第238話 カルアちゃんの訪問 3日目 後編

 全員の分が用意でき、また、着替え終わったから、今、ウォータースライダーの前に、俺達は居る。



「すごい…大きい…」

「室内に、こんなに大きな滑り台があるんですね…」

「ここを滑るんですね」



 3人は口々に感想を述べている。

 前はミカと二人だけでここで遊んだ。でもやっぱりこういう場所は、人数の多い方が楽しいと思うんだ。



「あそこにある魔方陣を踏めば、一気にあのてっぺんまで行けますからね!」



 と、俺はこのウォータースライダー本体の下の両端にある魔方陣のようなものが書かれている床を指差した。

 そこに皆んなで向かい、ウォータースライダーのてっぺんまで移動した。



「うわぁ…たっかい…」

「こ、ここ、本当に滑って大丈夫なんですか!?」

「ふふ、これは楽しそうですね!」



 リロさんとミュリさんがこの高さに少し怯えてるのに対し、カルアちゃんはすごくノリノリだ。目を輝かせ、早く滑りたがっている。



「まずはお手本見せますよ。見てて下さいね」



 そう言いながら、ミカが一番近くの滑り台に腰をかけた。



「そしてこのまま____わひゃーっ!」



 ミカは流れるように滑っていった。

 そして数秒した後に、下の方で水しぶきが上がり、その水しぶきが起きた場所からミカが出てきて、満面の笑みでこちらに手を振っている。

 順番的に次は俺だな。



「じゃあ次はボクが行くね」



 俺もミカ同様に滑り台に腰掛け、そして滑る。

 ここの滑り台は人が居ない時でも常時、無限に湧き出る温水が流れ続けている。

 かなり早いスピードで滑って行き、下の水溜りに体が放り出させれる。すごい水しぶきが上がった。


 俺も上の人達に手を振る。



「アリム、アリム、ちょっとこっちに」

「ん? なぁに?」



 カルアちゃんの楽しそうな悲鳴が聞こえる中、ミカが俺の手を引き、このウォータースライダー場のあんまり目立たない場所に連れてきた。

 そして、なぜかその場所で万歳をするように腕を上に上げるミカ。



「何してんの?」

「アリムさ……リロさんみたいに胸が大きい方がいいの? ね、ね?」



 質問には答えてくれない……。

 いや、それどころか変な言いがかりをつけてきたぞ。どうしてそう思ったんだ、ミカ。



「いや、そんなことないけど?」

「……………本当? でも、水着を配る時に、私とリロさんを何回か見比べてたじゃない」



 それはあれだ、おおよそのサイズを目分で測る際にちょっと比較しただけだ。

 まさか、そんな風に解釈されてしまうとは…。

 で、やっぱり万歳をしている理由はわからない。


 あ、リロさんの、遊園地で若い女の人が叫ぶアレによく似た感じの声が聞こえる。



「それは水着のサイズの大まかな基準を考察する為だけど……? 大体、今ボクはアリムなんだし、胸のことなんて、男の人みたいには気にしないけど?」

 


 それを聞いたミカは、今の俺が女だったことを思い出したのか、顔を真っ赤にし、手を下ろして顔を隠した。


 そもそもミカは今の時点でも、全く小さくない。むしろ年齢的にはある部類だろうって、何回も同じようなこと言ってる気がするけど。

 そんなことより、ミュリさんにちょっと謝った方がいいと思う。切実に。


 って思ってたら、ミュリさんが滑ってるはずなのに、声が聞こえない。あの人は怖すぎて声が出ないタイプか。



「……で、バンザイをした理由はなに?」

「あ…えっと…その…あの…。もし、もし、有夢が…その…胸を目で追ってるってことは____」



 その後が噛みまくりでところどころわからないところがあったけれど、要約すると『そういう気分になってるのなら、他の人を見ないで私を見て。なんなら触ってもいいから!』ってことでバンザイをしたらしい。


 少しミカは冷静さを欠いてる気がする。いつもならそんなことないのに、どうしてこうなったんだろう?

 

 俺は半ベソかいてるミカの頭を撫でてこう言った。



「その触るとかは……また、近いうちにこんど。ね」

「うん……あ、でも」



 ミカが頷いた時、バシャバシャと3人ほどがこちらに近づいてくる音がした。カルアちゃん達が来てるんだ。


 しかし、ミカはそれに気が付いていないのか、俺の顔に顔を近づけてきている。それもいつの間にか、肩をがっしりつかんで。



「あー、居た居た! 二人ともこんなところで何して____」



 その時、いつも通りにミカと俺はキスをする。

 またか…また、人前で意図せずこうなってしまった。



_____

___

_



「楽しかったよ! アリムちゃん。ウォータースライダー!」

「わ、私もですよ! ふふ」

「私は、ウォータースライダーが楽しかったのと、良いものが見れたので満足ですよ」



 あの後、俺達は散々、3時間くらいずっとウォータースライダーで遊んでいた。

 数分に一度、おちょくられたけど。


 この日は特にウォータースライダーと、キスシーンを3人に見られたこと以外の大きなことはなく、ボードゲーム等で遊び、俺が作ったご飯に舌鼓をうち、温泉に入り、リロさんとミュリさんを泊まらせて、1日は終わった。

 

 ちなみに、カルアちゃんは今日、リロさんとミュリさんにあてた客間で、二人と一緒に寝るらしい。

 どう考えても、これは俺らへの配慮だ。

 

 てなわけで俺は今、数日ぶりにミカとだけ寝ている。その間や、お風呂でも本当はいろいろとあったけど、それはまた別の話。

 

 



 

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