第543話 結婚式
「ふぅ…やっとついた」
「お疲れ様」
俺目当ての貴族と超高ランク冒険者の波を、笑顔で萌え死にさせながらなんとかかいくぐってきたの。
みんな俺を見るたびに可愛いって言ってくれるのは嬉しい。
多分今は大体の人が装飾か俺とミカに釘付けかもしれない……なんてことは今回はさすがにないよ?
前に生きてた時には今の俺みたいにアイドルのような事をしていた国王様の奥さん(王妃)のカルナさんだとか、サクラちゃんだって居るし……他国から来た美人だって評判の貴族とかも在席してるからね。
「ミカも挨拶大変だったでしょ」
「うん、すごく大変だった」
ミカは絵にも描けない美しさを誇ってるもんね。仕方ないね。ドレス姿が半端じゃなく可愛い。
「そういえばお料理はいつ出されるの?」
「披露宴前だね。誓いだとかキスだとかが終わって、出し物関係のやつになる前の時間」
「へえ」
本来の結婚式ならば新郎新婦がご飯をゆっくり食べる時間はない。故に、実は新郎新婦の周囲だけ食事の間はゆっくりと時間が流れるような細工もしてあるから大丈夫。
「おっ、時間だ」
いつのまにか近くにいたショーがそう呟いた。
示し合わせたように、談笑したり、何かの取引をしたり、こんなところでも仕事をしたりと忙しそうだった人々が黙り込み、祭壇の方を見つめた。
祭壇には既にクリスさんが立っている。
______神聖な雰囲気が流れ始めた。
まあそういうのは事前に俺が少し弄ってるんだけど。
「本日は各国より、皆様よくおいでなされました______」
大司教による挨拶が始まる。
「__________それでは、新郎の入場です」
神様への感謝などなどの言葉は早々に、数分程度の語りでクリスさんは話を切り上げ、ウルトさんを先に呼び出した。
教会のシスター2人により開けられる、大きな戸。
それととともにタキシードをビシッと決めた『ラストマン』の姿のウルトさんがバージンロードを歩いて行く。
介添人は親友であるバッカスさん。
ここにも俺の演出の一つが施してある。
まず音楽は…本来ならば楽隊をよんでやるらしいんだけど、これを俺は無しにしBGMを流している。
楽隊の演奏を生で見るというのは人の目を奪うことの一つだと考え、そこをとりあえず取り除いた。
……まあどうやらBGMがどこから流れているか気になってる人が多いのが難点かもしれないけれど、全員がきちんとウルトさんの方に目がいっているんだ。
そして照明も暗くし、ウルトさんとバッカスさんのみが目立つように光を当てている。
かと言ってスポットライトのようにあからさまではなく、自然光がなぜかそこに集中しているといった不思議な感じに仕立てている。上手い具合にね。
二人はクリスさんの前で立ち止まった。
「続いては、新婦の入場です」
その言葉とともに今度はスタンバイしていたパラスナさんの方に自然光のようなスポットライトが当てられる。
父親役は……なんとギルマーズさん。
まあ知ってたけどやっぱり驚きを隠せない。
パラスナさんはギルマーズさんと腕を組み、バージンロードを歩いて行く。ギルマーズさんの性格上女の子とこんなに近くにいたらニヤニヤしたりしてそうなものなんだけど今回ばっかりは真剣な……なおかつ柔らかな表情だ。
パラスナさんの頭にはまだうさ耳は付いていない。
それはまだなんだ。
あと少し、あと少しでパラスナさんもウルトさんも正体をみんなに披露する。
役者がクリスさんの前に揃った。
ウルトさんがギルマーズさんに礼を、ギルマーズさんがウルトさんに礼を。
こうして父(代役)と新郎間による新婦の受け渡しは完了したんだ。
「聖歌斉唱」
クリスさんがそう言うと、みんな示し合わせたように起立。この世界の人は全員聖歌を知っているから歌詞カードとかは一切渡されてないんだ。
式場に来る前に俺から弟達には渡したけどね。
正直言うと俺も聖歌は全く歌ってない…そもそもこの世界の宗教関係に一切触れてない(基本的には俺らの世界に現存するものに近いみたいなんだけど)から、よくわからない。まあ歌うけど。
「祈祷_____」
全員が歌い終わり、何も言われず、何も合図もされずに示し合わせたように一斉に座る。
練習も何もしてないのに行動が揃うってのは、全世界で宗教が統一されてるからか。
一瞬出遅れて恥ずかし思いしちゃった。
クリスさんは聖書を開き、宣言通りに祈祷を始めているんだ。聖書の一部を読むのが決まりらしい。
……元いた世界でもお葬式や結婚式などの御言葉的なものは耳から耳へ通してしまっていた俺は今回もそうしてしまった。
さて、さてさてさてさて、ついに次はついに新郎新婦の誓いの言葉だ。2人はここで正体をバラすらしい。
普通に結婚式としてもメインイベントだし、この2人にとっては今後を左右する最も大事なこと!
ウルトさんとパラスナさんは互いに覚悟を決め…また、お互いにこれからの生活にときめいているようなそんな表情をしているんだ。
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