第457話 2週間の成果
「ねえ…アリムちゃん」
なんだかルインさんが遠い目をしてる気がする。
「なんですか?」
僕達、今ならどのくらいまでいけるのかな?」
つまりその問いは、今の自分達はどのくらい強いのかと言うことだろうか。…そうだね。
「大悪魔って、戦争の時居たじゃないですか」
「ああ、居たね」
「大悪魔達はSSランク亜種くらいの強さだったみたいですが…。今のルインさん達ならミュリさんの補助魔法付きで、技を使いながらだったら一撃で倒すことができると思いますよ」
「そっか」
ルインさんは何かを考えるように目を瞑り、もう一度開いてから、今、目の前にそび立っている、大きな大きな扉を見た。
「ダンジョンの真のボスのランクってどのくらいなんだっけ?」
「SSランクの亜種ですね」
「そっか」
初めての転生から10日。
ルインさん達の転生回数は32回となっていた。
もはや、勝てないものなど俺達ぐらいになっちゃったね。
最初は俺も転生回数は2~3回で終わらせるつもりで、ここまで鍛えようとは考えてなかったんだけど。
「カルア、お願い」
「はいっ!」
カルアちゃんはさっき手に入れたばかり、とれたて新鮮のこのダンジョンの鍵箱を取り出した。
それをこの扉の前に掲げる。
扉はなんて形容したら良いかわからない色に光り、そして、膨大な魔力を匂わせる雰囲気で禍々しく開いて行く。
「よし、じゃあみんな! これで最後だ!」
「はいっ!」
「長かったような短かったような、という感じだな」
「帰ったらお父さん達、なんて言うかな?」
「でもやっぱりまだアリムちゃんよりはステータス、低いんだよね」
「まあまあ、それはアリムちゃんですし、お兄様」
各々でここまでの苦労を噛み締めながら、その扉の中に突入していった。
中は暗い。
というか、歩いた場所が光る仕組みになってるみたいだ。とても変わってる。
特に何も見当たらないまま俺たちはその場所をしばらく歩いた。
まあ、2分くらい歩いて……俺達は止まる。
というか、先頭を歩いていたオルゴさんが立ち止まったんだ。
「どうしたんだオルゴ」
「いや…ここのボスってアレだよな」
オルゴさんがジッと暗闇を見てる。
俺たち全員がオルゴさんの見てる方向に合わせて目を向けた。確かに……暗闇に目が慣れてきた今ならわかる。そんな程度のぼんやりとした大きな影があった。
<侵入者……
侵入者……排除シマス>
そう、機械的な声が聞こえてきたと思ったらその場が明るくなった。
照らされる…足場や壁だけでなく、目の前にいる魔物も。
その正体は……全身機械でできたドラゴンだった。
肩にマシンガンっぽいのとかついてる。
<ワタシは、『機械神竜≪マギアナドラゴン≫』
侵入者を排除すべく、ダンジョンに作られた存在。
侵入者の実力を測定します……ピピ。
8人のうち……6人がワタシより格上。
残り2人には一矢報いることもできない。
ワタシの勝率、0%。
ワタシが勝つことは不可能デス。>
分析がかなり悲観的なんですけど。
まあ…自覚してるのは良いことなんじゃないですかね。
「なんか言ってるが……もう攻撃しても良いのか?」
「さぁ…?」
オルゴさんとルインさんはカッコいい見た目のマギアナドラゴンのその話についていけないのか、首を傾げている。
<シカシ…ハハの命により、侵入者を排除シマス。多分、ムリだけど>
そう言ってから、マギアナドラゴンは一つ、大きな咆哮をした。ビリビリと空気が震える。
「よし…来るんだな」
「…まずは僕が行くっ!」
「おう!」
ルインさんが前に出た。
と、同時にルインさんの魔力が格段に上がって行くのが感じられる。
おそらく、ダンジョン限定Sランクスキルである、絆の力を使ったのだろう。
レベル1の段階では、周りに親しい人がいる人数分ステータスが元の半分加算されて行くというものだったんだけど、MAXになると、それは等倍となる。
つまり、今のルインさんのステータスは、最低でも7倍(ミカとルインさんはそこまで親しいわけでもないから)になってることだろう。
<侵入者……一人の力が急上昇>
「そうだよ。これはみんなの力さ! そして…『聖光の神覇気』!」
ルインさんはさらに、SSランクスキルの光系の気を纏った。ちなみにルインさん、カルアちゃんが大量にSSランクの魔核を出してくれたことにより、『氷の女神』とか『炎神』とかみたいな光系のスキルの効果を跳ね上がる力を持つSK2を所持してる。
「いくよ……! 勇神剣光演舞!」
そんな勇ましい名前の光属性の剣術は、マギアナドラゴンに喋らせる暇など全く与えずに、その身体を八つ裂きにしてしまった。
斬られた身体と3つのSSランクの魔核が降って来る。
「あれ…終わっちゃった?」
誰かがそう呟いた。
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