第412話 有夢の誕生日

 えへへ…今日は待ちに待った有夢の誕生日!


 私、すごく準備したの!

 この屋敷には、今は私と有夢だけしかいない。

 私達以外のカップル2組には、今日は有夢と二人っきりにして欲しいって頼んである。

 『有夢と二人っきりでお家デートしたい』って言ったら四人とも2つ返事でOKしてくれた。


 うーん、本当だったら6人で誕生日パーティした方がいいんだろうけど…有夢に打ち明けたいこととかしたいこととか、沢山あるし…。



「ん…おはよう」

「おはよう、有夢! お誕生日おめでとう!」

「うん、ありがと」



 有夢は昨日から、有夢のままでいる。

 私は裸エプロン…ではないけれど、エプロンをつけて朝ご飯を用意し終わったとこ。

 ……それはそうと最近、有夢の私に対する接し方がおかしい。

 ……3日前に叶君と寝たとき、有夢は私が発狂してたことでも話したのかしら?

 でも気にするほど変わってないから…気のせいかもしれないけれど。



「わー! 美味しそう!」

「えへへー」



 用意した朝ご飯はフワッフワなオムレツとカリッカリのベーコン。

 別に有夢の大好物ってわけじゃないけれど、有夢が初めて私の料理を食べてくれたのは、オムレツだったから。



「おいしい…!」



 本当に美味しそうな顔で食べてくれる。



「そう、良かった! あ、そうだ有夢。あの…今日、私と有夢の二人っきりでお誕生日をお祝いしたかったから、桜と叶君と翔とリルちゃんには空けてもらってるんだけど…余計なことしちゃったりした?」

「ううん。みんながOKしてくれたんでしょ? えへ…てことは相当いいことをしてくれるんだね? 期待してるよ」

「むう…ハードル上げないでよぉ」



 えっと…うん、正直、ダークマタークリエイトに頼りまくっちゃってる節があるんだけど…。

 喜んでくれるといいな?


 一緒に食べさせあったりして、ゆっくり朝食を食べおわった私と有夢は、ソファに隣り合って座る。



「ミカ、今日はミカが一段と可愛く見える。いつも可愛いけど」

「んっ!? 今日は私を喜ばせる日じゃないよ?」

「そうそう、そうだね。なら俺が喜ぶことしないと」



 有夢は私の頭を唐突に優しく掴むと、ゆっくりと顔を近づけてきた。

 そして、私は舌ごと口を奪われた。

 


「ぷふ。ふふ、ありがと」

「あ…ああ、有夢!? ちがうよ、私が喜ぶことじゃないよ!」

「んー、俺にとって嬉しいことをしただけだよ?」

「わわわ…わぁ!」



 頬が火照っちゃう。

 ちがう、ちがうーっ!

 私が有夢を楽しませなきゃいけないの!

 私が楽しんでどうするの!?

 だいたい________



「有夢、今日はすごく…その積極的じゃない? たしかにいつも一日に何回もキスしてるけど…いつもとちがうというか…!」

「うん、これ。俺の理性と照れを抑えて、男としてのあれこれをあげる効果のあるミサンガを装備してるからだよ。俺の誕生日だし、ミカは祝ってくれるし、少しくらい羽目を外していいかなって」



 クスリと有夢は悪戯っぽく笑った。

 どうしよ、いつもの有夢より男っぽい。



「それで? 次は何してくれるの?」



 ギュッと私のことを抱いてくれる有夢。



「あ…う、うん! ちゃんと準備してるの! ……その、部屋を移動するからついてきてね」

「うん」



 有夢が離れちゃう。まあそうしないと移動できないんだけど。

 私は今日、有夢のために空き部屋とかを改造したりして、2つ3つ楽しめるようにしてるの。

 じゃあ、まず一つ目。

 これは映画なんだけど。



「え…シアタールームよ! 映画みよっ! 用意できたのダークマターで」

「うん、そうしよっか!」



 私と有夢は映画を観る。

 題名は『貴様の面』。なぜだか有夢が気に入ってた映画なの。

 恋愛系とは程遠い、ファンタジックな冒険物。

 有夢は自宅で映画を観るとき、だいたいこれを見てた。

 でも。



「えっと…」

「ん? 見辛い?」

「ううん、このままでいいの!」



 有夢はこのシアターの席をちょっと改造して、私を抱きしめながら映画を観てる。

 えへへ…あったかい。

 でもこの映画、2時間ちょっとあって。


 

「あゆむぅ…」

「あー、ずっとこうしてたからあつくなっちゃった? はい、飲み物」

「あ、ありがと」



 1時間くらいしたら汗が出てきちゃったの。

 でもさらにそのあと2時間。



「ふう、この抱きしめるシーンがあるから、ミカをずっとこうしてたんだよ」

「そうなんだ…。うん、そうだったよね!」



 冷房を涼しくしたら解決したけれど、最後まで有夢は私のことを抱きしめてた。

 折角だから、胸とかたくさん押し付けてやったわ。



「さてさて、映画も見終わったし。次はどこかな?」

「ん…次のは実は有夢の部屋に用意してあるの! きっと、すごくすごーく嬉しくおもってくれるはず!」

「ほんと!」



 うん。ほんと。

 きっと、私よりそっちに夢中になっちゃうくらい。

 えへへ…有夢にはずっと我慢させちゃってたから、ゲーム。

 私から良いよって言えば、有夢は心置きなく、私のことは気にせずに遊んでくれるはず。

 ………ちょっと寂しいけど、有夢は喜んでくれると思うの。

 

 

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