第892話 とても都合がいい
<みたまえ!>
「ふむふむ」
「すごいねー」
ファフニール・ロットは俺たちに向かって自信満々で羽を広げ、空を飛んでみせた。
昨日、こいつをここに置くことが決まってから俺がダンジョンで入手したスキルカードより羽を生やせるようになるタイプのものを探し、聖龍に合うように光属性の魔法をベースに合成。結果、SSランクで光属性のビーム出てきた羽を生やせる代物が完成した。
それをスキルカードに変換して渡したところ大変気に入っていただけたみたいだ。あれから12時間くらいしか経ってないのにもうスイスイ飛べるようになってる。
<この後から付けたような羽がいい。余らしいというべきか>
「そうなんだ」
<しかしこんな簡単にSSランクランクのスキルを作り上げて、居候である余に渡してしまうとは……やはり美少女は太っ腹だな>
「ボクにとってはそんな太っ腹ってほどでもないけどね。でも練習もせずにいきなり飛べるなんて驚いたよ」
<それは余の翼竜としての血筋とスキルの効果だろう。この光の羽は既に余の身体の一部だ>
そこまで言って喜んでもらえるとは、嬉しい限り。
俺とミカは今日の要件はもう済んだので1日文の食料だけ用意してファフニールの元から去ろうとした。でも呼び止められた。
<まあまて>
「なぁに?>
<一つ、二人の美少女に聞きたいことがあるのだが>
「んー?」
「なぁに?」
<貴様らアレだろ……性別の垣根を超えて愛し合ってるな?>
みてたらわかるか。だいたい親しくなった人みんなに気がつかれるね。別にほんとは同性愛じゃなくて異性同士の恋愛なんだけど。
<余の求婚を断っていたのはそういうことだったのだな>
「うん、まあ、それだけじゃないけど……」
<既に恋人がいるなら美少女、諦めるとしよう>
まだ諦めてなかったのか。求婚相手がしつこいこともアリムの特徴だよ。そこまで夢中になるほど惹かれるものがあるんだろうけど。それにミカがいるから断ったんじゃなくて、相手がドラゴンだから断ったんだけど。別に解釈してくれるならそれでもいいか。
<しかし同性愛、子を孕むこともできまい。どれ一ついいことを教えてやろう。この世にはな、スキル二番に分類される星三つの希少さの男女変換というスキルがあってな、なんと性別を根本から変えることができるのだ!>
「うん」
<昔、世の同胞にもオス同士で恋を育んでしまった輩がいてな……男女変換が役に立っていた>
「そ、そうなんだ」
ドラゴンでもそんなことあるのか、なんだかすごい絵面になりそう。
<しかしなんだな、どちらも絶世の美少女。どちらを男にするか選ぶのも大変そうだな>
「そーだねー」
実は元から男なんです、とか、言ったら絶対めんどくさいから言わない。これから誰かに引き取ってもらうつもりでいるのに、その先でバラされたりしたらたまったもんじゃない。
<なんなら男女変換を探すのを、手伝ってやっても……>
「ん? まって」
突然頭に何か流れ込んできた。いや、普通にメッセージなんだけど。誰かと会話中にメッセージが流れ込んでくるの実は未だにちょっとだけ慣れない。地球人の性かもしれない。
こんな唐突に送ってくるのは国王様かラーマ国王ぐらいなものだよ。
【アリム! 要件がある、今日仕事がなければきて欲しい】
国王様だ、やった。ちょうどこっちも要件があったところなんだ、こんな都合よく連絡がくるなんて。
<だれかからかメッセージか>
「うん。丁度、君を引き取ってもらいたい相手から別件で連絡が来て呼ばれたんだよ。その別件の内容は知らないけど」
<余も連れて行くのか?>
「当然」
そういうわけで俺とミカとファフニールの二人と一匹で久しぶりにメフィラド城に向かうことにした。
もちろん、ファフニールにはちっちゃくなって貰って、一見ペットの魔物みたいに見えるようにしてもらってる。
<どこまで行くのだ? この町内か?>
「すぐそこだよ」
<そこ……この国の城ではないか>
「そうだよ」
<なんだ、国の重役から呼ばれたのか>
「国王様だね」
<そうか……そうか>
無論、お城の中には顔パスでとおる。門番の人には新しいペットだと言ってファフニールも無理やり通して貰った。
<ドラゴンの余がまさか人間の王の城に入るとはな。なあ、まさかだと思うが、余の引き取り候補とはここの王なんじゃ……>
「お、するどいね」
<ふん、傲慢な人間の王などに使わせられる余ではない。鍛錬もしない人間の王! 気に入らなかったら余の手で葬ってやる>
「まあまあ、そんなことないから。会ってみればわかるよ」
今の時代、王様や王子様、はたまたお姫様ですらそれなりの強さを持ってるのは当たり前なんだけど(悪名高い王様として有名なエグドラシル神樹国の元王様ですらSランクからSSランクの実力だったっていうし)、ファフニールが封印された時代はそうでもなかったのかな?
とりあえずファフニールも国王様に会えばいい人だってことがわかるよね。
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