第659話 テストが終わって

「やっと終わった!」

「ね、やっとよやっと!」



 俺と美花は俺の部屋でそう言い合った。

 シヴァを封印してから四日間のテスト期間を経て……とにかく学期末テストが終わった。次は2月の終わりから3月にかけての学年末だ。割とすぐあるけどまあ、それは今は考えなくていいや。


 ちなみにテストの出来栄えだけど、俺も美花も、翔もリルちゃんも、さっき訊いたら叶と桜ちゃんも全教科満点取れる自信はある。

 俺の学校のテストは世間一般的からみてとても難しいらしい。俺たちにとってはこれが当たり前だけど、難しいという感覚はある。しかし今回はそれがなかった。

 

 

「ちょっと自信ないところあるんだけど……日本史の問4の5問目の答えって3でいいのよね?」

「ああ、うん。一緒だよ」

「よかった」



 確かにそこは曖昧だったし。きっと他のみんなの正答率は著しく低いに違いない。



「それにしても翔とリルちゃんは忙しそうだったわね。終わり次第すぐに部活に行っちゃったもの」

「ね、着替えとか詰まったバッグもかさばってて大変そうだったし」

「来年からは改善されるといいけど、私たちの学年はインターハイ関係無いのよねぇ」

「まあね」



 でも星野君のような有望な後輩が大変な目に合わないようにするだけでも大事なことだと思うな。



「憑き物が取れたような顔をしてるな二人とも。テストが大変なのはこの何百年をみてきて重々承知している。お疲れ様」

「ありがとシヴァ。もうだいぶうちは慣れた?」

「ぼちぼちだな。なにせピエロより格段に背が低いだろ? 体の勝手が難しくてな」



 そう言いながら犬ロボットのシヴァはクルクルとその場で回ってみせる。

 このシヴァ、両親には『アナズムで設計したやつを試しに作ってみたんだよね。そのうち向こうに連れてくけどしばらく置かせてね』って話してある。

 超技術を使った未来ロボットって感じに認識してもらってるよ。



「まあ慣れなよ、しばらくそのままなんだから」

「ああ。ところで私を抱っこしてみたりしたくないか、美花」

「えー、ビジュアルはそりゃ可愛らしいけど…中身が覗きをするような魔神だからね。遠慮しておきます」

「くっ」



 まあシヴァの扱いはこんな感じで落ち着いてる。

 もう何もこちらに害を加えることはできないんだ、こんな扱いしちゃっても平気なの。



「そういえば明日からは翔の試合だ。 私も連れてってくれよ。側から見たらただのオモチャなんだし構わんだろ?」

「あの覗き機能で我慢できない?」

「生で見れるなら生で見たい。翔の勇姿をな」

「仕方ないな……じゃあつれてくけど一切喋っちゃダメだからね、外で」

「分かっている」



 ぐぬぬ…連れてくことになっちゃったけど大丈夫かな。

 一応俺の手から離れて脱走なんてこと絶対にできないから最悪でも大事はないと思うけどさ。



「…む、むむむ」

「ん、シヴァ、どうしたの?」

「私はしばらくリビングで睡眠モードになろう」

「へ?」



 睡眠モードは俺が搭載した深い眠りに好きな時間だけなれるモード。寝たという感覚は残るけど実際は時間を飛ばしてしまったみたな感じになると思う。

 その気になれば寝っぱなしで100年だって過ごせる代物。俺が無理やり発動させることもできるし、シヴァが自ら眠りにつくこともできる。



「よく考えたら二人とも年頃の男女だ。いつまでも第三者がこの場にいたらしたいこともできないだろう」

「いや別に…今日はお母さん家にいるから色々できないことあるし…」

「まあまあ、遠慮するな。ではな」



 シヴァは自分でドアを開け、リビングへと行ってしまった。なんか気をつかわれちゃったんだね。

 


「……ふむ、行ったか」



 美花がそう呟く。もしかして美花がなにかそういう雰囲気を出していて人の観察をずっとしていたシヴァは空気を読んでくれていたとかかな。



「ま、とにかく有夢お疲れ様」

「あ、うん。お疲れ様」



 そう言いながら美花が俺の頭に手を伸ばし撫でてきた。いつもテストに関しては優位だったからその癖なんだろう。



「テスト同点だといいね」

「二人ともお互いの言うこと聞かなきゃいけないけどね」

「お互い別に変なこと頼まないじゃない。それとも有夢は私に変な命令する?」



 上目遣いをしながらそう言ってきた。

 なんで今、やけに色気を出してるんだろ。

 しかし、美花に変なことを頼むのかぁ…変なことってなにかな? 『1日中俺のしもべになれ!』『1日中裸で過ごせ!』……みたいなこと? だめだね、美花は大切だからたとえ対象が俺だけだったとしても変なことはさせられないよ。



「しないなー、美花大切だし。常識の範囲内のお願いだと思ってくれていいよ」

「えっへへ、さすが有夢! しゅきー」

「俺もすきぃ!」



 互いに身を寄せ合ってキスをし、ただのキスで慣らしたらディープキスに移行する。


 図らずもシヴァの思惑通りのことをしてしまった。今まで俺たちのことを女同士だと思ってたくせに気遣いは上手なんだから。これが数百年人を観察し続けた神の空気を読むことのうまさなのかもね。


 これならお風呂とかのぞいてないって話しも信用してあげて良さそうな気がする。

 さて…どこまでイチャイチャしようかな。

 

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