第288話 チャレンジミッション (翔)
「…リル、今の聞こえたか?」
「うん。あの球に威力が高い攻撃を当てればいいんだろう?」
「ああ、その通りだ」
「ならここは御主人の出番だね。1発、お見舞いしてあげてよ」
そう言いながらリルは俺から距離を取った。
でも少しまだ危険が残る距離だな。
「もう少し離れられないのか? …ああ、もう後ろは壁か」
「大丈夫、私のことは気にしないで御主人の魔法を撃ってよ。御主人の魔法なら伝説級のアイテムとか手に入るかも…」
気にするっての。
だがしかし…あれだな。ここに全力の1発を当てればいいだけなんだもんな。マーチレスで威力と範囲をうまい具合に調節すればリルには影響は無いだろうし……もたもたしててもしょうがないか。
俺はリルから距離を取るようにその大きなオレンジ色の球体に近づく。
そして習得したばかりの強化術の魔法の一つ、魔力の強化を自分にかける。
この部屋はダンジョンを出入りしても復活しない可能性があるからな…全力を出そう。
ファイヤーマーチレスを放つ。範囲は抑え、威力は出るように。
俺が放った赤い炎は球体まで素早く飛んでいき、被弾。
結果、その球体はぶっ壊れてしまった。
あたりに強い風圧が走る。
そういえばマーチレスを全力で放ったことがなかったな…ここまでになるのか。
その風圧で俺は吹き飛ばされ、リルがいる壁のほうまで飛ばされる。
「いてぇっ」
「だ、大丈夫かい? 御主人! すごい威力だけど…これが御主人の全力…」
リルにはぶつからずに済んだが俺は壁に激突。痛いぜ。
すぐに覚えたばかりの回復魔法をかけて持ち直した。
威力の暴走が治る頃には、頭の中にまた、メッセージが現れていた。
【ミッションをクリアしました。〔達成度・伝説級〕宝箱が出現します】
「わふぅ!? 伝説級だって、御主人! 流石は御主人!」
髪がだいぶ乱れてしまったリルはまたはしゃいでいる。
ダンジョンに入ってから、驚いてばかりだな。前まで割とクールな話し方だったのに。
それほど凄い事ばかりなのかもしれねーけど。
球体があったはずの場所の真下に、それはそれは豪華な宝箱が落ちている。
「リル、アレを開けるぞ。どうする? 一緒に開けるか?」
「えっ!? でもこの功績は御主人のだから…」
「いいからいいから、開けるぞ」
「あ…う、うん!」
俺とリルはその宝箱の元まで行き、二人で同時にソレを開けた。
中に入っていたのは箱。
箱の中に箱である。
掌サイズで小さく、鷹と爆発エフェクトみたいなのが描かれている。
「わふ? なんだいこれは」
「わかんねー…とりあえず、鑑定してみるか」
俺はそれを鑑定してみた。
【「ユーダリルの谷底の[哀しみ]のダンジョンの箱型の鍵」
・状態→ 普通
・出来→ ???
・価値→ ???
・材料→ ???
・種類→ 鍵
・説明
この鍵を、ユーダリルの谷底の「哀しみ」のダンジョンの、主の部屋の門の前でかざすと本当の主と戦える。この鍵箱の中にはアイテムが入れられているが、ダンジョンの中では開けられない。ダンジョンから出るとこの鍵による、本当の主と戦える権利は消えるが中身が手に入る。その場合、再度入手すれば戦える。】
え…なんか凄いの手に入った…。
???となっているのは、俺の鑑定が力不足だからか?
これは…つまり…俺たちは隠し部屋でさらに隠しルートに行けるアイテムを手に入れられたと…そういう事か。
鑑定してみた内容をリルに伝える。
「ほ…ほほ、本当の主?」
「ああ、そうみたいだ」
「そんなのと戦うのかい、御主人!?」
そうか…そうだよな。
ダンジョンの主って相当強いらしいんだよな。
それのさらに上の存在…だもんな。
「いや…まだ今、戦うわけじゃねーよ。ダンジョンの繰り返しはまだやる」
「え? でも折角手に入れたこれは…?」
「再度入手できると書いてあるからな、この部屋は出入りで復活するんだろ。つまり、ここは何回も挑戦できる」
「わふっ!? そ、そうなんだね! じゃあ早速ダンジョンを出よう。荷物は全部、私が預かってるよ」
「わかった、出ようか」
俺とリルはダンジョンから出た。雨は上がっている。
これでまた入れば、経験値や魔核や、この鍵が手に入るわけだ。
「御主人、さっきの箱、開けてみてよ」
「おう」
俺はリルに催促されるまま、出てすぐに先程の鍵箱を開けてみた。
中に入っていたのは、魔核ひとつだけ。
伝説級と言っていた割には……。いや、これがもしかしたら高ランクの魔核なのかもな。
そう考え、鑑定してみた結果……。
「リル……これ……SSランクの魔核だ…」
「へ?」
SSランクの魔核。
Sランクの魔核10個分。Aランクの魔核100個分。Bランクの魔核1000個分。
伝説級ってのは伊達じゃなかった。
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