘレルさんが今までのことを説明する間大人しくしていた。
やっぱりSSSランクって強敵だったからよく覚えてるものなのかな。普通は魔物にちゃんと接したりなんかしないはず。
<つまりここは数百年後か。はぁ……余を封印した男が魔神に惨敗した上、大切な人も守れずに魔神の手下となるとは、呆れたものだ。しかもあんな幼さが残る美少女に助けられるとはな>
「言葉もない」
<呆れたぞ……あんなに自信に満ち溢れていたのに。勇者、御前と初めてあったのはあの日のことだった……>
「ああ、そうだな。ちゃんと覚えている」
なんかファフニールが思い出をポツポツと語り始めた。それに応じてヘレルさんも付け足してくる。
元々ヘレルさんは最初、ファフニールとは討伐するつもりで接触。勇者になってすぐ後のことで、装備を整えるための素材と軍資金を稼ぐために討伐依頼を受けたのだとか。だけどファフニールが聖龍な上に悪いやつじゃなかったため依頼者の邪魔にならないような場所に移動してもらった。これが知り合ったきっかけ。
そして時間が経ち、魔神……ここの地域だからサマイエイルが本格的に出現し始めた。
アイツの特性上、一から生み出すだけでなく、魔物や人間を悪魔に変えることもできる。ファフニールが悪魔にされた場合、確実に魔神クラスの強さになってしまうと考え、一時的な封印をヘレルさんはしたかった。当時メフィラド王国にはSSSランクの魔物は魔神を除いてファフニールしか居なかったらしい。
当然のことだけどファフニールは嫌がり、ヘレルさんと激突。勇者として覚醒していたヘレルさんはなんとかファフニールを封印し、また、なんかの勢いで封印が解けて魔神に乗っ取られるのを恐れ、絶海の孤島にその身を置いたそうな。
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