第624話 県大会後 アナズムにて
「よいしょっと」
ふふん、いつも通りなんの問題もなくアナズムに戻ってこれたね。いつものメンバーに欠落がないかも確認。
俺とミカ、カナタとサクラちゃん、そしてショーとリルちゃん。全員きちんと自我があるみたいだ。うんうん。
「さて、とりあえず県大会お疲れ様ぁ!」
「お疲れ、翔」
「優勝おめでとうございます、翔さん」
「す…すごいですね!」
口々にそう言った。大会終わった直後にもたくさん褒めちぎってあげたんだけどね、言われて嬉しくない人なんて基本的にいないでしょう。
「ははは、いや、本当にありがとな。みんなの応援のおかげだって」
「何言ってるのよ、苦戦のくの字もなかったくせに」
「そ、そんなことないぜ? 相手をしてくれた奴らも強かったって」
でもそれよりショーの方が圧倒的に強かったってことだよね。アナズムではなんでもやり放題だから、例によって今日もお祝いをしてあげよう。
「それで、今日は何食べたい?」
「お、今回もなんか作ってくれるのか。じゃあ寿司で」
「はいよー」
昨日あれだけお弁当の油物系食べたからね、生魚を食べたくなるのはわかるよ。しゃんと作ってあげなきゃね。
「このまま一気に全国優勝しちゃってよ」
「おう!」
「あれ? そういえばリルちゃんは?」
そういえばショーのことを一番手を叩いて賞賛しそうなリルちゃんの声が聞こえない。
「リルならここにいるぞ、ほれ」
ショーが俺たちに後ろを見せたと思ったら、寄生でもしてるかのようにべったりと背中に抱きついているリルちゃんの姿が。あ、そういえば腕だけなら見えてたわ。
「リルちゃん、何してるの?」
「……わふ、抱きついてる」
「昨日からこんな調子なんだ」
へえ…昨日からね。
ミカが一瞬にやけた。考える事は一緒だ。
「昨日、帰ってからずっとこうなの?」
「ああ、飯と風呂以外な」
「ふむふむ」
風呂が一緒じゃなかったのか。
まあ、ショーのばあいおばさんが結構な頻度で家にいるし仕方ないね。
「それで、部屋でずっとそうやって抱きついてたんだ、リルちゃん」
「本当に抱きついてるだけなのかしら?」
そう問うと、リルちゃんはショーの背中に顔を埋めたまま答えてくれた。
「もちろん途中でおっ______」
「おっと、そこまでだ」
「ぱふん」
ショーはリルはちゃんが言い切る前に素早く引き剥がし、前から抱きつき直して言葉を封じた。だけどショーの関連で「おっ」と出てきたらあれしかないからもう遅いんだけど。
「ねえねえ、ミカさん、どうせ今日もこの二人はお部屋でお楽しみするんですよ?」
「そうねぇ、なら私たちもどうですか」
「いいですねぇ」
そんな会話をニヤニヤしながら翔の前で繰り広げてあげる。あ、カナタとサクラちゃんは茶番に飽きたみたいで、一言『部屋行くわ』って言ったっきり本当にお部屋に戻っちゃったよ。
「……そ、それは」
「うん、今日もいいことしてあげるんだよ」
「昨日のがそうじゃなかったのか?」
「えー、とすると前回よりスケール小さいよ。そんなの良くない」
まさか幼馴染間でこんな会話する日がくるなんて微塵にも思わなかったな。まだ若いんだね、俺たち。
「じゃあもうそれぞれでお楽しみしたほうがいいわね」
「わふん! そうする」
「り、リル。別に無理しなくても…いや、無理じゃないんだな」
そういうわけで俺たちはそれぞれのカップルで別々になり、部屋に戻ってきたんだ。
「ふぅ…」
「どうしたの、ミカ」
「いや、すこしリルちゃんのことを考えててね」
ジュースを自分の目前につくりだし、ソファでくつろぎながらそう言ってくる。
「何か問題でもある? いつも通りショーにメロメロなだけだとおもうよ」
「でもあそこまで興奮してるのは初めて見たからね……私も有夢を前にするとあんな風になってるのかなーって、つい考えちゃったの」
ミカが……昨日のリルちゃんみたいに興奮状態になることがある? さぁどうだろ、カナタやサクラちゃんならあるっていうんだろうね。
「まあいいじゃない別に。愛し合ってたらノープロブレムさ」
「何気に有夢が言わなそうなこと言ったわね。そうね、無問題よね」
ニコニコしながらそう言うと、ミカは薬を一つ飲んだ。その瞬間、身体はいつも見ている16歳の大人な姿に。
「えへへ、と言うわけであゆむぅ。ね、ね、イチャイチャしよ?」
「ああ、そういうことね」
俺もすぐにオ・ト・ナな姿に戻った。
ソファに座っているミカの手を引き、抱き寄せる。いいにおいがする。そのままの流れで姫さま抱っこをした。
よし、あとはいつも通りベッドに運んでじっくりねっとりイチャイチャと_________!
【アリムちゃん、ミカちゃん! 新しい情報が!】
俺はとりあえずミカをベッドにおろした。
互いに無言で見つめあう。そして、ふかーくため息をつくの。
はいはい、いつものいつもの。
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