閑話 カルアちゃんの訪問 3日目 夜中



※この話は読まなくてもストーリーに影響はありません
















「数日ぶりの二人っきりだね」

「そうだね」



 寝巻きを着ているミカはそう言った。

 カルアちゃんがおそらく気を使ったのかわからないけど、2~3日ぶりの本当の二人っきりだね。

 …まさか、1週間ももたないとは思わなかったけど。



「……有夢」



 俺は有夢に戻り、ミカと一緒に今、ソファに座っている。ミカは俺に寄り添い、肩に頭をもたれさせてきた。



「あのね、有夢…その、ウォータースライダーで…あの…変なこと訊いてごめんね?」

「いや、いいよ」


 

 実にミカは申し訳なさそうにそう言った。

 もともとそんなに気にしてないから良しとしよう。……しかし、また万歳してるとはこれいかに。



「ところで、なんでまた手をあげてるの?」

「………今までずっとこれ、言わないできたけど…。女の子の方から、そういうの言わせないでよ? もう遅いけど」

「あー…」



 こういう時ってどうすればいいんだろう。えーっと、ミカの誕生日の時みたいにベットで責任問題発症行為に……。いや、ちがう。それはちがう。話が行き過ぎだ。

 よくよく考えたら、俺ってば、あの時みたいな事以外は…キスするか抱きつくか、頭を撫でるかしかした事がないな。


 何かそう、最終的にあの日の出来事になっちゃうようなエッチなものじゃなくて、でもこう…恋人らしいのって……。ああそうか、俺は昨日、ミカ達を膝枕した。俺も同じ事をすればいい。なるべくアレは避けよう。



「じゃあ…その、ミカ。足をピシッとしてね一回」

「うん…? わかった」



 俺に言われ通りにミカは足をしゃんと揃えた。

 俺はそこに寝転がる。なんだこれ、思ったよりいいぞ。

 ミカの足、少し細すぎるような気もするけど…。



「なるほど! 昨日、アリムが膝枕を私にしてくれたから、今度は私がする番ってわけね?」

「んー、まあ、そういう感じかな」

「で…どう? 有夢専用の…膝枕は?」



 ミカはモジモジしながらそう言った。たまにミカは有夢専用だとか…私は有夢のモノだとか…おかしなこと口走る時があるけれど、それは俺の事を好いてくれている上でだと考えてる。

