第221話 カルアちゃんの訪問 2日目 前編

「んぁ…おはよ、アリム」

「おはよー、ミカ」



 俺とミカは起きた。

 俺の隣にはカルアちゃんも居るけど、スゥスゥと寝息を立てて気持ちよさそうに眠ってる。

 というか、またミカに抱きつかれてた方の腕が痛い。けど一向に構わない。


 時計を見ると、まだ朝の6時半だった。偶然2人とも早く起き過ぎちゃったみたい。

 カルアちゃんを起こすのは8時でも別にいいし……もうひと眠りしようかな?



「早く起き過ぎちゃったね、ミカ。もう一回寝よ?」

「んー…や、私は起きるね。……アリムも起きて」

「え? うぅんまぁ、良いけど…」



 どういう意図があってかはわからないけれど、俺はミカの言う通りに起きる事にした。


 俺はとりあえず、2人分のお茶を入れ、ソファ前の机に起き、ソファに座った。ミカもソファに座る。こういうのんびりした雰囲気好き。



「ねー、アリムこっち向いて?」

「ん?」



 俺がミカの方を振り向くと、同時にミカにキスをされる。



「えへへ、朝からこういうことするの久しぶりだね!」

「そうだね! これがしたかったの?」

「うん。もっとしよ?」

「でも一回、歯磨きするなりシャワー浴びるなりしようか」

「むぅ……」



 というわけで、俺とミカは歯を磨き、またソファに座りなおした。



「でもさ、ミカ。カルアちゃんいる時だって、ローズがいる時だって、普通にキスしてたよね?」

「あれは違うの。こういう人前じゃないのんびりできる時とはね」

「まぁ、確かに」



 俺は一旦有夢に戻り、そのあと1時間にわたりイチャついた。ミカはそれなりに満足したみたい、そう、それなりに…。

 俺達が…いや、俺が十分になった頃、カルアちゃんは起きてきた。6時半を少し過ぎたくらいかな。



「おはようございます! アリムちゃん、ミカちゃん!」

「ん! おはようカルアちゃん」

「おはよー、カルアちゃん」



 そのまま朝ごはんを食べ、今日の予定を話しあった。

 主に、お料理の練習の話。

 そうだ、カルアちゃんにSKPがいくらあるか訊かなきゃね。俺もミカも料理が上手いのはスキルの効果があるからだし。



「今日は昨日言った通り、料理の練習をしようね、カルアちゃん!」

「はいっ!」

「ところで、カルアちゃんって今、SKPはいくらあるの?」

「え…SKPですか? いえその…私、生まれてからSKPもSTPも弄った事がないので……そのまま、最初の10のままですよ」



 ということはカルアちゃんはレベル1か…。

 通りでメフィストファレスに簡単に攫われちゃう訳だ。

 でもなんでレベル1のままなんだろ? だって国王様が元SSSランカーなんだよ? 

 レベルの大切さは知ってると思うんだけど…。



「カルアちゃん、レベルは重要なんだよ!」

「そうなのですか!? で、でも経験値は魔物を殺した際に得られるものであって……その、冒険者や兵士などの戦う職業の方以外はみんな、基本はレベル1だって、お兄様から聞きました。レベルなんてそうそう上がるものではありませんし……」



 あー、そうか、そうか、なるほどね!

 この世界に来てからの謎が一つ、今、解決した気がする。

 つまり、この世界はレベルが上がりやすいようにできてるのに、そもそもみんながレベルを重要だって思ってないんだ! 

 それで、そのレベル上げの重要性に気がついたり、仕事をこなしてるうちに魔物を沢山倒した人がSSSランカーなんだね。多分、国王様は後者かな。


 となると…カルアちゃんを無理にレベルを上げさせてSKPを得るよりは、鍛錬によるスキルの自動上昇に頼った方がいいかもね。



「ま、いいか。お料理の練習しよっ」

「は…はいっ!」

「なにから作るの? アリム」

「まずは野菜炒めからだね」



 台所に向かい、俺は幾つかの野菜を作り出した。

 カルアちゃんにはエプロンを着させる。

 


「よし、まずはこれを水洗いしてね、カルアちゃん」

「はい! その…石鹸とかは?」

「……カルアちゃんは石鹸を食べられるの?」

「そ、そうですね! 食べられません。水だけで洗います」



 カルアちゃんはかなり丁寧に野菜を洗った。俺とミカが良いというまで洗い続けた。もし止めなかったずっと洗ってた。

 全ての野菜を切り終わったから、次は切る作業だよ。

 それはミカが教えるんだ。



「いい、こうして、皮を剥いてね?」



 ミカはカルアちゃんのためにゆっくりと、ピピー村特産品のカバの皮を剥いてみせた。



「それで、一旦、切り易いように半分に切って…。それから切る時は手をニャーンって、猫の魔物みたいにするんだよ!」



 ミカはニャーンと猫の真似をしながら、その手がどのようなものかをカルアちゃんにみせた。可愛い。めっちゃ可愛い。

 今度、2人きりの時にやってもらおう。俺もやる羽目になりそうだけど。



「やってみて!」

「は、は、はいっ!」


 

 カルアちゃんはミカが実演した通りにちゃんと野菜を切れた。包丁を持つ手が震えてたり、たまに猫さんの手を忘れてたりと危なっかしかったけど、そういうのを繰り返して全部の野菜を切る事ができた。

 

 てなわけだから、次は炒める作業だよ。

 

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