第571話 付き合いの方法 -2- (翔)

「お疲れーっ」

「お疲れ様でしター」



 土曜の部活が終わり、午後3時過ぎ。

 汗だくの俺とリルは一刻も早く家に帰ってシャワーを浴びたいところだ。まあ学校にもシャワーあるんだけどな、誰も使わねーんだよ不思議と。



「リルって部活後はあんまり抱きついて来ないよな」

「わ…私、汗臭いから嗅がれたくないんだよ」

「そうか」



 男である俺と違って女の子だからな、臭いは気にするんだろ。さすがに俺も嗅がれたくないと言っているリルの汗の臭いを、無理やり嗅ぐほど変態ではない。



「そういえばショー、聞いたかい? あのお地蔵様のことなんだけど」

「ん? ああ、あれな」



 幻転地蔵の首がとられてしまっていたらしい。有夢や美花が直したのではなく、それはまた別の通りすがりの人が直したんだと。

 月曜日のことらしいく、今日、有夢から聞いたんだ。

 こんだけ遅く発覚したのは地蔵の首がとられてからすぐに通りすがりの人が直したからだな。

 まあ佐奈田だったら次の日にはわかってたな、これ。

 幻転地蔵を大事にしてるのはあそこらへん一帯だけだし。怪奇現象の起こる地蔵とかては有名らしいけどな。



「どうして首なんか取るんだろうね?」

「さあな。リルだって…」

「あ、あれは誰かに操られたんだよ! …今回だってきっと誰かその被害にあったのかも」



 ……やはりリルと同じ目にあったんだろうか。

 それともただのイタズラだろうか。…あの変な動作の発動条件がアナズム流の祈りだったと考えたらやはりただのイタズラなんだろーな。


 だとしたら罰当たりな話だ。

 幻転地蔵は中身のちゃんといる本物だから、恐れ多くてそんなことできないぜ。

 つってもそれは俺達だけが知ってることで他の人が知るわけもないんだが。



「それより今は明日のデートだよ! またゲームセンターに連れて行ってくれるんだよね?」



 嬉しそうな顔をしてリルはそう言ってくる。

 めちゃくちゃ可愛いが、今回はまた違う。新たな提案をしたらリルは喜んでくれるだろうか。

 ……よし。



「いや、また別のところに行こうと思う」

「わふ? 別の場所? どこに連れてってくれるのかな」



 俺は動物園か遊園地か散々悩んだものだ。

 いっそ、どちらもついてる動物園の方がいいのではないかとも思った。

 しかしよく考えたらリルは鼻がいい。

 つまり、動物園に連れて行くのはいささか苦痛になるんじゃねーかって考えたんだ。

 という訳で。



「遊園地だ」

「わふ! 遊園地ぃ! ほんと!?」

「ああ、本当だ」

「わーい!」



 ぴょんぴょんと子供のようにリルは跳ねる。跳ねるというよりはスキップか。

 汗ばんだ大きな胸が揺れてエ……いや、なんでもない。



「遊園地なんて初めてだよ! いや、地球の記憶としては行ったことあるらしいけど、私自身は初めてさ!」

「そうかそうか。いやぁ、デート場所についてこの間、有夢と相談してたんだがさすがにデパート巡るだけなのはどうかって言われてよ」

「ああ、今週の月曜の! …ショーが愛してるって叫んでくれ時だね」



 モジモジとリルは俺の顔を伺った。そう言うことで、どんな表情をしているか見たいんだろう。

 リルの満足がいく表情になってるだろうか。



「そっかー、楽しみだなー!」

「そんなに楽しみか?」

「うん! 今日は眠れないくらいだよ」



 眠れないくらい…なぁ。

 俺も今日は眠れないかもしれないな。明日は誘わなきゃいけないわけだからな。アナズムの時みたいに、初めてを衝動的にするのではなく。


 な、なんなら今日は練習するか。

 自分から誘う練習だ。断られたらどうしよう…だなんて考えはやめた方がいいな。

 そもそもリルは断るのかも怪しいけどな。



「ね、眠れねーんだったら今日も俺の部屋で寝るか?」

「わふ!?」



 リルは動きを止め、もともと大きな目をより大きく見開いた。



「ど、どうなんだ?」

「是非お願いするよ!」

「そうか」



 よかった。

 断られたら2度と自分から言わないところだったぜ。じゃあついでに。



「あとあれだ、家に帰ってシャワーを浴びたら4時くらいだろ? 3時間くらいどっか散歩するか」

「今日はどうしたんだいショー! 嬉しいよぉ!」



 これは幻覚か。

 尻尾と耳を嬉しそうに動かしているリルが見える。度々見えるな、この幻覚。



「ショー……! あ」



 リルは抱きつこうとしてきたが、それをやめた。

 それから自分の脇の臭いを嗅いでうなだれる。リルは自分のにおいに厳し過ぎるんだよな。

 まあ元が狼だから仕方ないかもしれねーけど。



「リル、俺は別にリルのこと汗臭いだなんて思ってないが? そもそもそうでも気にしないし…今はここら辺人いないし…」

「………わふぅ……わっふぅ…」



 リルは身体が勝手に動いちゃうんだとでも言わんばかりに俺に抱きついてきた。

 汗でしっとりとしていて、普段よりよくわかる大きな胸がエ……いや、なんでもない。

 俺はリルの背中をさすった。




######



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