八章 戦争終了後

第182話 死者蘇生

 今、俺はミカと共にメフィラド城敷地内の、カルアちゃんのお母さん…カルナさんを安置していた場所に居る。

 その場には国王様、大臣さん、騎士団長さん、大司教さん、ルインさん達、ティールさん、カルアちゃん……も居た。


 俺達の目の前には棺の中には傷一つない遺体がある。

 メフィストファレスによって奪われていたカルナさんの遺体が、元の場所に戻ってきたんだ。


 そして、この場所に俺がいる理由…それは。



「国王様、生き返らせてもよろしいのですね?」

「無論。頼む」



 俺はカルナさんの遺体に、アムリタが入った霧吹きの霧を浴びせた。

 この霧吹きは昨日から今日の午前まで、ハルマゲドンによって死んだ人達全員を生き返らせるのに大いに役立った代物だ。


 そしてすぐに、この場の魔力が一人分増えたのがわかった。

 国王様もそれに気付き、ヨロヨロと棺へと転びそうな足取りで近づいた。

 彼は全身に力が中々入らないようだ。


 そして国王様がカルナさん、いや、妃様かな?

 手を握った瞬間、彼女の十数年間開かなかった目が開いた。

 


「……ぅぁ…れ? ここは…?」

「おっ…おっ…おぉぉ」



 国王様は両手で彼女の手を握りながら、大粒の涙を流している。

 その様子をカルナさんは不思議そうに眺めていた。



「ぉ……お母様!」



 カルアちゃんがカルナさんの側に駆け寄った。

 ルインさん、ティールさんもその後に続く。

 


「えっと…あの…? 確か私は死んだはずで…すが……?」



 カルナさんは辺りをキョロキョロと見渡した。

 なにやら、様子をうかがっているというよりは、何かを見ている感じだ。

 あ、そうか。

 多分…この人も、ステータスが閲覧できるんだね。


 

「お母様は蘇ったのですよ」

「まぁ…」



 そう、ティールさんが説明した。

 そのティールの顔を見るなり、



「貴方達はティール…それとルインですね?」



 その二人の名前を呼んだ。

 ティールさん、ルインさん、共に嬉しそうな顔をして答えた。

 目に涙を浮かべてる。



「はい! そうです、お母様!」

「ルインです、お母様!」



 二人はさらにカルナさんに近づいた。

 そして今度は国王様の方を向く。



「そして…この優しい感じ、ケルム様ですね?」

「あぁ、あぁそうだ、カルナ! ケルムだ!」



 そして最後に、カルアちゃんの方に顔を向けた。

 知らないとかやめてよ?

 それだとあまりにもカルアちゃんが可哀想だけど……。



「そして、貴女はカルア……」

「あ、ぁぁあ…あぁぁぁぁお母さまっ…お母さまぁっ……!!」



 カルアちゃんは泣き出した。

 幼いころから、母親が居なかった寂しさが全て今、溢れ出てきたかのように、顔を涙で濡らしくしゃくしゃにして、笑いながら泣いていた。


 カルナさんはカルアちゃんの頭を、国王様に握られていない方の手で優しく撫でた。

 でも…あれだな、姉妹にしか見えないや。

 中学生と高校生って感じ。

 ついさっきまで成長が止まってたってのもあるけれど、やっぱり、若返りのスキルって偉大だね。



「妃様、この間に何があったか…私から説明致しますぞ」



 大臣さんは、そう言って出た。

 


「あら…貴方はオラフル様ですね? すいません、お願い致します」



 大臣さんは、今、こうしてカルナさんに生き返るまでに何があったか、どういう経緯で生き返ったか、などを説明した。

 話の間に、俺の名前がちょくちょく出てくる。その度、彼女は俺の顔をチラチラと見てきた。


 

「_____と、いうわけでございます、そこにいる勇者……アリム・ナリウェイの作成したポーションの効果により、妃様は蘇りなさったのです」

「赤髪の少女ですね? ……でもアリム…様、『ブレイブ』の称号を所持していないようですが……?」



 それに対して、国王様は口を挟んだ。



「カルナ、それについては追々話す」

「わかりましたわ。ではひとまず……」



 棺に横たわっていたカルナさんは降りて立ち上がろうとした。 

 それをティールさんは支えようとしたが、彼女は何の問題もなく立てた。

 まぁ、これもアムリタのおかげかね。


 そして俺の前まで、カルナさんはやってきた。 

 見れば見るほどに綺麗な人だ。

 


「アリム様…」

「はい」

「この度は…私から、かの悪魔神を追い出し、その御力で蘇生して頂いたこと、深く…深く感謝致します」



 カルナさんは俺に対し、腰を深々と下げている。



「いえ、その…できることをしたまでですから」

「ええ…人を生き返らせるなんて、まるで神のようですわ」



 それには、ミカを含めてこの場にいる全員が頷いた。

 昨日今日でそのフレーズを何回聞いたことが。

 それに、カルナさん、ボソリと「ステータスも…」と、言っていたような気がする。



「さぁ、今日はもう少しで夕方となる。……我々には積もる話があるからな。そろそろ城へと戻ろう」



 国王様は涙をぬぐいながら、そう言った。

 


「アリムとミカよ…すまないが、全ての礼は後日する、それとだな……」



 なんだか言いづらそうだから、代わりに俺が言ってやろう。

 家族水入らずで過ごしたいんでしょ、国王様。

 俺もミカとゆっくーーりイチャイチャしたいし、従いますよ。



「今日は帰らせてもらえませんか? この戦争の疲れをゆっくりと取りたいんです」

「あ、ぁあ、そうしてくれ」



 そんなわけで、俺達はその場で解散し、各自帰って…とは行かなかった。

 なぜなら、それを騎士団長様が静止したからである。



「ちょっと、皆、待ってくれないか?」

「どうしたんだ、ゴルド」

「いや、今、ギルマーズから連絡がありまして、国王様…そしてアリムとミカ。さらに私達も一緒に城前に来てくれ…と。何やら会わせたい人が居るみたいですな」



 ギルマーズさんが、国王様達や俺らに会わせたい人…? 誰だそれは。



「……仕方ない、わかった。ではアリムとミカ…それと大臣、騎士団長、それと大司教も。皆、城前に行くぞ。その他のものは帰って待っていてくれ」

「あ、僕も連れて行ってください、お父様」



 そう、ティールさんが言い出した。



「あぁ、その者らのステータスをみてくれるというのか? ティール」

「はい、お父様」

「そうか、ではお前もついてこい」



 そんなわけで、他の人は帰らせて、俺ら7人は城前へと赴いた。

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