第272話 森林散策 (翔)
リルに顔を洗わせてから、器に鳥肉のスープをいれて渡した。
「ありがとう、御主人」
「おう、これが朝ごはんだからな。 おかわりしたかったら言ってくれよな」
「うん! いただき…あ、ちょっと待ってよ」
そう言うと、リルは自分の小さめのマジックバックから木でできた匙を二本取り出した。
「昨日暇でね、作ってみたんだよー。使う?」
「ああ、使わせてもらうぜ」
あ、ちょっと微笑んだ。
嬉しかったのか?
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます。御主人」
その鳥ガラスープはよく香味料として使った葉が効いていた。なかなか上手くできたぜ。
もっとSKPを手に入れたら、料理のスキルを上げてもいいかもしんねーな。
作り過ぎちまって、残ったスープはマジックバックの中に放り込んでおいた。よくわかんないけど大丈夫らしい。
俺とリルはお互いに待っている間の5時間、何をしていたかを話し合った。
リルは予想通り、木で色々と作ったり道具の手入れをしていたらしい。
俺が俺の顔が掘られている作りかけの木の細工について触れると、リルは顔を赤くして引きつらせながら、『違うんだ、これは違うんだ』と、意味不明な事を繰り返し言っていたんだぜ。
……何が違うと言うんだろうか?
俺も昨日していたことを話した。
その間に牛を狩ったときに出てきた魔核を見せたんだが、やはりBランクのものだったらしい。
一撃で倒しちまったから実感はわかなかったがな。
俺がそう感想を述べると、リルは目を丸くしていた。
尊敬の眼差しで見られるのは悪く無い。ちょっと照れるけどな。
「じゃあ、出発すっか」
「ん」
今、俺達はゴミ…木片や生ゴミは埋めて処理してから歩き出した。一応、探知を展開させたままな。
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ひたすら歩いた。
俺とリルはとにかく真っ直ぐにひたすら歩き続けた。
探知も展開してるし、コンパスも使用しているため道に迷うことはねーんだが…どこを見ても木、木、木で何も見つからない。
襲ってきたり、進むのに邪魔な魔物を片付けながら進んでいっていた結果、また大量にCランクの魔核が増えた。
そろそろいろんな活用方法も考えてもいいかもしんねーな。じっくりとよ。
「じゃあここらへんだな、今日の休む場所は」
俺とリルはまた、中途半端な場所に荷物を置く。
リルは斧で小さめの広場を作った。
よく見てみると、立ったの一振りで木を切り倒してるようだな…。
なんて怪力だろうか。
それはそうと、今日の夕飯は昨日よりも少し豪華にできるんだぜ。なにせ鑑定と採取によってキノコと食べられる野草・果物を見つけたからな。
これは大きい。
「今日は鳥肉とキノコの炒め物だな」
「私個人としてはステーキの方が……あっ…や! でも昨日もステーキだったし、炒め物にしようよ、ね、御主人」
「どっちなんだ? リル…ステーキがいいならステーキにするぞ? 今日はソースとかも作れそうだしな」
「わふぅ…御主人…」
リルはなんだか凄く申し訳なさそうな顔をしてるぞ。
どうしたんだ? やっぱりステーキは飽きたのか…?
いや、あのステーキという単語を発した時の表情はとても輝いていたからな…それは違うと思うんだが…。
やっぱり女心ってのはよくわからん。
つーか、リルがステーキなんか言うから、俺もステーキが食いたくなっちまったじゃねーか。
これはもう、ステーキにする以外ありえねー。
「やっぱステーキ食いたい。リルによるが…なんにするんだ? 結局は」
「……ステーキで…ステーキが良いです」
「じゃあステーキだな」
俺らは結局鳥のステーキを疲れてるのもあったせいか昨日より多めに食った。
そのあとはお湯で濡らしたタオルで身体を拭く。
これってかなり恥ずかしいんだよな…。
男である俺がかなり恥ずかしいんだから、リルはどうなんだろうか。
本当、よく考えたらこれ、野外で真っ裸なんだもんな。
やっぱり、もうちょっい身体を清潔に保つ方法を考えたほうが良いよな………。
まじで。リルは女の子なんだしな…。
ともかく一通り済ませたあとは、寝る。
寝起きし、周囲を見ながら眠った。
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遭難3日目。
このままだと、俺とリルの体力がそろそろ危ないかもしれない。今はまだなんとか大丈夫だが…。
休むべき時は休んでるが、それでもここらは魔物の巣靴。心が休まる暇が無い。
「なあ、リル」
「なんだい? 御主人」
「疲れたりして無いか? …先々週まで身体がかなり弱ってた訳だしよ…。いくら獣人が人族より頑丈だと言っても、この3日間まともに休んでる時間はねーわけだし…」
「大丈夫だよ、私は。御主人の方こそ疲れていないのかい?」
「ん…? ああ、俺か。まだ大丈夫だな」
リルは大丈夫だと示す為か、回転しながらジャンプした。まあ…なら、大丈夫そうか?
そういえばリルがもし疲れたりしたら俺はどうすれば良いんだろうか。背負っていくのか? それとも、俺がフルで見張りをするか? ……どっちかだな。
そんなことはともかく、俺とリルは魔物を倒しながらひたすらに歩き続けた。
「……わふっ!?」
リルがそう声を上げながら立ち止まった。
「どうしたんだ? リル」
「いや…その…アレ……」
リルが指をさした先にはあからさまに不自然な大きな穴……。
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