第525話 計画の報告

 帰ってきた次の日、俺はまた宿屋『光』に赴いた。

 今回はウェディングケーキのデザインの報告を本当ならする予定だったんだけど、それだけでなく、教会の飾り付けやお出しする料理のメニューとかも提出するの。



「いらっしゃいアリムちゃん。今日もありがとう」

「いえいえ、ではお邪魔します」



 宿屋のドアの前に立つだけでウルトさんが中に迎えてくれた。いつもの部屋に通され、そこにはもちろんすでにパラスナさんも居る。

 とりあえずは座らせてもらった。



「今日はウェディングケーキのデザインの提案でしたよね」

「そうだよ」

「実は式場の飾り付けや料理のメニューなども考案し終えたので一緒に提案させてもらっても大丈夫ですか?」

「うん、もちろん!」



 ならばまずはケーキから。

 俺はダークマタークリエイトで、地球にいる間ずっと考えてたケーキのデザインの模型を作る。



「如何でしょうか?」



 一見クール大人っぽいんだけれども、そうなんだけれども、可愛さがある3段のウェディングケーキ。

 てっぺんには兎耳のような長いホワイトチョコレートと、小屋のマジパンが飾られてる。

 うさ耳はパラスナさんで、小屋がウルトさんのつもり。

 これが一つのケーキの上で一緒になってるんだ。



「これが私で…これがウルトね?」

「そうですよ。兎と小屋が一緒にある……お二人のことですね」



 そう言うと、パラスナさんもウルトさんは互いに見つめ合い、にこりと微笑んだ。



「文句の付け所がないよ」

「では…このケーキでいいんですね?」

「うん、お願いね」



 よしよし、良かった。

 ダメだった場合も考えていくつか考案したんだけど、やっぱり今のが一番よく案を練ってるからね。

 喜んでもらえて嬉しいなっ。



「じゃ、ケーキはこれで。次は式場の飾り付けですね」

「あー、それは見せてもらわなくていいかな。楽しみにとっておこう」

「アリムちゃんのは全部素晴らしかったから、どっちみち内装も私達の期待以上のものだと思うから」

「そうですか、楽しみを作るのも大事ですよね」



 なるほど確かに来賓した人達だけじゃなくて2人がドキドキするようなシュチュエーションにすることも大事だもんね。うんうん。

 じゃあお料理の方はどうだろう。



「内装はボクの方で決定するとして…どうですか? お料理はどうします?」

「そうだなぁ…料理もこれといって注文はないけどね」

「ここの国の国王様らはもちろん…どうやらほかの国からも何かの用事ついでで王族の方々がやってくるらしいから、しっかりとしたものを作ってほしいかな。それぐらいよね」



 げっ、結局ほかの国からも王族来るのか!

 用事ついでにねぇ……またなにか変なこと起こらなきゃいいんだけど。やだからね、他国と戦争するとか言っておいて実は魔神と戦わなきゃいけませんでしたーーなんて、俺は嫌だからねっ!

 ま、それならそれで料理作るだけだよ。

 ……マジックバックの中の在庫を減らせるいい機会だ。



「わかりました…では以上ですかね。打ち合わせは。あとは当日を楽しみにしてください」

「うん…本当にありがとうね」

「アリムちゃんには感謝してるわ」


 

 2人は立ち上がって握手を求めてきたから、俺はそれに応じる。うん、人生で一度きりの大きな幸福事なんだから本番も本気でやらないとねっ!

 まああとはダークマターでひょいひょいっと準備したり、料理の仕込みをするくらいで良いんだけど。



「じゃあボクはこれで。お二人とも、どうかお幸せに」

「うん! …アリムちゃんもミカちゃんと仲良くね」

「れ、恋愛に性別は関係ないわ! 私達だって色々壁を乗り越えてきたんだから、解決方法はあるわよ!」



 おっと、どうやら俺とミカの関係に気を使われてしまったようだ。心配しなくても俺の本当の性別は男だからね。結婚も子作りも問題なくできるんだけど。

 でも正直に2人の気持ちを受け取っておこう。



「はいっ…ありがとうございます。そのうち男になれる装置でも作りますよ」

「ははは、アリムちゃんが男になるのか。想像できないな」



 うーん、胸がなくてところどころ男っぽくなっただけで今の姿とほぼ変わらないんですよねぇ。まあそれが悩みであり、俺自身の自慢でもあり。

 この2人みたいにいつかみんなに俺が男になれると暴露する日が来るのかな。

 来るんだろうなぁ…いつだろ。

 やっぱりそれも最短で3年後だよね。

 3年後はどうなってるんだろうなぁ…イチャイチャしてることしか思いつかないな。

 そんなことらは置いといて、とりあえず帰らなきゃ。



「では」



 俺は宿屋『光』を後にした。

 そしてすぐに家に戻り、ミカとイチャつくことに。



「ミカ、大きめの仕事は大抵済ませてきたよ」

「お疲れ様っ」



 帰った報告をするなり、ミカが俺のほっぺにキスをする。



「ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」

「まだお昼だよ。お昼ご飯にしようね」



 ……パラスナさんもウルトさんに向かってこんなこと言ってるのかな。どうなんだろ。

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る