第511話 遊園地デート-3

「えへへ、楽しかったね!」

「うん! 楽しかったね!」



 ジェットコースター楽しかった。

 俺とミカは『キャーキャー』叫ばずに、ニコニコしながらジェットコースターを楽しむタイプの人だからね。

 騒いだりはしなかったけれど。



「帰り近くになったらまた乗ろうね」

「そうしよっか! じゃあ次は予定通り少し早めの昼食をとろう」

「ん!」



 俺と美花はこの遊園地のフードコートへ向かう。

 特になんの変哲もない遊園地のフードコートだよ。

 ラーメンとかお蕎麦とかうどんとか、たこ焼きとか唐揚げ…焼き鳥、あとポテトなんかが売ってるの。



「何にする?」



 フードコートに着き、お店のカウンターの上に飾られてるメニューから食べたいものを選ぶ。



「私は…ホットドックとポテトかなぁ…」

「ん、じゃあ俺も」

「同じにするんだ! ならあれ頼もうよ」



 美花が指差す方向には『カップル限定ポテト』と書かれた山盛りのポテトの絵が。

 何がカップル仕様かと問われれば、2人前のポテトをハート型の一皿に盛り付けただけのやつなんだけど。

 値段は1人前ポテト2人分と同じ。

 

 

「…じゃ、あれにしよっか」

「えへへ! それじゃあ飲み物は私、メロンソーダにしよっかな」

「メロンソーダか、じゃあそれも美花のと同じ…に…」



 思わず言葉が弱くなってしまう。

 俺の目に入ったのは『お飲物カップルサイズ。二又ストロー付きにできます』の表記。

 


「あれ…する?」

「ん? あっ、カップルサイズね…しよっか」

「そうしよっか」



 ここのフードコートは券売機式。

 俺と美花は券売機でホットドック2つと、カップル用ポテトと、カップルサイズドリンク(メロンソーダ)を買い、カウンターに提出した。

 番号札を渡されたから、それを持ってテラス席の2人用に座ったんだ。

 10分経ったくらいに番号札の番号で呼び出され、それを俺が取りに行き、やっと昼食にありつけた。



「「いただきます」」



 俺と美花は考えてることが一緒なのか、まずはホットドックを食べる。ちょっと急いで食べてしまうんだ。

 そして持ってきておいた水を飲みつつ(メロンソーダはあるけど、喉を潤すためのものじゃないから)、早めにホットドックだけ完食するの。

 そしてここからがいわゆる本番ってやつで。



「ポテトだね」

「ね」



 美花はポテトを一つつまむ。

 そのポテトを自分の口へ運んだりせずに、俺の口元へと伸ばす。



「はい、あん」

「あーん」



 美花は開けておいた俺の口の中にポテトを放り込んだ。

 んっ…自分で作った方がうまい…じゃなくて、なんだか味じゃなくて感覚が甘しょっぱい。

 照れてるのかな、俺。



「有夢、私にも!」

「そうだね」



 俺はポテトを一つつまみ、美花の口元へもってゆく。

 美花は俺が口の中に放りこもうとする前に、ポテトを口で奪ってしまった。

 唇が指に触れる。

 まあそのくらい、今はどうってことないけれど、付き合ってない頃だったらドキドキで1日寝れなかったかもね。

 ……付き会ってない頃に食べさせあいっこなんてするわけないか。



「んで…これ」

「の、なんでみよっか」



 次にとりかかるのはメロンソーダ。

 2人で裸で一緒にお風呂はいったときも、メロンソーダで1つのグラスに1つの二又ストローで一緒に飲んだね。

 あれはうちの屋上風のところで2人っきりで飲んだからすんなりいけたけど、今回は……大勢の人の目がある。

 特に、俺と美花は他人から注目される体質だ。

 恥ずかしいけど……でも、羞恥心よりラブラブさの方が上だから。



「じ、じゃあ飲もう」

「んっ」



 真ん中がハートの形に曲げてあるこのストロー。

 俺と美花は同時に加え、そして、同時にメロンソーダを吸い上げた。

 見るのはコップじゃなくて、美花の顔。

 ……やっぱり照れてるのか、ほんのりと赤くなっている。可愛い。



「ぷはっ。えへへ」

「えへへ…甘いねっ」



 完全に周囲からみたらバカップルなんだろう俺達は。

 ま、そんなのちょっとしか気にしないけどね。



「ポテト…あーん」

「あーん」



 美花はまたポテトをつまみ、俺の口へ近づけてきた。

 俺はさっきの美花の真似をして、そのポテトに食いつく。…俺の唇に美花の指が触れた__________


 とまぁ、こんな感じで続けて食事でもイチャイチャした。

 途中でめんどくさくなって普通にポテト食べたのは気にしないことにする。

 メロンソーダは2人でしっかり同時に飲んだし、いいよね。



「お腹いっぱい! 次は何乗る?」



 お腹をさすりながら美花はそう言った。

 


「んー…あまりお腹に来ないものがいいね。ゴーカートにでもしようか」

「もちろん、有夢が運転してくれるのよね?」

「うん」



 言っても、それほどゴーカートの運転は得意じゃないんだけどね。…将来、美花とドライブするなんてこともあるんだろうけれど。

 俺と美花はこうして、次のアトラクションへと向かったんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る