第792話 大人数レベル上げ

「俺の持ってるダンジョンでいいのに。お母さんたちが発見したダンジョンに行くんだ」

「その方が私が慣れてるからねんっ」

「というか、クリアはしてなかったんだね」

「うん、もったいなくて。ねー、パパ」

「仕組みがわかっちゃえばもったいなくてなかなかクリアしようだなんて思わないよ」


 

 どこのダンジョンを周回してもらうか言おうとした時、お母さんが自分たちの見つけたダンジョンを使いたいと提案してきて、今こうなっている。


 たしかに慣れているダンジョンの方が良いよね。

 本当だったら俺が前にカルアちゃんたちと周回した喜びのダンジョンにしようと思ってたんだけど。


 ほらあそこ、敵が同時に出てきて周回が早く出来るから。……まあ普通のこの世界の人にとってはもっとも難易度が高いらしいけれどね。



「わかった、じゃあそうしようか。カナタ、トリアエリアル山までお願いね」

「わかった」



 もうすでに準備はできている(俺さえいれば準備なんてその場でできちゃうし)。カナタの瞬間移動で、一瞬でトリアエリアル山までたどり着いた。

 あ、出会い頭にアイアンゴーレムが1匹いたけど、とりあえず消しておいたよ。



「それでお父さん、どこらへんなの?」

「あー、ここからだと……ほんの少し下に降って、さらに左にまっすぐかな」

「おっけい、徒歩で行こう」



 計14人の大所帯。

 なんだかレベル上げをするたびに人が増えてっているような気がする。そのうち50人とかになったりしてね。

 いや、ないか。

 カルアちゃんたちは上げちゃったし、あと仲のいい人でレベルの低い人ってガバイナさんとラハンドさん、そしてそのラハンドさんのパーティの二人くらいなものだもんね。それにあの人たちは無駄に強くならなくていいって感じの主義らしいし。



「ここだよ」

「なるほどー、ここねー」



 たしかにダンジョンだ。

 俺はとりあえず結界用のアイテムとマジックルームを取り出した。いつもはコンパクトサイズのマジックルームは入り口がロッカーサイズなんだけど、今回は物置や小屋程度の大きさはあるよ。



「寝泊まりはこのマジックルームでしましょう。なかは、あの屋敷の半分くらいの大きさはありますよ。部屋もそれぞれ用意してます」

「ありがとう」

「じゃあまず、これでパーティ登録しちゃいましょうか」



 俺は冒険者となる時に必要な機械のオリジナル調整版を取り出した。ちなみにこれは改良に改良を重ねているため、神具級の代物となっている。



「8人パーティってこと?」

「ううん、俺たちも転生回数はあって困るもんじゃないから、14人パーティだよ。あと、どれだけ離れてても同じパーティなら必ず同じ経験値が入るようにもなってる」

「へぇ……すごいね!」

「あ、あと経験値を倍々に増やして行く方法があるんだけど」



 俺はカナタたちが経験値5倍になること(重複はしない)、持ってきておいたお地蔵さんに(個別でそれぞれ)転生回数を支払えば、そのあと経験値が数倍になる効果を得られる機能があることを話した。



「……ちょっと計算したけど、ここならほんの数回でレベルがカンストするね」

「そうなんだ」



 それは見てて楽しそう。



「じゃー、そろそろ潜ろうかな」

「あ、お母さんの周回方法見たいから、最初の一回目はついてってもいい?」

「うん、いいよ」

「その間、私たちは何をしていればいいかね? 有夢君」

「ショーさんの親父さん、マジックルームの中で普通に過ごしててください」



 普通っつてもわからないだろうから、一応全部屋にゲームとか小説とか漫画とかテレビ(映画やドラマのビデオのみ)とか用意してあるし食べ物は好きなだけ無限に出てくるようにしてるよ。



「……そうか。成上さん、疲れたりしたら交代しますので、いつでも言ってくださいね」

「火野さん、あの子が疲れるだなんて滅多にありませんよ」

「そ、そうなんですか曲木さん」



 む、ミカのおじさ……俺の将来のお義父さんは粘り強いこと知ってるようだね。俺自身は母さんの持久力、詳しくは知らないんだけど。



「あ、あの、僕らは……」

「他の皆さんと同じように、リルちゃんとゆっくりしていてください」

「は、はぁ……。あ、あの、声かかけてくれれば僕らも協力するので言ってください」

「はい、お気遣いありがとうございますーっ」



 そんなおおごとじゃないのにみんなに見送られながら、俺とかあさんはダンジョンにはいる。

 ふむ……多少の違いはあれど、哀しみのダンジョンとしてはなんらおかしなところはないかな。



「じゃ、始めましょうね」

「……それぞれの部屋に移動しないの?」

「え、なにそれ非効率な。まあみてなよ」



 そういうと、お母さんは俺が最初に与えた安物の杖をこのダンジョンのホールの真ん中らへんに突き立てた。



「有夢、ステータス高いし、私が本気出しても大丈夫よね?」

「うん。……あ、MPがなくなったらコレ飲んでね。全回復するから」

「アムリタだっけ? おっけー。じゃあ…やるよ!」



 巨大な水属性の魔法陣が現れた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る