第174話 二段階目

「は?」



 なんで俺が敵であるこいつのお願いを聞かなきゃならないんだ?



「嫌だよ、だって…悪魔であるアンタらがサマイエイルを生き返らせなかったらこうはならなかったんだよ?」



 俺は声を荒らげ、訴えるようにそう言った。



「それは…そうですが……」



 俺は立ち上がり、精一杯背伸びをしてメフィストファレスの胸ぐらを掴もうと思ったが、スカッてしまった。

 煙のままなのか…それに、案外身長高いな。



「許さないからね、絶対に」



 力の行き先を失い転びそうになった身体を足で踏ん張りつつ、俺はサマイエイルにそう吐き捨てる。

 渡されたハンカチはすでに、サマイエイルの胸ぐらを掴もうとした時に落としている。


 メフィストファレスは俺が落としたハンカチをしばらく見つめた後に拾うと、こうなることが嫌だったような口ぶりでつぶやいた。



「あぁ、やっぱりこうなっちゃいますか……」

「そりゃそうでしょ」



 その呟きに対し、俺もつぶやく。



「ハンカチでも渡してご機嫌とりすれば大丈夫だとおもったんですがね……仕方ない。では…力ずくで行くしかないようですね? 強制契……」



 俺はメフィストファレスがそこまで言ったのを見計らい、ゾーンを発動。

 ウインドボールを唱えてピエロの煙の腹の真ん中に風穴を開けてやった。

 やっぱり、煙には風だよね。


 そしてゾーンを解除する。

 このゾーンの間にミカを生き返らせても良いんだけど、なんだか戦闘になりそうだし、危ない目に合わせられないから後にしよう。



「や……グボぁっ…」



 メフィストファレスは地面に立膝をつき、腹を抑えた。



「くっ…そう上手くはいきませんか…」


 

 メフィストファレスはそう言うと、どこからともなくドロップロットと例の鎌を取り出した。

 そういえば、勇者の剣とドロップロット、回収し忘れてたっけ?



「これからが…本番ですよ?」


 

 流れるような手際の良さで、メフィストファレスは躊躇なくドロップロットを自分の腹部に突き刺し始めた。

 何をしてるんだ、こいつ。切腹か?


 考えて、下手に行動できずにいたら、何故かサマイエイルを封印した時に見た紫色の靄がメフィストファレスの中に入っていく。

 マジでなにやってんだよ。わからない。


 どう考えてもドロップロットがなんかしてるな。

 どういう力を持ってるんだ、あれは?

 ……そうだ、ゾーンやって鑑定をしてみれば良いんだ。

 自分で作った物を自分で鑑定するとは思わなかった。



【「ドロップロット」


・状態→ 最良

・出来→ 最高

・価値→ 伝説

・材料→ ミスリル

     オリハルコン

     エンチャント

・種類→ 封剣

・説明

:攻撃力+390

:この剣は他の剣を折ることができる。

:剣を折った際に以下のことが任意で可能。

・剣の能力を奪う。

・折った剣が封剣だった場合、その中に居た者もこの剣に移せる。

・この剣を何かに刺すことにより、奪った、あるいは移した能力や力をその対象に移すことができる。

・この剣は現在、以下の能力を手にしている。

-:この剣でつけた傷は必ず3秒以内に塞がる。

・この剣は現在、以下の者を封印している。

-:悪魔神サマイエイル 】



 ……なんつー、チート武器だ。

 俺はこんなものまで作れたのか。


 …つまり、今、メフィストファレスは悪魔神サマイエイルの力を自分に移そうとしている…ということか?

 うわ、マジで!?

 だって、さっきのメフィストファレスの言葉通りなら、いわゆる即死能力だもんね?

 サマイエイルの力って。


 ……今のうちにドロップロットを壊しちゃって、メフィストファレスも倒しちゃったほうが良いかな?


 いや、それともわざと吸収させて一網打尽にしたほうが……うん、その方が良いかもしれない。

 どうせ、俺には勝てっこないんだから。


 でも…あれだよな、これってなんかラスボスの第二形態みたいだよな。


 俺はゾーンをといた。



「ふひひはは!! この剣の力ぁ…作った貴女ならご存知でしょう………? 実は貴女がサマイエイルを封印した後、私はこの剣で勇者の剣を壊してるんですよねぇ…この意味、わかるでしょう?」



 どくどくとドロップロットの刺し口から紫色の靄が流れていく。

 そして、ついにはメフィストファレスの背中にサマイエイルの羽が生えてきた。

 

 ……あれさ、アロマさんだったから生えてた羽が天使の羽のように綺麗に見えてたけれど、ピエロが羽を生やしたところで禍々しい以外の何者でもないね。うん。


 

「さて、そろそろですよぉ…ふはは……ゲームで言えば二段階目と言ったところでしょうか? もっとも、そんなこと貴女にはわからないでしょうけどね?」



 ゲーム…? 二段階目?

 なんでこいつがそんなこと言ってるんだ。

 アナズムにはそんな概念、ないはず。

 俺らと同じ、メフィストファレスも地球から来た…とか?


 だとしたら悪魔共が6時6分6秒なんてふざけた時間にやってきたのも頷ける。

 俺がそんな風に思考を張り巡らせてる中、メフィストファレスの力の吸収が終わったようだ。



「くっ…くっくっくっ……ははははは! 手に入れましたよ! 絶対的な力を! とある言葉を借りるなら……………俺…いや、我が力の前に絶望して死ね! 勇者よ! ですかね」



 うん、それもあれだよね、ドラグナーストーリー2のラスボスのセリフだよね。

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