第841話 いじられる翔

「はい、それではお座り下さい。ほら、お前ら座れ、さっさと座れっ」



 出演している人たちがMC以外座った。これから翔が本格的にいじられることになるだろう。

 


「じゃあまずプロフィールから! えー、年齢は17歳、誕生日は5月16日でB型。現在日本国内で最も頭が良いとされている○○学園○○高校に通学し、そこの柔道部の部長をしております、と。そして今年のインターハイで個人戦・団体戦共に活躍し見事高校生日本一に輝くと、その試合が国営放送で全国に放送され、そこからネットでイケメンすぎる柔道日本一の高校生として話題になったということで」



 こうまとめるとすごいプロフィールだね。世の中イケメンか可愛いのが全てなんだよ。翔がブサイクだったらこんなに注目されなかったよね。

 


「えー、○○高校なんだぁ、そんじゃあかなり頭いいんでしょ」

「それに関しても情報が来ておりまして。なんと、学年一位でございます……はぁぁ!? あの高校で学年一位、マジで!?」

「え、ええまあ。同率一位なんで何人か居ますけど、他にも」



 会場騒然。その情報が開示された瞬間あたりがざわざわ

ってなった。まあそれも仕方ないもしれないけど。

 うちの学校は通ってるだけでもすごいらしいからね。



「まってまってまって、柔道強くて、イケメンで、日本一頭のいい高校で学年一位って、ええ……」

「超人すぎてやばい」

「いや、ほんとにこんな人間いるんだなーって、リューちゃんそう思った」

「いえいえ、そんな」



 これでもうもっと騒がれるようになることは確実だね。佐奈田の話だとこの番組、かなり視聴率高いらしいから。今まで知らなかった人も注目するようになるでしょう。



「んじゃ、モテるでしょ?」

「それが全然で……」

「ここで彼の中学の頃からの同級生から情報が来ておりまして、なんでも自身がモテてないと思い込んでるだけで、実は相当モテている……超鈍感男との連絡が」

「そりゃそうでしょ、この顔で、スポーツも勉強もめちゃくちゃできるのに」



 佐奈田がピースサインをしてる。なるほど、この情報の提供者は佐奈田なんだな。



「じゃあ彼女とかはいないの?」

「彼女はいますよ」

「あ、いるんだ。ま、そりゃいるよね」

「ねーねー、この会場に来たりしてないのぉ? エキストラの中に居ない?」



 一番のおふざけキャラの人が俺たちエキストラの方を指差した。あ、やばい。この流れは……リルちゃんはニコニコしてるし。



「もしかしたら、さっき言った6人の中に居たりして」

「翔君の彼女だよーって人、手を挙げて?」



 そう、呼びかけられた。

 もちろん、翔の彼女であることに誇りを持っているリルちゃんは手を挙げないはずがなく、元気にピシッと手を挙げた。超注目される。



「あ、ほらいた! ……って、ねぇー、やっぱりさっきの6人の子の中いたんだけど!!」

「もしかしてあの6人全員、翔くんの関係者だったりする?」

「ええ、全員そうっすね」



 再び俺らのところにスタッフさんがマイクを持ってやってきた。いつでも話をこちらに振られていいように、マイクを何本も持って待機している。



「え、なに。学校の美人な子だけを集めてきたの?」

「いえ、違います。特に親しい友人を連れてきました。美人ぞろいなのは偶然ですね……」

「ちょーっとお話し聞いてみようか! まずは彼女さんから……外国の方? ん、ハーフ? どっちだ?」


 

 リルちゃんにマイクが渡された。ニコニコしながらリルちゃんはそれを両手で受け取る。



「彼女さん、まず気になるんだけど、外国の方だよね?」

「はい! 私はノルウェー人だ……ですよ!」

「ノルウェー、へー、ノルウェーから。びっくりするほど日本語上手いね。留学?」

「そうですよ!」

「……まって、なんか見覚えがあるんだけど。ちょっと考えさせて。どこかで……………あああああああ!」

「どうした、リューちゃん」

「○○高校でノルウェー人で留学生って言ったら、ほら、あの新制度の特別留学生第一号! 新聞にも載った……あの子だよね!?」

「そうですよ!」



 やっぱり覚えてる人は覚えてるよね。結構大きく新聞載ってたし。翔は苦笑いしてるけど、リルちゃんはまだニコニコしてる。質問は続くみたいだ。



「じゃあそれを通して翔くんと知り合ってって感じ?」

「いえ、実は前々からショーのことは知ってて……あの、ここだけの話……」

「これ全国放送だからここだけ、じゃなくなるのがいいのなら話して」

「わふん。あの制度ができる前に何回か日本に来ていたのですが本当に命の危険にさらされたことが二回くらいあって……それでショーに助けてもらったから惚れちゃって」

「ガチ人命救助!?」

「あ、カンペ。……なになに、後々のコーナーで詳しくやるけれど、火野翔は人命救助を何度も行っていて表彰も何回もされている!?」



 次々と露見になる翔の魔王らしさ。

 さすがは翔だね。周りの人たちが翔のすごさに慣れ過ぎてるせいかな、芸人さんやエキストラさんの反応が新鮮だよ。



「やば……えー、やば!」

「で、通ってる高校などを教えてもらって、新制度を使って留学してきたんです」

「好きだって伝えるために?」

「はい! そしたら下宿先もショーの家で……」

「下宿先がピンポイントでそこってのもすごいけど、あの制度って半端なく難しいんでしょ? 君自身も相当やばくない?」



 あー、どんどん話が広がって行くよぉ。ちゃんと番組になるのはどこまでだろ。

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