第593話 どうしようか。
「……と、いうことがありまして」
俺はメフィラド国王にこのあいだあったラーマ国王とのできごとを話した。ほら、俺はとりあえずこの国の人間だからね、これ以上あの国と深く関わっていいのか相談するのも兼ねてるんだよ。
「なるほどな。そんな依頼をされたのか」
「はい。なので明後日からその杵を、ラーマ国王に読ませてもらった文献から複製したものを見ながら作ろうと思ってます」
勇者の剣の時も過去の文献を見ながら作ったっけ。どう考えても俺の神剣の方が強いのにね。
神具級と比べちゃダメか。
「そうかそうか。あの国はこのアナズム屈指の三大国の一つにも関わらず長らく「者」の武器がなくて、威厳がないなどとたまにもらしていたからな。いいのではないか?」
案外国王様呑気だな。
まあ、ブフーラ王国とは仲がいいみたいだしある程度は安心してるんだろうけど。
これが神樹国なら全く対応違ったんだろうね。
まあ俺も、叶達が酷い目にあわされたあの国の国王に手を貸そうだなんて微塵にも思わないけれど。
「そんなことよりアリム。私はその本を直すという行為の方に興味をもったのだが?」
「……あ、まさか」
「そのまさかだ……お願いできないか?」
メフィラド王国にもボロボロの文献が多数ある。
俺も図書館にある本の中の情報をごそっとトズマホに入れる際に、そういう、壊れて本が集まった場所は除いてだだよね。……久しぶりにトズマホ内の情報が増え、アップデートされるいい機会かもしれない。
「わかりました、やりましょう」
「頼んだぞ。……アリムは図書館の全部屋に自由に出入りできるように許可しているのだから、部屋の場所はわかるよな?」
「ええ、バッチリです!」
だいぶこもったから、あそこで職員やれるくらい熟知しちゃったしね。…まあ俺、情報を集めたのはいいんだけどめんどくさくて全く読んでないから宝の持ち腐れだよね。
かて、今すべき事をしなければ。
「あ、その前に今日はカルアと遊んで行けよ」
「えっへへ、それが最優先ですよぉ」
このお城に来たらカルアちゃんとあそぶ、それが一番の優先だ。
「杵の作成も控えてるのだし、修復はいつでもいい。作業をする前に声をかけてくれよ」
「ラジャーです!」
というわけでカルアちゃんのお部屋に来た。
最近は遊べる道具を増やしてる。この間はけん玉をやったかな。その前はカルタだったっけ。
なにせもうカルアちゃんには俺たちが異世界人って言うのバレちゃってるからね。なんでも持ち込み放題よ。
そのうちテレビゲームまで持ち込むのが俺の最終目標だったりする。
「というわけでカルアちゃん、今日は何をしようか!」
「将棋なんてどうでしょうか? 飛車と角の使い方、やっとわかって来たんです!」
「おおぉ…将棋か。いいね」
この世界にはチェスはあるけど将棋はない。
チェスと将棋の大きな違いの一つは、倒した敵を味方に引き込むことができるかどうか。
「倒した兵隊さん達が、仲間になって共に戦ってくれるのは、なにやら一つの物語を見てるみたいで楽しいんです」
「その代わり、もともと味方だったのも裏切るよ…」
「そ、それはそれです!」
ぷくー、と、俺の真似をしてほっぺたを膨らませるカルアちゃん。ほぼ反射でミカはそのほっぺを潰した。
そのフラッシュバックで俺のほっぺの触り心地が最高なことを思い出したのか、カルアちゃんは俺の頬を摘んできた。
「最近、アリムちゃんのほっぺたを触ってませんでしたね。相変わらずものすごい触り心地です」
もうこれにも抵抗がすっかりなくなったなぁ。
「さ、将棋を指しましょう、将棋!」
そういうわけで俺たちは将棋をやるの。なんでも、運が関係しないチェスとか将棋とかのボードゲームはカルアちゃんにとって楽しくて仕方ないらしい。
人生ゲームとか色々やってきたけど、カルアちゃんの豪運でほぼ毎回1位になっちゃうものね。
「そう言えばアリムちゃん、お仕事の方は落ち着いてきたんですか?」
「そういえばだいぶ落ち着いたね」
この世界は交通手段が全く整ってないから、他国や他の街に俺自身が行かなくて良いのが強いのかも知れない。
もしこの世界の交通網が発達してたなら、今頃俺はそこらじゅうを飛び回ってた事だろう。
そういえば、依頼主から直々に他国に来るように依頼されたのってラーマ国王が初めてじゃないかしらん?
あそこまで熱烈なファンの王族も初めてだったし……あの人ってば、ボクの初めてをどれだけ奪ってくんだろ……なんつって。
「アリムちゃん、早く遊びましょうよ!」
「あ、ごめんごめん」
思わずぼーっとしてしまった。
カルアちゃんが先行で、俺が後攻、ミカが見てるだけ。
カルアちゃんは歩を一つだけ動かした。
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小説家になろう 様にて、本作品が2000万PVとなりました!
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