第658話 魔神をどうするか
「さて、取り憑く先がなくなったシヴァをどうするかなんだけど」
サーカスから帰って来たあと、叶が作戦会議だと称して全員を俺の部屋に集めた。お部屋がぎゅうぎゅうだ。
【うむ、いい待遇にしてくれると嬉しい】
「いい待遇ねぇ。まあなんにせよ早くちゃんとした容れ物作らないとまた誰かにとりつく可能性あるもんね」
【今、私が取り憑けるのはあのビエロと翔と叶だけだ。ちなみに叶に取り憑けば桜とスキンシップできるとかは……】
「ない。絶対させない」
【だよな】
叶の即答。
身体が自分でも中身が他人なら彼女と接させたくないもんね。俺だって嫌だもん。
「てな訳でにいちゃん。さっそく今から封印具作ってよ。……一応、俺の案としてはね」
コショコショと叶が耳打ちしてくる。
叶の案、それは中々面白いものだった。
「なるほど、まあやれたら面白そうだよね」
「じゃ、お願いね」
「ふふ、まかせてね!」
というわけで叶の注文のもの作ろうね。叶が注文したのは『犬型ロボット封印具(神具級)』。
シヴァの意思で自由に動く犬型ロボットを作り、そこにもっといい容れ物を思いつくまで一旦封印するらしい。もちろん、危害は周りに加えられないように普通の犬ロボットまで性能を抑えるよ。
「それじゃあ作るからみんなで監視しててね」
「うん!」
【作業風景を見せてもらったりとかは】
「まあ見せてあげてもいいけど、ふつうに簡単なロボットを組み立てるのと見てて変わらないと思うよ」
【そうなのか】
もう俺はステータスを自由に使える。
つまりダークマタークリエイトも自由自在に使えるということだね。とりあえず『伝説級の犬ロボット』を簡単に作り出す。次にそれを分解し、それからそのパーツ全てを伝説級に作り直し再び組み立てる。そしてエンチャント。
これで『神具級の封印機能付き犬ロボット』が完成するはずだよ。
「ふんふふんふふーん」
【おお…作り始めた…】
「今更だけど地球じゃ考えられないような動きしてるわね」
「わふ…手が何本もあるように見えるよ」
俺自身は普通に作ってるつもりなんだけど、周りからはそう見えるのか。やっぱステータスって異常なんだねぇ。
「ところで私、アリムちゃんの部屋に初めて来たんだけど……翔みたいな男っぽい匂いがしないね。ミカちゃんが日頃から出入りしてるからかな? でも私も普段からショーの部屋に出入りしてるし…」
「あのねリルちゃん。鼻がいいならわかると思うけど…そもそも有夢からは男のようなニオイはしないよ」
そう、俺は声も女の子。体も(胸や秘部以外の基本的に)女の子。
顔はどうみても女の子。身長も女の子の圏内だし、匂いも男っぽくなく花の匂いまでする始末。
よく考えたらすごいよねー。
ははは、うん、すごい…。
「そういえばそうだったよ。すごいねー」
【私もあゆちゃんの匂いを嗅いでみたい…。あ、皆、そんなひくな。そんな目で見るんじゃない】
変態的なこと言われた。慣れてるけど気持ち悪いものは気持ち悪い。
「ねぇ、変なこと言うならこのロボットに変な機能つけるよ? シヴァ」
【悪かった、謝る】
さて、パーツの準備は整った。
これから組み立てを始めようね。よく考えたら俺ってば今までこういうこと全くしてこなかったな。
プラモデル作りとかさ。基本的にゲームしてるだけだったからなぁ。中々楽しいかも。
「そういえば私達のことずっと観てたのよね? 地蔵の中からいつでも覗ける機能があったんでしょ?」
【そうだ。ここ半年は封印の力が弱っていたため、より封印を弱めることに集中するために観ていなかったがな】
「だからリルちゃんに気が付かなかったり、私達が付き合い始めたことを知らなかったのね」
【そういうことだ】
俺も地蔵で同じような機能を手に入れた。
まだ試してないけどきっと観ることに関しては自由自在なんだろう。やらないとは宣言したけど美花のお風呂を覗くことだって容易い。……やってみよっかな…1回だけ。
美花も良いって言ってたし。
やっぱやめとこ。
…って。
「まさか俺たちのお風呂のぞいたりとかは」
【その機能を初めて説明した時にも言ったが、それだけはしていない。みんなの裸は一度も見ていない。信じてほしい、お願いだ】
「まあ…そんなにいうなら信じるけどさ」
こんなふうに喋ってる間に完成しそうだ。無駄に可愛らしいデザインにしてしまったし、機動性もかなり充実してるから普通の獣と遜色ない動きができるだろう。匂いもかげるし食べ物の味もわかる。肌の感触もわかるようにした。
ちょっとサービスしすぎたかな?
まあこのくらいいいかな。
「よし、完成した!」
「わふー、さすが速いねぇ」
【それが私の容れ物か。かわいいな】
「じゃあ入れちゃおうね。その金剛杵をそのままここにあてがえばいいんだよ」
俺は机の上に置いた金剛杵を持ち、犬ロボットにかざした。淡い光が金剛杵を吸い込む。
「おお……これで封印し直せたのか?」
「うん、多分ね。気分はどうかな、シヴァ」
そう問うと犬ロボットの目が黒い画面の中で赤く光った。首もキョロキョロと動かし始める。
「素晴らしい、快調だよ」
「あれ普通に喋れるんだね。声はロボットだけど」
「そういうふうに作ったからね。普通にメッセージだけで話すこともできるよ」
「ふむふむ、そのようだな。……私の管理をしてくれるのは有夢ってことでいいのか?」
あっ、そうか。
まあ自然とそうなるよね。
「まあ、そうなるかな」
「そうか、よろしくな」
すぐにアナズムに送るけどね。
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