第287話 測定宝庫 (翔)

「はい、できたよ。御主人! …えへへ、数年ぶりに作ったから味は保証できないけど…」



 リルはチャイルドラゴンの進化系っぽいドラゴンの肉を焼き、野草や果実でソースを作ってくれた。

 木の皿に盛られているそれは、めちゃくちゃ美味そうだ。



「じゃあ…食ってみるか。いただきます」



 一口、口に入れる。

 ………この世の物とは思えない味だ。うまい…美味すぎる。なんなんだコレは。

 どっかの超高級料理店…それも星とか3つくらいもらうタイプのやつのステーキなんじゃないか!?

 そんなの食ったことないけど、まさにそんな感じだ。


 リルの料理の腕と…真料理MAX、恐るべし。

 もしかしたら俺も、こんなレベルになってるんだろうか。



「どうかな、御主人」

「うまいぞ…! 肉の焼き加減は抜群だ。舌に乗せた瞬間にとろけれような…かと言って食べ応えは充分にある。このソースは肉の旨味を甘みと少しの酸味と苦味でよりよく引き出している…!」

「そ…そそ、そうかい! そんなに褒めてもらって嬉しいよ!! えへへへ」



 リルは照れながらかなり喜んでいる。

 尻尾が千切れんばかりにスカートの中で暴れてるからな。前々から思ってたんだが、あれって後ろから覗くと……いや、何でもない。

 多分見えないから大丈夫だ。



「どれ…私も…」



 自分で焼いたステーキを口に頬張る。

 その瞬間、リルの大きくて丸っこい目がカッとさらに見開かれた。



「ここれここれこれれここれ、これが私の料理?」



 驚きすぎで噛みまくってる。

 まあ確かに、いきなり自分の料理の腕前がこんなになってたら驚くしかねーよな。



「落ち着け……。ああ、そうだぞ」

「う…嘘だぁ……って、スキルか。このスキルはすごいね」

「美味しかったぞ、リル。ごちそうさま」

「もう食べたのかい? お粗末様、御主人!」

「また作ってくれるか?」

「うんっ! うんっ、勿論だよ! 御主人のためならいくらでも作るよ!」



 リルは実に嬉しそうだ。

 そんなに料理を作るのが好きだったのか。知らなかったぜ…。かと言って俺も最近、料理ははまってきたからな、夕食は俺が作らさてもらおーっと。

 

 それはひとまず置いといて、腹ごしらえも済んだし、そろそろ試すか、新しい力を。



「リル、悪いがこの部屋の隅の方に居てくれないか? 真ん中の広場で俺は新しく得た魔法の試し打ちとかがしたい。かなり危ないからな、俺の魔法」

「わふ、そうだね。おとなしく離れてるよ」

「すまないな」



 リルが金の馬がいた部屋の隅っこの方に行ったのを確認し、真ん中の広場に出た。

 俺は割と強力な魔法を、ダンジョンの床や壁に当てたりしちゃってたがここはどうやら不思議な力で守られているのか、壊せないっぽい。

 心置きなく試し打ちができるな。


 よし…まずはSランクスキルだろ。


 俺は、炎神の紅蓮魔剣を召喚した。

 叶君とかが喜びそうな名前だ。


 その、見た目も凄かった。火炎とは比べ物にならない。

 あれがビームソードだったが…これは見た目だけだったら、真っ赤なちゃんとした剣だ。

 装飾とかも豪華な、一目で高級品だとわかる、柄から刃先まで全てが同色…真っ赤な立派な剣。


 おおお、なんか、なんだか、興奮するというか…かっこいい! 俺はそれを振り回してみる。

 うん、良い! すごいぞこれは、明らかに剣のグレードが前と違うのがわかるぞ。



「剣の豪…一の段」


 

 剣の豪というスキルで新しく得た技をやってみる。

 すげえ、こりゃ、きっと斬る対象があったなら、横一文字にすごいな傷が………。

 そうだ、床にやってみるか。壁まで動くの面倒臭いし。


 俺はもう一度、手応えを見るために全力で床に向かって同じことをした。


 やはり何かに守られているダンジョン、全く傷つか_____あれ? めっちゃ大きく切り傷が…アレ? 

 なんか…俺の足元から床の鷹の絵が横一文字に斬られてなくなってるんだけど……?

 俺の足場だったところも含めて。


 斬れ味と破壊力すごすぎ……なんて言ってる場合じゃない。なぜか空いた崖みたいな穴に俺は落ちそうになった。

 まあ、念術で俺自身を持ち上げて落ちずに済んだが。


 一件落着。

 だが、床に大きな穴が開いちまったな。

 どんくらいの深さなんだ…と考えて下を覗いてみると、そこには何故か階段が。


 階段…!? 階段…床下…絵の下……破壊すると現れる……ああ、つまり、隠し部屋か。

 俺は偶然にも隠し部屋を見つけてしまったのか?

 マジで?


 とりあえず、リルを呼ぼう。

 何か知ってるかも知れないし、知らなくても、一緒に探検することができるだろう。



「おーい! リル、大変だ、ちょっと来てくれ!」

「どうしたんだい御主人!? 大丈夫? 何があったんだい?」



 そう言ってリルはすっ飛んできた。

 そう、すっ飛んで。


 

「あれ…床が_____」



 あまりに勢いよく俺の元に来ようとしたせいで、リルは穴の下に落ちそうになった。

 すんでのところで念術で持ち上げたが…。



「わふぅ!? なんだい、これは!?」

「わかんない。だが隠し部屋みたいだ」

「こ…こんなものがあったなんて……。御主人、どうする? 入ってみる?」

「ああ…なにか宝とかあるかもしれねーし」

「お宝っ…! そうだね!」



 俺は俺とリルをその部屋の底までゆっくりと降ろす。

 中は真っ赤なレンガで一面覆われており、そして目の前には一つ、オレンジ色の大きな球体が空中に浮かんでいた。

 てか、この部屋の広さがおかしい。

 きっとマジックルームなんだろうがな。



「わぁ…何これ?」

「さぁ…」



 俺とリルが顔を見合わせたその時、頭の中にメッセージが浮かんできた。



【ユーダリルの谷底の「哀しみ」のダンジョン の、シークレットステージに入りました。ここでは、ミッションが出されます。

 そのミッションをクリアすると、宝箱が現れます。クリアした際の達成度によって、手に入る宝箱の中身が変化します】


【球体に攻撃を1撃当てろ。一撃の威力が一定値以上でクリア。また、威力が高ければ高いほど手に入る宝箱の中身が良くなる。それでは、ミッション開始】

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