 はっきり言うと、可愛いんだこれが。



「むむ…ちょっと細いけどいい感じだぞ」

「細い…? 私、有夢のためなら太るよ?」

「いや、そういうことはしないでね」

「まあ、冗談だよ…少しね」



 さて、この次はどうしようかな。今日はいつもみたいにミカがして欲しいことをリクエストしてくれるわけじゃないんだ。

 はっきり言って、望まれたことをこなすだけなのはめちゃくちゃ楽なんだけどさ。

 これはそうだな…カルアちゃんたちの目の前ではなかなかできえない、あ……あ、愛…愛の言葉を囁くというのはどうだろうか。ふへへ。



「ねぇ、ミカ」

「なぁに? 有夢」



 俺はミカの顔をジーッと見上げつつ見つめる。

 完全にノロケだけど言ってしまおう。可愛い。


 よし、これを、今から正直に言うのだ。



「ミカ…すごく可愛い」

「えっ!? あっ…えへ、えへへ…そ、そうかな?」

「うん。こんなに可愛い娘が幼馴染で、彼女で、婚約した仲で…俺は幸せ者だと思う」



 そう言うと、ミカの顔が真っ赤になった。照れてる。

 それに、口元が緩んできたみたいだ。



「うへへ…ほ、本当?」

「うん」

「えへへ、えへへへへっ」



 おお、やたらと上機嫌になったぞ。

 良かった、嬉しがってくれてるみたいだね。



「それとミカ」

「にゃ、なーに?」

「大好き、愛してる」

「えへへへへ、知ってるぅっ!」



 これもまたすごく嬉しそうだね。誕生日の時の手紙で散々、書いたこともあって知ってると言われてしまったけれど…。

 そう考察してる間に、ミカはまたモジモジしながらたどたどしく何かを喋り始めた。



「有夢、あのね、私ね……この時間ね、有夢が私にして欲しいこと、なんでもしてあげるつもりだったんだけどね?」

「う…うん」

「私が嬉しい思いしちゃってるのっ…。ほ、本当にこれだけでいいの? 私を好きにして良いんだよ? なんなら、今からその…2回目シちゃうとかでも良いんだよ?」



 最近思う、これって『しても良い』じゃなくて、正しくは『して欲しい』なんじゃなかなー、なんて。

 俺が仮定した通りだったら、俺、臆病者でごめんね、ミカ。やっぱり安全路線でいこうと思うんだ。

 まあ、仮定が外れてたらただの自惚れなんだけど。

 とりあえず、今、膝枕して貰ってるんだから……耳掃除が定番なんじゃないかな。……昔、ミカから借りた少女漫画にそんな内容があった。



「じゃあ……このまま耳掃除で」

「えぇ……。む、むむぅ…まあ確かにこの状況ならそれが一番か。いいよ、してあげる。耳かき出して、横向いて」

「ん」


 

 俺はミカでない方向を向き、右耳を見せた。

 そして、伝説級の耳かきをその場で作り出し、ミカに渡す。



「じゃあ耳かきを……。あれ、耳垢なく無い?」

「まあね、そりゃあ。いろんなアイテムの洗浄機能とかで無くなってるだろうね」

「えー、じゃあ他に、他になんかして欲しいことないの?」



 いや…なんか、自分で求めるよりしてもらったほうが楽というか…彼氏としてどうかとは思うけど…。でも、今は考えつかないしなぁ…。

 それに下手なこと言うと、俺が変態みたいで嫌だ。要求したことを拒まれても悲しいだけ…って、ミカは…多分、性格上言ったことは実行するんだよなぁ。臆病なのは俺、こんなに意気地なしかわかんないけど……。


 ここはとりあえず、逆の発想でいこう。



「逆にミカは俺にして欲しいことないの?」

「それじゃあ、いつもと一緒じゃないの!」

「それが良いんだよ」

「そ、そう? むぅ…もしかして、何か要求するのが面倒くさいとか恥ずかしいとか考えてないよね?」



 しまった、よまれてた。さすがは幼馴染だね!

 


「図星って顔してる……」

「あはは…ごめん」

「ぷくー」



 そう、声に出しながらミカは口を膨らませた。

 俺は起き上がり、両手でその膨らませた頬を軽く突っつく。アリムも確かに柔らかい。でも、ミカも十分スベスベなんだよね。

 何回かつくと、両手で両頬を軽く潰した。



「ぷひゅー…。あのね、有夢。私だってその…キスしてって言うときとか、恥ずかしいんだよ? 少しね」

「うん、ごめんね」

「ほら、わかったら行動に移して、ホラホラ!」



 もしかしたら俺、いちいち口に出して宣言しない方が、恥ずかくないかも? なら…そうだな…。とりあえず、いつもみたいに、抱きついてキスするかな。宣言なしで。

 いつもみたいって言うけど……数ヶ月前まで、それすら大変だったのにね。今じゃあ慣れちゃって。


 俺は特に宣言することなく、ミカにキスしつつ抱きついた。そしてしばらくして離れる。



「はふぅ…えへへ。いきなり…ふふ」

「なんか…そう、宣言するから恥ずかしいのかなって、考えたんだよ」

「な…なるほど! …でも宣言してくれないと私の心の準備が…」

「じゃあ今日はもう宣言しないよ。宣言しないってことに心の準備をしといてね」

「ええっ!? ああ…うん、わかった」



 さて、そうは言ったもののどうするか……。

 頭をなでたりしてみるかな。いきなりキス以上の事をしてもミカの気持ちも俺の気持ちも落ち着かないだろう。



「ミカ、一旦、ここに寝て」



 俺は自分の腿を叩く。



「あ、もしかして今度は私を膝枕?」

「そうそう、膝枕だよ」

「わかった、じゃあちょっと失礼して……。うん、アリムよりはかたいね」

「まあね」



 さて、ここから撫でることを始めよう。……変なとこ撫でて気持ち悪いとか言われないだろうか…?

 いや、言われたら今後、同じことをしなきゃ良いだけだ。


 俺はまず、普通に優しくゆっくり良い感じのテンポで頭を撫でてみた。



「よしよし? えへへ」

「そうだね」

「私も、さっきよしよしすれば良かった?」

「それはまた今度ね」

「うん」



 そして今度は激しくしてみる。



「わきゃーっ!? 頭、くしゃくしゃになるよ、有夢っ!」



 そして…次は頭を普通に撫でながら、もう片方の手でおでこを撫でてみよう。なんだかだんだん楽しくなってきたね。



「うわぁ、手が増えましたか」

「おでこ撫でてみたんだけど、どうなの?」

「どうって言われても」



 このおでこを撫でてる手を段々とずらしていくんだ。手のひらで、ミカの目を優しく覆ってみた。



「わっ! 目がー、目がーっ!」



 その次に鼻をつまんでみる。



「ひゃー、はにゃやめてぇー」

「あ、ごめん」

「やめなくていいよ」

「どっちなの…」



 次に…顎と顎下を猫や犬を撫でるみたいにしてみる。



「わっ…これなんか…小動物になった気分」

「そお?」

「そうそう、ニャーオ……なんてね…ニャ」



 ミカはそう良いながら、手を猫みたいにして、かなりあざとくポーズをとった。

 


