第783話 お・ふ・ろ 2 (美花)

「がっつり?」

「す、数秒間お互いに固まっちゃったから……多分がっつり」

「目線の話で反応したのはそういうこと?」

「うん」



 へぇ、叶君も思考停止しながら目線は桜の秘部や胸を見ているなんて、さすがは男の子ね。

 あの子は理性やら桜を守りたいとかいう不思議なパワーが異様に強いイメージがあって、そういう欲望はないものだとばっかり思ってたんだけど。

 ……まあ、あの性格も服装も女の子みたいな有夢の部屋にも、本人は他人から貰ったとか言ってるとはいえ、如何わしい本があったんだし、なにもおかしくはないか。


 ……ん、まてよ?

 温泉地ってことは観光客はたくさんいたはずでしょ? それの男と女の人のところの壁が壊されて……もしかしてうちの妹の裸は、叶君以外の男の人に見られてる!?

 そ、それはやだなぁ。



「さ、桜、あまり凹まないでね?」

「え?」

「だ、だって温泉地の壁が壊れたんでしょ? 叶君以外の男の人にも見られて……」

「わふ、そうだよ。その……忘れた方が良くない?」

「それは大丈夫。そのSランクの魔物が近くに現れているとかで、他の観光客は誰もいなかったから。私と叶はSSSランカーだったから特別に……まあ半ば無理やり入れさせて貰ったの。貸切だったよ」

「よ、よかったー!」

「わふぅ~!」



 それならなんの心配もないわね。叶君はそのうち桜をものにするわけだし、裸を見るなんて時間の問題だったでしょう。

 


「うん、たしかにそれに関しては良かったかな」

「カナタ君だけでラッキーだったよ!」

「いやー、よかったよかった」

「まって、叶に見られることは良いことなの?」

「良いか悪いかで言ったら……ねぇ?」

「良いことだよね」



 相互で好きな人に……それも昔から好き同士だったんだから、むしろ「やっと」見られたって考えた方がいいと思うの、私はね。



「わふ、カナタ君、見たことに関してなんか言ってた?」

「ひたすら謝ってきたよ」

「たしかに叶君ならまずそうするよね。で、桜の身体に関しては? 本当に全部見られたんでしょ?」

「うん。その……綺麗だって……えへへ」



 照れ臭そうに桜は笑った。

 口で何んやかんや言っても、褒められると心底嬉しいのよね、わかるわかる。



「わふー、よかったねぇ!」

「スタイルとんでもなく良いもんね! ……私たち三人ともだけど」

「お姉ちゃん、笑いながら揉まないで」

「いやー、ついにこれが叶君の目に触れることができたのかと思うとつい。あ、これできっかり5秒ね」



 それで二人の間は進展した…のかな? 身体を見られるという形で距離が縮まってる気はする。

 まあ、二人で約束した年齢未満の時にエッチしなきゃ、裸見ようが触られようが私は別に叶君と桜に関しては問題ないと思う。



「……わふ、次は私だね!」

「一番色々ありそうだよね……教えて?」

「まず……」



 リルちゃんから、旅の途中に性の観念でついに衝突、初めての喧嘩をしてしまったことと、故郷についてからはずっと味方でいてくれて、なおかつ色々かっこ良かったと聞いた。

 やっぱり濃かったわ。



「初めての喧嘩……か」

「でもやっぱり喧嘩と言えるかどうかわからないよ。だって、ただの私のわがままなんだもの」

「そうかしら? 何かしてほしい時にわがまま言うのって大切だよ?」

「そうなの?」

「あ、桜は自粛しなさいよ。叶君、たぶん桜の言ったことならなんでもすぐに叶えようとしちゃうだろうし」

「き、気をつける……」



 そういう意味では危なっかしいかもね。

 リルちゃんはまた話し続けるわ。

 


「そ、それでね……よ、夜の事の感覚を……四日に一回からさらに縮めてくれるって……」

「そうか、ついに翔が折れたか」

「わふん!」



 四日に一回って普通に考えたら、普通の感覚かもしれないけれどリルちゃんの感覚からしたら欲求不満になりかねなかったから。素直に喜んでるわね。

 ……歳取ってもこんな感覚でいられるのかしら、私たち。


 

「で、村でのこともあって、私、もっとショーを好きになっちゃったんだ」

「いつものでマックスじゃなかったの?」

「そう、マックスだったんだけど飛び越えちゃったんだ」



 ニコニコしながら嬉しそうにしているリルちゃん。いやあ、本当に可愛いし胸でかいし羨ましいよ。



「翔の態度も少し変わった気がしたけど」

「わふん、そうかい? たしかにすこし抱きつきやすくなった気がするよ」

「いつも抱きついてるのに、そんなことあったの?」

「少しだけね」



 ああ見えてあいつはウブだったからその名残かもしれない。



「わふん、それでね、もっと良いことがあって! ……じつはほんとうのお母さんとお父さんの体の一部が手に入ったんだよ」

「えっ……ほんと!?」

「うん。アリちゃんにお願いして……生き返らせたり、幽霊として出現させてもらったりしてもらうつもりさ。 ショーのことを両親に紹介できるんだ! だからね?」



 有夢に話を通してくれないかとお願いをされてしまった。

 ふむ、そのくらいのことはしてあげようじゃないの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る