第362話 姉妹再会
「……あ、えっと…その…ありがとうございます、来てくださって…て、て、え?」
さっきまでうなだれていた様子だった桜ちゃんは、顔をあげて笑顔を作り、こちらに向かって来た。
桜ちゃん…!
ああ、久しぶりに見た!
まさかこっちの世界に呼び出されてるなんて誰が想像できたんだろう!
桜ちゃんは驚いた表情でこっちを見てくる。
お、俺が有夢だって事に気がついたかな…?
それとも、姉であるミカを見て?
ちなみにミカは目をウルウルさせて、俺の手を強く握ったままだよ。
「あの…ポスターとかでよく見るあの…!」
なんだよ、そっちかよ…。
ミカもムッとした表情になっちゃった。
髪の色も、年齢も、目の色も、肌も…俺に至っては性別も違うからね、仕方ないね!
……それにしても、桜ちゃん、眼鏡ないじゃない?
もしかしたら俺の予想通り、何らかの方法で目を治したのかも。
それに関しては、本当に良かった…としか、言いようがないっ!
「え、えっと……ほとんど私と同い年のえっと…?」
「大丈夫ですよ。貴女より2歳下の12、13という歳ですが、これでも私達、SSSランカーなので。そんじゃそこらの冒険者数百人より活躍して見せます。」
「え…あ、歳…ああ」
ミカはムスッとした表情のまま、そう言った。
これはわざと与えられてない情報を言って、気づいてもらおうという作戦に違いない!
まあ、名前を言ったらまず、わかっちゃうだろうし。
ていうか、敬語なのがちょっと怖い。
すぐに気付いて貰えるって思ってたのかな?
でも桜ちゃん、どうやら、事前に自分達の情報が行ってるんじゃないかって思ってない?
「その、とにかくありがとうございます!」
「良いんですよ。…………それで…貴女のお名前は?」
ミカは妹想いだったからね。
ちょっと気付いてもらえなくてショック受けてるみたい。もう、名前を使う手段に出たみたいね。
【アリムから先に自己紹介してね】
【あ、うん】
とのことで。
「私はサクラと言います。この国で賢者をやらせてもらってます…。えっと、すいません、まだこちらの知識に乏しくて、有名だっていうのは存じているのですが……」
「うん、大丈夫! なんだか新鮮だよ、俺達の事を知らない人が居たなんて! …俺はアリム・ナリウェイだよ!」
つって、僕っ娘口調から俺口調にチェンジして言ってみる。アリムという単語に聞き覚えがあったのかな?
「アリム…アリム…どこかで…」
なんて言ってる。
まあ、俺がゲームのユーザーネームとしてずっと使ってた名前だから、桜ちゃんも知ってるハズなんだけど。
「それで、こっちはね」
「あり…あ、はい」
俺は、いつの間にか俺の後ろにいたミカを引っ張り出し、実の妹に自己紹介をさせる。
「…私は…わ、私は…!」
さっきまでむんずけていたミカだけど、どうやら感情が昂ぶったみたいで、泣きそう。
それでも、涙をこらえて、自己紹介を続ける。
「私の、名前は、ミカ・マガリギよ……っ!」
そう言い放った。
「そうなんだ。よろしくお願…い…い? あの、名前をもう一度?」
「ミカ・曲木です…どうも」
ミカは2回目の自己紹介をしながら、ズイッと一歩、大きく前に出る。
おお…桜ちゃんとミカの身長が同じだ…!
本来なら7センチ近く違った筈なんだけど。
「え、あの…名前はミカ・マガリギ…えっと、本当に?」
「なんで自分の名前で嘘を言わなきゃダメなのかな?」
「えっ…あ、ごめん…なさ…い? あれ…あの、あの、も、も、もも、ももも、もしかして…あの…お、おお」
元々、何かさっきから戸惑ってる様子があったし、いろいろ積み重なったのか、壊れたラジオのように吃り始める。
「そ…そうね…わ、私もなんか…桜って名前にー…聞き覚えが…うぇ…聞き覚えが…ひうっ…ぐすっ…あるってぇ…いうかぁ…ぁあああ…桜ぁぁぁぁぁ……」
ついにミカが負けて泣き出した。
俺の時もこうだったんだよね……つられて泣いちゃいそう。………実はもう泣いてるってのは内緒だよ。
「お…お姉ちゃん…お姉ちゃんなのっ!? お姉ちゃん、お姉ちゃんなんだよね、お姉ちゃんっ…!!」
やっと…やっと気付いた…。
グスン。
やっと気付いた桜ちゃん…も、桜ちゃんも、目を開いたまま、滝のように、でもゆっくりと涙を流し始める…の。
「うん…! うん! お姉ちゃんだよ、桜っ! 桜っ!」
「うあああああああああああああああああっ!!! お姉ちゃんっ…お姉ちゃん、お姉ちゃんっ…ああああお姉ぢゃんっっ…お姉ちゃん…あああああっ!」
「さくらぁぁぁぁああああああっ!」
二人は飛びつくように抱きついて、滝のように涙を流して泣いて、再開を喜んでるって事でいいのかな?
やっぱり、ミカと桜ちゃんは似てるね。泣き方とか。
ダメだ…俺もハンカチで涙を拭かなきゃ。
前が見えないや。
えへへ…。
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