第413話 アリムの誕生日
「次のは有夢の部屋に用意してあるの!」
ミカはそう言ってくれた。
そのあと、すぐに少し悲しそうな顔をする。
その理由がわからないけれど……あれか、もしかしてゲームを用意したとかかな?
……3日前の夜、俺は、ミカが俺がいない間、どうしていたかをカナタから教えてもらった。
大まかにだから、実はもっとすごかったんじゃないかって、カナタは推測して言ってたんだけど。
うん、たしかに思い当たる節はあるんだ。
『私は有夢のもの』だとか、『有夢は私のもの』だとか時々口に出してるし。
もしかしなくても、ヤンデレってやつなのかもしれない。
ただ、それでいい。
俺もおんなじ気持ちだから。
こっちの世界に来てからのミカが居なかった間、俺はミカのようには苦しく思ってなかった。
だって俺が死んだんだし…。ミカが死んだわけじゃないしね。
でも、もし俺とミカのくる順番が違ったら。
俺は絶対にミカと同じようになっていたと、断言できる。
それに、相手はミカだから。
ミカが俺を狂おしいほど愛してくれてるっていうんだから、もう喜ばしいじゃない?
もしかしたら、こんな俺もおかしいのかもしれない。
ただ、俺らはそれで良いんだ。
「有夢? いこっ!」
いつの間にか俺の部屋の前に着いていた。
………そういやミカって俺がいない間に、向こうの俺の部屋に入ってたんだよな?
ベッド下とか調べられてないかな?
ヤバいぞ…見つかったら。
それにしてもあれだ、今日のために作った、この理性と羞恥心を抑えるミサンガなんだけど…すごい効果だ。
この部屋の中に入った瞬間、すぐにでもミカをベッドの上に放って、押し倒したいという衝動に駆られる。
うーん…。本当に少し前までキスもハグも恥ずかしくて…2回も色事しちゃって、それら程度は毎日するようになったけど……それでもそれより上のことは今でも恥ずかしかったのに。
やっぱりミサンガのおかげ。
…あるいは、ミカには何しても大丈夫だって確信しちゃったからかも。
「えっと…喜んでくれると嬉しいな」
カナタと寝たときくらいしか使ってない俺の部屋。
そこには可愛らしい包装紙につつまれた、たくさんのプレゼントが。
「ありがと! 開けて良い?」
「……うん…!」
俺は一つ手にとって、開けた。
ゲーム機だった。
もう一つ手にとって開けた。
スタートクエストというゲームの詰め合わせだった。
さらに開けた。
様々なゲームの攻略本だった。
何もかも、全部、俺が遊びつくしたやつ。
「えへへ…それね、ゲームだよ! …本当だったら有夢、自分で作れるもんね。でも今まで私のために我慢しててくれたんでしょ? ……いいよ、これからは。仕事とか大事な用事がない時は、いつでもゲームして。まあ…それを思いだしながら用意してる間に、向こうに帰れる状態になっちゃったけどね」
「………そうだね。ね、これってもしかして、データとか俺の…?」
「そう、頑張って思いだしたの! 有夢ってば、ゲームのセーブデータすごく大事にしてたから。確認してみて?」
俺はゲーム機本体の一つをつけて、初期設定とかし直して、ドラグナーストーリーというゲームの 1 を入れる。
データはそのままだった。
「ん…えへへ、今から…8時間くらいなら、時間あるけど」
「………その間、ミカはどうするの?」
「昔みたいに、黙って隣で見てるか、部屋で他のことしてるよ」
にこりと笑うミカの目は寂しそうだった。
そんな目をされるとなんか…いつもの俺じゃない俺は…こう________
「えっ…あゆむぅ…っ!?」
いつの間にかミカを壁際に追いやり、逃げ場を無くさせていた。さらに、あごをクイって持ち上げて、無理やり俺の顔を見させる。
「今はゲームより、この世界とミカに夢中かな、なんて」
そのまま俺は本日2回目の深いキスをする。
ミカは一切抵抗することなくそれを受け入れる。
その勢いで手をミカの胸にもっていこうとして、やめた。
「えっ…?」
「ふふ、続きは夜…いいよね?」
「う、うん!」
ミカはものすごく嬉しそうな顔をして頷いた。
ふう、やばかった。理性を完全に消さなくてよかったよ。楽しみは夜まで取っておかないと。
だって、その前に俺から渡したいものもあるし。
「それで、ミカが用意してくれた8時間なんだけど…」
「あ、うん、飽きたりとか…こういうこともあろうかと、私、他のイベントも用意してるの。どうする? 有夢の好きにしていいよ?」
「そうか、じゃあまずは…。せっかく用意してくれたプレゼントを確認してから考えるよ」
俺はプレゼントの中身を全部見た。
ミカったら、よくここまで思いだしたね。全部合ってたよ、データ。
俺はパーティゲームを取り出して。
「浦島太郎電鉄…やらない? 3時間くらい」
「うん…する!」
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