第802話 新年から忙しくなりそう
「まじかよ……」
「そうそう」
佐奈田はリルちゃんと翔が来てからほぼ同じ話をした。それから実際に同級生からネット記事を見たとたくさん声をかけられたり、他のクラスから俺や美花を見にくる人がいつもの3倍は居たりで、その話の信憑性がふつふつと湧き上がってくる。
だからって新年早々、同級生の男子に頭の上にリボン乗っけられるのはどうかと思うけど。いきなりのせるのやめてよね。
ギャラリーの女子も女子で『かわいー!』って言って勝手に写真とるのやめてよね。
……まあ、いつものことだし別にいいけど。
「どのくらい警戒強めりゃー、いいんだろうな」
「わふん、ショー今までも警戒してたの?」
「ああ、親父に頼んだりしてな。そうでなきゃ、有夢も美花も今頃誘拐されてるっての」
「えへへ、お世話になってます」
「ありがとうっ」
またショーにお世話になるのかな?
まあ、もう自力で自衛できるだろうけどさ。
やがて時間が来て、担任の先生が新年の挨拶を始めた。そして、俺と美花と翔とリルちゃん、そして俺の弟と美花の妹についての記事をよく目にするから、なにか変なことに巻き込まれないようにと、心底心配したよう顔でそう言われた。
そののち全校集会があって、三学期目の校長からの挨拶があったんだけど、そこでも生徒たちにその俺たち六人に決して迷惑をかけず、ネットで騒がれてることに関しても言及しないように言われた。
もうここで、かなりの事態なんだなって察した。
てなわけで開校式が終わってから、俺たちは近くのカフェに駆け込んだ。叶と桜ちゃんには会うことができなかったけど、四人ならまだなんとかなるでしょ。
「ふええ、怖いね」
「でもこんなの今更って感じじゃない?」
「俺と美花……あと叶と桜ちゃんはいいんだよ。なんやかんや言ってメディアや騒がれることに慣れてるからさ。でも二人が問題」
「わふ、私もどうやらこっちの世界ではかなり目立ってたみたいだから、対処法とか大丈夫みたいだね。なんか自然とわかるよ」
「なら、慣れてないのは翔だけということに?」
三人で翔を見つめた。
ちょっと驚いた顔をしながら、めんどくさそうに頭を掻いた。
「いや……俺も去年、取材されたりしてるし……大丈夫なんじゃね?」
「わふん、何かあったら私が守るから、気にしなくて大丈夫だよ!」
「いや、そこは俺がリルをだな……」
「今まで守ってもらった分、俺と美花も翔を支援するよ」
「痴漢されたりしたらちゃんと相談するのよ?」
「おいちょっと待て。特に美花」
男でもされるものはされちゃうからねぇ、怖いね。
とりあえず俺たちの間では、気をつけるようにしないといけないの。
「わふ、でもやっぱりショーが一番大変なことには変わりないと思うよ」
「なんでだ?」
「わふん。柔道の全国優勝だからね。まずインタビューが来るでしょ? よっぽどのことがない限り断れないよね。そしてショーはイケメンだから、世間でかなり騒がれることになるよ。ていうか私、さっきチラッとネット調べたけれど、本当に評判がすごいよ」
うんうん、と俺と美花も頷いた。ショーはキョトンとした顔をしてる。
「なあ……お前らがそう言ってくれるのは嬉しいんだが、言うほどか?」
「わふぇ……自覚してない……」
「リルちゃん、気にすることないよ。昔からこいつ、自分のことモテないって思い込んでたようなやつだし」
「え、俺モテてたの?」
「知らなかったの?」
知らないのと言うことを知った上で俺と美花はそう言ってみる。
「し、知らなかった……なんで教えてくれなかったんだ」
「いや……ふつうに机の中にチョコレートが入ってたりしたでしょうに」
「あれ、誰かのいたずらじゃ……」
「わふん、ショーらしいね!」
「ええっ…俺らしいってどういうことだよ……」
リルちゃんもたまに鈍感だってぼやいてるし。というかまだ自分が鈍感だって気がついてなかったんだね。
「しかしそうか……俺、モテるのか」
「まあ、リルちゃんいるし、もうモテても意味ないでしょ」
「わふん……でも、もしこれから告白してきた相手に私より良い人がいたらどうしよ……」
「そりゃ、俺の方が心配なくらいだぜリル」
「わふ、私はショーが嫌がらない限り、ショーの側にずっといるよ」
「俺だって同じだ」
「……わふぇ」
そういえば、リルちゃんの故郷の村から帰ってきてからこの二人の距離がグンっと縮まった気がする。
リルちゃんは変わらないけど、翔がね。人前でもイチャイチャすることに寛容になったというか。
今だってお店の中なのにリルちゃんを肩から抱き寄せて頭も撫でている。あ、俺も今似たようなこと美花にしてるけど。
「ラブラブだね」
「お前らほどじゃねーよ」
「わふん、たぶん変わらないよ」
「そうかー?」
……まあ、世間って彼氏彼女いるだけでげんなりする人が多いっていうし、このネットで騒がれてる騒動についても、最悪の被害は考えなくて良さそうかな、たぶん。
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