第603話 誰かがつけてくる?
「なんで俺たち集まったの?」
金曜日。
なんか急にお昼ご飯の時に呼び出された。中高大一環だから、やろうと思えば中等部と食事できるのはいいけれど、なんで呼ばれたんだろ翔と叶に。
「最近、俺らをつけてる奴がいる」
「うん。まだ支障が出ない程度だけどね」
「えっ!?」
大変!
あの二人もストーカーができても不自然じゃないほどの可愛さだから……。
過去に俺と美花もそういう被害で苦しんだことあるし。まあ、翔と翔のお父さんがなんとかしてくれたけど。
え、もちろん俺へのストーカーさんは男だったよ。
「まさかだとは思うけど、リルちゃんと桜ちゃんを一度に狙う欲張りストーカー……!?」
「そうではないような気がするが……な」
「その線は消せないけど」
こわい。本格的に男性がそういう感じ(ストーカーとか痴漢とか…)に回った時は怖くて恐ろしいからね。
もし二人の言ってることがほんとなら、由々しき事態だ。
「それにもしかしたら兄ちゃんと姉ちゃんも狙われてるかもよ? ほら、兄ちゃんは俺らの中で一番気が抜けてるし。兄ちゃんだけ気がついてないわけだから違和感に」
「あ、ひどい! プクー」
「警戒した方が良いことには変わりねーよな。一応、親父には言っておいた」
翔のお父さんが警戒してくれるなら地球ではこれより安心できることはないんだけどね。警察だから。
でも叶は相変わらず浮かない顔をしてる。
「…これがもし、普通の人間なら翔さんの親父さんに頼ればいいし、それが難しいなら俺の通ってる研究所が、俺にならボディーガードを貸してくれるからすぐ解決すると思うんだけど……」
「ああ…。だが叶君は別の心配してるんだろ? 俺もだ」
「ええ。もしこれがアナズム関係だったらと思うと、ただ事じゃなくなるので」
はえー、なんだか二人だけで話が進んじゃってるみたいだわ。なんか疎外感……ん?
そもそも二人はどうしてお互いになにかやりとりしてる感じ醸し出してるの?
「そういえば二人はいつの間にやり取りしてたの?」
「ああ、叶君が俺に、ストーカーされてるみたいだから大事にならないうちに相談したいって連絡が来てな」
「そしてら翔さんも……って話になってね。なんだか怪しいねなんて言い合ってたんだよ、昨日から」
…そうか、叶と翔は違和感を感じた同士で連絡を取りあって俺に忠告して来たのか。それはありがたい。ありがたいけれど…。
「カナタァ、なんでまずお兄ちゃんに頼らないの! お兄ちゃんに頼ってよ! プックーーー!」
「いや、兄ちゃん女の子だ…女の子 み た い だし……。逆に被害にあうし…」
「じゃあお母さんとお父さん!」
「うちの両親よりも翔さんと親父さんの方が確実だろ?」
それを言われるとぐうの音も出ない。ストーカー・痴漢対策などはいままで火野家に任しっぱなしだったからね。
「ぷふー。とにかく気をつけなきゃ」
「何があっても桜は守るから、大丈夫」
「俺もリルをだな」
守るべき人がいる俺たちは強い! …はず。
俺と叶…叶は頭脳があるとして俺はわからない。強くないし、こっちでは。
「こんな状況でどうするの? 翔は土日でインターハイがあるし、叶は桜ちゃんと動物園デートでしょ? 俺は美花とブドウ狩り行く約束してるんだよね」
そんな分散されてる間に襲って来たりなんかしたら危ないじゃない? でも大会もデートも外せない用事だしさ。
「あー、それはなんとかなると信じたいな」
「みんな予定が詰まってるんだね……それにしてもブドウ狩りはいいね。俺達も今度行ってみるよ」
なるほど、とりあえずは大丈夫だって二人は考えるんだね。まあ、叶が言うなら確実か。
ううむ、やっぱり対策は必要だよね。
「次、アナズムに帰った時は全員で護身術でも練習しようね」
「そうだな、それがいい」
体術の奥義があるからこっちでもトップレベルのプロ格闘家並み(それ以上かも)の動きはできるんだけどね、一応ね。
「俺からは話したかったこと全部話せたんだけど」
叶が締めくくるようにそう言った。
翔も頷いてる。
「お昼休みもあと15分しかないからね。解散だね。…あ、ところで翔の大会をいつ応援しに行くかなんだけどさ」
「おっ、悪いな」
翔は頭をかきながら喜んでいる。
毎回、どこかしらで応援をしに行ってるからね。まあ幼馴染だから。
「地区大会はみんなデートあるし、そもそもどうせ勝ち抜くんだから応援必要ないよね。県(都道府)大会の方を応援しに行くよ」
「どうせ勝ち抜くって……んな確定したわけじゃないだろ? でもありがとな」
そんな話を少しだけしてから俺達は解散した。
ストーカーかぁ……気をつけなきゃね。こわいこわい。
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