第526話 他国からの訪問者

「お昼ご飯美味しかった?」

「うん、たくさん愛が詰まってて美味しかった」

「えっへへへぇ」



 ミカが本当に嬉しそうに笑った。

 さっきのウルトさんとパラスナさんもこれとおんなじような表情してたよ。…幸せなんだろうねぇ…かくいう俺も幸せそうな顔してそう。


 ところで、最近はお料理にはなるべく魔物の素材を使うようにしている。やはりずっとマジックバックの中に入れて使わないのはもったいないと思ってね。

 それ以外の素材もつかって、なにか神具級の装置かなんかを作れないかなとも考えてる。それはウルトさん達の結婚式が終わった後だね。



「有夢ーっ、これからどうするの?」

「ん? 今日はもう大きなことないから、食材の仕込みをするくらいであとは何もないよ」

「そっかぁ」



 ご飯を食べ終わり、食器を片付けたミカは俺の隣に寄って来る。



「さて、ご飯が終わったんだから、次は『私』ね」

「えっ?」

「そのあとお風呂! さ、さ、有夢…言いたいことはわかるでしょ?」



 わかる。

 わかるけど、あれはネタの一環じゃなかったんだね。

 まあこういう日もあるか…な。

 俺も別に嫌なわけじゃないからミカをお姫様抱っこで寝室までベッドに連れて行き、そこに丁寧に下ろした。

 すぐに俺もベッドにダイブする。

 間近になるとほんのりとミカの顔が赤くなるのが見えた。これからすることを考えると、俺もたぶん赤くなってるんだろうね。

 最近、こういうのの回数が多い気がする。全然…全くもって構わないし、むしろ喜ばしいけど。



「じゃ、始めようか。真昼間だけど」

「んっ」



 俺はミカをベッドに倒れこませるように押し倒し、上の服を脱がせる。いつも通り変わりない、顔と比例するような美しいミカの身体を一息つく間だけ見つめてから、胸に手をかけようとした瞬間__________



【アリム、ミカ、今は大丈夫か?】



 思わず、俺とミカは暗がりの中で目が点になる。

 最悪のタイミングで国王様からなんか来た……。

 うわあああああああああ…! これからなのにっ…これからだったのに! 

 とりあえず俺とミカはこの緊急事態にアイコンタクトを取った。

 どっちを優先させるかを目線の語り合い、それだけで決めた結果……とりあえず国王様からの話を聞こうってことになった。

 国のお偉いさんだし、無下にすると損するし仕方ない…グスン。



【だ、大丈夫ですよ】

【わ、わわ、私もです!】



 すこしふてくされながらそう答える俺と、慌てて上着などを着なおすミカ。全然大丈夫じゃないんだ、全然大丈夫じゃないんだよぉ。



【そうか、よかった。少し連絡しておきたいことがあってな。……ウルトとパラスナが結婚することは知ってるな? あの2人曰く、色々な準備はアリムがしているそうだが】

【ええ、その通りですよ】



 国王様はどんどんと話を進めて行く。

 ウルトさん達の結婚式…もはやそれに関しでは思いっきり関係者だからね。



【なら話が早い。それを口実にいくつか他国から国王や貴族が来るんだが……アリムの勇者宣言の時に参加できなかった国の国王が、実は今日到着したのだ。どうしてもアリムとミカに会いたいという。……明日、午前11時ごろに来てくれないだろうか】



 なるほどそういうことか。

 まあ、明日なら普通の作業以外に何の予定もないし、その他国の王って人にも会っていいかも。

 ミカの目を見る。ミカも頷いた。



【わかりました! では明日お伺いいたします!】

【おお、頼んだぞ! ではまた明日! 午前11時ごろにきてくれよ!】

【はいっ!】



 国王様からの念話が切れる。

 とりあえず、他の国からお偉いさんがくるからそういう気持ちの整理はしとかないとね。

 それはそうと、今は。



「どうする?」

「仕切り直し」



 ミカが恥ずかしそうにそう言った。

 ミカも俺と同じ考えのようだ。



「そうしよっか」



 俺はまた、ミカをそのまま押し倒し…



______

____

__




 翌日、俺とミカはおしゃれな服を着ながら、髪の毛とかをすこしだけ手入れする。



「どんな人だろうね、訪ねて来る国とその国の王って」

「私、多分いい人じゃないかなって思う。勘だけど」



 ミカの勘ならほぼ当たる。

 だから多分いい人なんだろう。

 俺とミカは手を繋いで、メフィラド城へと赴いた。

 顔パスで場内に入り、たくさんのメイドさんや執事に歓迎される。そして。



「いらっしゃい、アリムちゃん! ミカちゃん!」



 実に嬉しそうにカルアちゃんが駆けてくるの。

 そういえば先週は泊まりに行かなかったからね、ここまで嬉しそうにされるのも想定内。



「いやぁ、忙しくて泊まれなくてごめんね?」

「いいんですよ!」

「ところでそのお客さんっていうのは?」

「いまは玉座の間にお見えになってますよ」



 となると、国王様と何か話してると見たほうが良いか。 

 うーんどんな人なんだろな、気になるなー。

 そうんな矢先、その玉座の間が思いっきり開かれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る