第190話 国王の勝利宣言前


 国王様は頭を上げ、王冠をかぶりなおした。



「……とにかく話は以上だ。勝利宣言は午後3時から。それまでカルアやルイン達の相手をしていてくれ」

「はぁ…はい、わかりました。失礼しました」



 俺とミカは、大金貨3万枚をマジックポーチに収納し、国王様の部屋を出た。



「どうするミカ? 200億ベルのお金…凄い…」

「わ、わかんない……使う機会なんてある?」

「いや……そんなにないと思う」

「とりあえず……とっておこうよ」

「そ…そうだね」



 俺とミカは無意識にカルアちゃんの部屋へと向かっていた。

 カルアちゃんが居ると思っていたからだ。

 案の定、カルアちゃんの部屋の前に立つとカルアちゃんとカルナ様の魔力を感じた。

 部屋の中に入る。



「あっ! アリムちゃん、ミカちゃん! お父様とのお話は終わったのですか?」

「うん、終わったよ」

「どんなお話だったのですか?」

「まぁいろいろとね、ありがとうって話」

「そうなんですか」



 様子を見る限りでは、カルアちゃんとカルナ様はお話をしていたようだ。

 


「午後3時からお父様が勝利したことを民に知らせます…それまでなにをして遊びますか? 昼食まで暇です……あ、もちろんアリムちゃん達が忙しくなければ…ですが」



 俺とミカも、特にその時間までやることもなかったからカルアちゃんの提案に乗ることにした。



「大丈夫、暇だよ。そうだなぁ…カルナ様も御一緒にどうですか?」

「ええ、是非御一緒させていただきますわ!」



 カルナ様はそう、嬉しそうに言った。じゃあ4人以上で遊べるのがいいよね。

 トランプ…ルールを説明するのが面倒くさい。

 それに今、このタイミングで新しいことをする気はない。

 だったら、俺がすでに世に発表してる…スゴロクでいいか。カルナ様への説明も簡単だし。


 そういうわけで、巷で最近超流行しているらしいスゴロクを4人でやった。

 カルナ様は初めてくせに強かった。

 お昼ご飯までに3回勝負したけれど、そのうち2回カルナ様の1位抜け、残り1回がカルアちゃんの1位抜けで終わった。


 このスゴロクはサイコロ二個でやってるんだけけれども、カルナ様は2個とも6の目というのを3回連続でやってのけた勝負もあった。

 なんという豪運。この人とだけは賭け事をしたくない…賭け事なんて最初からする気はないけど。


 午後12時になり、昼食を食べる。

 今日は俺が作ったものでない。この城のコックさん達が作ったものだ。

 そういえば料理長さんの腕が上がっていた。

 あの人、『真・料理』をカンストしていてこれ以上技術は上がらないはずなのに、どうしたんだろうか?

 後で聞いてみると、色々頑張ってたら、料理系の新しいスキルを取得したのだとか。

 まだあったのか、料理スキル。


 ご飯を食べ終わったのが1時。

 あと2時間ある。

 使用人さん達から準備されるように言われるけど、でも俺とミカはいつもこのままで良いとも言われる。

 カルアちゃんはこれから1時間以上かけて準備をするそうだ。カルアちゃんだって可愛いのに。

 顔の質でいったらそんなに俺と変わらないけど……やっぱり、あの称号のおかげか?

 周りから俺って…どういう見られてるんだ?


 そして、ミカとだべっていたらいつの間にか午後2時半。

 俺とミカは執事さんに呼ばれて、玉座の間まで来た。

 やっぱり……勇者宣言の時と同じようにこの玉座の間にだけでもたっくさんの人が居た。

 みんな、勇者宣言前には俺のことを良い意味でも悪い意味でも可愛がってくれてたのに、なんだか見られる目が変わった気がする。

 俺の前でひざまずく人まで居る始末だ。


 人混みに飲まれつつも、俺とミカは外にいる国王様の元まで辿り着いた。

 そこにはカルナ様、カルアちゃん、ルインさん、テュールさん、大臣さん達が居る。



「アリムとミカよ、あと30分で勝利宣言が始まる……緊張はしておらぬか? 特にミカよ」



 国王様がそう、優しく声をかけてくれた。

 俺とミカは頷く。

 けど…やっぱりミカは少し緊張してるみたい。俺は何回かこういうのを体験してるからちょっと慣れちゃった。


 国民は……すでに集まっていた。

 おそらく、この王都中ほとんどの人が居るだろう。

 それにこれはメフィラド王国どころか全世界に放送されるらしい。

 噛んだりしないと良いな。

 なんだか、俺も緊張してきたや。


 よくよく見ると、国民たちの目線も俺に向けられているような感じがする。多分、気のせいではないと思う。


 そしてあっという間に3時、国王様が拡声器を持って話し始めた。

 多くの人に向けて、悪魔との長きにわたる戦い、そのものが____アリム・ナリウェイ、つまり俺の活躍によって終わったことを。

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