「可愛い…」

「えへ、そうだった? もっとしよっか? なんなら有夢、猫耳と尻尾を作ってくれたら付けるよ?」

「そうだねぇ…」



 俺はチラリと時計を見た。

 今は午後11時……ミカと二人っきりになってから1時間たった。となると、今からコスプレで遊んでいたら、寝る時間が少なくなっちゃうかもしれない。



「それはまた今度ね」

「むぅー…。わかった、そのかわりその時はアリムも猫耳と尻尾をつけてね?」

「えーっ…まあいいけど」



 うむむ、そろそろ寝るべきかな。多分、ミカも満足したと思う、きっとそうだ。



「じゃあそろそろミカ、膝枕終わり」

「んっ! 次は何をするの?」

「いや、もう寝よう」

「え?」



 ミカはあからさまに残念そうな顔をしている。なんだ、満足していなかったのか。



「もう寝るの?」

「ああ…うん。まあね」

「ふーん…おやすみ」



 俺はベットへと向かっているけれど、いつもみたいにミカが来ない。その上、怖い顔でこちらを睨んでいる。

 あれだ、あの怖い顔は地球にいた頃に、喧嘩した時以来だ。


 どうして俺はミカを怒らせた!? 何が原因なんだ…。

 そういえばミカは、昨日の朝にこういう軽くスキンシップした時もどこか物足りなさげだった。

 それに今日の何か意味ありげな行動と言動の数々……。


 …………答えは一つしかないのかな。


 色々と考えていたところに、ミカはリビングの電気を消し、こちらにやってきた。



「あ、ミカ…」

「有夢、私って魅力ないよね。ごめんね。リロさんみたいに胸とか大きかったら良かったかな? ……おやすみ」



 そう言うとミカは布団に潜り向こうを向いた。


 あー…ダメだ。ここで何かしないとギクシャクしたままだと思う。だいたい、なんで俺は避けてるんだろうか、こういう事を。

 年齢が年齢だから…というのは多分、もう言い訳にしか聞こえないだろうね。一回しちゃってるしね。もうね。

 となると俺がヘタレなんだよね。………腹をくくろう。



「ミカっ…」

「…………なに?」

「あーその…こっち向いてくれる?」

「ヤダ。今は有夢のこと見たくない」



 と言いつつも、目がチロチロとこちらを見てるのはわかっている。

 でも完全にこっちの事を向いてくれる事は言葉だけでは無さそうだ。さて、どうしよう。

 後ろから抱きついてみるかな…。



「ふー…………」



 ダメだ、あまり反応が良くない。まだ機嫌が悪いみたいだ。となるといよいよ、少しエッチな事をしなければならないのかもしれない。


 今の状況でできる事はなんだ? 

 いや、確かに一回ミカとは行為に及んでるんだ、それは確かなんだ。しかしまあ…なんというか、それでも慣れないというか…。


 こういうのって、大人の漫画とかだとどうしてるんだろう。

 そういやあれだ、国王様から見せてもらった国の蔵書の中の一冊に、そう言う事が書かれている本ってないのかな? 1000万冊あるんだ、少なくとも1冊はあるでしょ。 

 例えば、本来のグリム童話とかみたいに、あからさまなのもあるかもしれない。


 俺はゾーンを使い、トズマホからそう言う本を探し出し、何冊か急いで読んだ。

 

 参考にしたくないものから、すでに以前に試したものまでなんでもあった。これ、どういう考えで図書館に置こうと思ったんだろうか。


 とりあえず、俺は一つやってみる事にした。



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「_____えへへへ、あ…んっ…やっと…だねっ…!」

「…あー…その、ごめんね?」

「ううん、いいよっ。これからは気をつけてね!」

「はい、善処します」



 少し行動起こしただけで、そのまま流れるようにスルスルと全て解決してしまった。

 きっと、明日の朝起きたら、俺はどっと疲れてるに違いない。

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