閑話 王子達のデート (side ルイン) 2

「そういえばここ芸術作品増えた?」



 二人は公園の歴代国王の像が飾ってある通りを抜け、数多のオブジェが置かれているところまでやってきていた。



「んー、どうだろうね。一応オブジェを置くときは国に許可を求めるように言及してあるし、こんどその部署の人に聞いてみよっか」

「そうね」



 ルインとリロはオブジェを見て回り、貴族、あるいは王子としての感性を頼りに評価をしていった。



「このミルメコレオの彫刻はよくできてるね」

「でも所々雑かも……アリムちゃんなら…」

「まあアリムちゃんならね」



 また別のオブジェに目をつける。



「これは何を表現したかったのかな?」

「…んーと、喜び…….だって」

「アリムちゃんなら……」

「まあアリムちゃんならね」


 

 二人は次々と作品を見て行くも、その次に出る言葉は『アリムなら』であった。

 思わず二人は笑ってしまう。



「私たち、アリムちゃんに影響されすぎだよね」

「はは、そうだね。まあ仕方ないよ…あの子が今みたいに常識から外れた強さを身につける前から知ってたんだから」

「そう考えれば貴重ね…」



 しみじみと二人はあの日のことを思い出した。

 


「……あのとき、いえ、今までもあの子がいなかったら私達はどうなってたのかしら?」

「わからないよ。ただ感謝するしかない」

「そっか」



 ルインはリロの顔を見た。リロもルインを見つめる。

 そして互いに笑いあった。



「今、ルインが思ったこと当てようか?」

「ふふ、なんだろう」

「いつかアリムちゃんの銅像をこの公園に建てようか…でしょう?」

「あたりだよ」



 事実この話はだいぶ前から出ているのだが、二人はそのことは知らない。

 ひとしきりクスクスと笑った後、別の場所に移動することにした。



「……またなにか面白いものが…あったわね」

「あれはなにかな? んーっと…」

「多分、音楽で食べてる街頭芸術家ね」

「ああ、なるほど」



 二人はその音楽家の近くまでゆく。

 その音楽家の演奏はなかなかうまく、それなりの人だかりができていた。

 しかし、ちょうど演奏が終わったところであった。



「ありがとうございます、ありがとうございます」

「あら、終わっちゃった」

「まあ仕方ないよ……」



 人々が去ろうとしたら、その音楽家は声をあげてこう述べた。



「では期待にお応えしましてもう一曲。そうですね、では恋の曲でも」



 ルインとリロ、そしてそのほか帰りかけていた人達の大半は足を止め再び音楽に耳を傾ける。

 その音楽は実に二人の心境、内心にぴったり。



「わぁ…なんか、なんか言えないけどいいねっ…!」

「うん。ここでデートしていて正解だったと、そう思えるよ」



 ルインは自分でも気がつかないうちに、いつの間にか離してしまっていた手をリロに再び近づける。

 リロはそれに気がつき、おずおずと握り返した。

 こうして二人はその世界に一時だけ溺れる。



「_____ありがとうございました」



 音楽家はお辞儀をする。

 拍手が鳴り響いた。

 その拍手の勢いで二人は元の世界に戻ってくる。



「な、僕はなにを…」

「…これがロマンチックっていうやつなのかな?」

「わ、わからない。とりあえず今の人にはきちんと報酬を払わないとね」



 ルインは手持ちの銀貨数枚をその音楽家の木箱の中に入れ、その場を去った。

 その後その音楽家は業界で売れることになるのはまだ誰もしらない。

 

 

「まだなにかしら面白いことがあるはずだよ」

「そうね……あ、そろそろお昼ご飯でも食べましょうか」



 時計を確認し、そういった。

 ルインは頷く。



「そうだね、どこに行こう……食べたいものはある?」

「ううん、なんでも大丈夫よ」

「じゃあ…あれにしない?」



 ルインが指をさしたのはオシャレなカフェで、遠くから見る限りテラスにいる全ての客がサンドイッチを頼んでいた。

 


「サンドイッチかぁ…これもアリムちゃんの賜物ね」

「普段はアリムちゃんの料理が料理長達の料理ばかりだからね。たまには店でサンドイッチ食べるのもいいでしょ」

「そうね」


 

 二人の中で意見は一致し、店に入り、プレーンサンドを頼む。野菜とハムを挟んだだけのシンプルなものだ。



「そうだ、ね、ルイン」

「ん? なんだい?」



 頼んだものが来るのを待っている時、リロが少し頬を赤く染めながら話をかけて来る。



「ま、またデートってしてくれるの?」

「ああ、リロが望んだら…忙しくない日はいつでも」

「な、ならさ、今度は私がお弁当作ってくるっていうのはどうかな? ……仕事以外で作ったことないけど…」

「本当に?」

「ええ、本当よ」

「そうかぁ…楽しみにしてるよ」



 しばらくしてサンドイッチが来た。リロはこの味をまずは越えようと味を覚えることに努めた。

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