第175話 ハルマゲドン

 やっぱり路線変更しよう。

 メフィストファレスはサマイエイルごと封印するんじゃなくて、別々に。

 どうもメフィストファレスがさっきから、同郷人な感じがするから、詳しく話を聞きたい。


 ……とりあえずは、ミカを含む遺体を安全な場所に移さないと。

 たしか、メフィストファレスの鎌には触れた物を煙にする能力もあったはず。

 それをみんなが食らっちゃったらまずい。


 俺はゾーンの状態で北口のすべての人間の死体を西口と東口、それぞれ近かった方に移した。

 東口では、パラスナさんも死んでいた。

 西口ではバッカスさん、ラハンドさん、ガバイナさんも死んでいた。


 ただ…これらの死体は目が丁寧に閉じられており、口には何か液体を流し込まれた跡がある。

 その上、胸の上で手を組まされていた。

 特にパラスナさんなんて、手を組んでること意外は、なにやら布のようなものの上で寝ているように、丁寧に置かれていた。


 一方、ウルトさんの遺体がどこにもなかった。

 ウルトさんが待機していた拠点の中にはただ不自然に灰がつもっている。


 どこに行ったのだろうか?

 気になる。

 ……けれど、仕方ない。ウルトさんの捜索は後にして、ちゃっちゃとメフィストファレスをどうにかしよう。


 俺はメフィストファレスの前に立ち、ゾーンを解いた。

 あ、この間に攻撃しちゃっても良かったかもしれない。失敗した。



「まぁ、俺は貴女に死ねと言いましたが、貴女の力が必要なので、殺しはしませんよ?」



 片手にドロップロット、もう一方に鎌を握った羽根つきメフィストファレスはゆっくりと立ち上がった。



「くくく、そういえばこれまでにも、俺は貴女達のおかげで成功した作戦がいくつもありましてねぇ。この、サマイエイルを俺が吸収することとかね」



 訊いてもいないことをベラベラと話し出すメフィストファレス。

 サマイエイルがあっさりとやられたのを見ていなかったんだろうか?



「実はね、俺。知ってたんですよ、こうなる事をね。仲間の内に優秀な預言者が居て____ん?」



 そこまで話して、メフィストファレスは周囲の違和感に気づいたのか、あたりをキョロキョロと見渡した。



「周りの死体がなくなってますねぇ……いつの間に動かしたんですか? アリムさん。サマイエイルと闘ってる時から見てましたが……瞬間移動とか、時間停止とかができるスキルでもお持ちなのですか? ……厄介ですね」



 おぉ、時間停止か。

 当たらずとも遠からず…ってとこかな。うん。

 早く動きすぎて周りが止まって見えるってのは時間停止と近いものを感じる。

 それに、B(防御)も同じくらい高いおかげで、MPの使いすぎみたいな、身体に悪い反動は何もないしね。



「だったら…どうする?」

「まぁ、攻略は難しいですが……やるだけやりますよ………とりあえず、時間停止だと仮定しましょうか……ハルマゲドン!」



 そう言ってメフィストファレスは手を天に掲げた。

 俺はすぐに動こうとしたが、いつの間にやら、あたりに黒い靄……そう、サマイエイルが俺に突進してこようとしてきた時のアレが俺を囲むように充満していた。



「それ…ハルマゲドンに触れたら死にますよ。貴女はそこから出れない。左右上下斜め…どこにもね」



 そうか、この黒い靄…ハルマゲドンとかいうのがその即死能力だったか。

 サマイエイルが突進してきた時に、この靄がどこか飛んでくのを見たけれど、まさかアレが触れると即死効果なんて初見じゃわからないよ。


 それに、油断してたら靄に囲まれてしまった。

 この動けない状態からメフィストファレスの何でもありのチート技、強制契約を使って、俺にまた何かを作らせてどうにかするんだろうね。


 くそ、瞬間移動のスキルだと思ってくれてればこんな風に包囲なんてされなかったろうに。



「あぁ、読みがあたった! どうやら瞬間移動ではないみたいですね。…やっと…やっとですよぉ………あぁ、動いたら死にますからね? 貴女はもう、俺の言うことをきくしかない」



 まぁ…ただ…囲んだ程度じゃ、アムリタを口に含めばすぐに突破できる。

 それを実行しようとしたその時だ。


 突然、メフィストファレスの背後に、一人の男性が現れた。


 いや、あの好青年風の格好は何回も見てきた。

 ウルトさんだ! え、生きてたの?

 立ってるってことは生きてるんだよね?


 だけれど、魔力は感じられない…不思議だ。

 魔力を感じないせいか、メフィストファレスはウルトさんに気付いていない。



「それじゃあ、また…強……」



 ウルトさんは油断しきってるメフィストファレスの羽をつかみ、後方に投げ飛ばした。

 一瞬、ウルトさんの顔が見えたが目が死んでる。


 そして、ウルトさんは俺の方に近づいてきた。



「アリム……ちゃん…良かった、アリムちゃんは生きてたんだね」



 ウルトさんは泣きながらそう言った。

 しかし…この人は一体、どうやって死ぬのを回避したんだろう?



「あの…ウルトさん?」

「アリムちゃん…皆んな…死んじゃったよ。あのレジェンドポーションを飲ませても…何故か生き返らなかった」



 ウルトさんからは『悔しい』といった感情が強く溢れ出てる。



「この…この靄が空から降ってきて…それが拡散して…皆んな死んだんだ。俺は大丈夫だった……スキルの都合でね」



 スキルで死ななかった…か。

 そう言えばこの人の二つ名、不死身のヒーローだったよな。ガチで不死身だったんだな。

 

 気付いたら、ウルトさんは俺を囲んでいる靄に手をかけようとしていた。

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