第170話 真打対決
「では、国王様! そろそろ悪魔神を倒しちゃいますね?」
俺はミカの頭を軽く撫でつつ、国王様にそう訊いた。ミカは満足そうな顔をしている。
「あぁ……頼んだぞ、アリムよ」
ミカの頭から手を離すと、ミカは上目遣いをしつつ、こう言ってきた。
「アリム……何回も言うけれど…無茶はしないでね?」
「わかってるよ、大丈夫…」
ミカにそう言い返し、俺は空へと一人で駆け上がった。
バリア内でみんなが俺の名前をコールしたり、応援したりしてくれている。
だけど、誰も一緒に戦ってくれる人はいないんだ。…なぜか勇者と悪魔神は一対一で闘わなければいけない。
それは何故か?
……初代勇者がそう、言い残したらしいから。
理由は特に釈明とされていないけれど、過去の勇者はみんなそれを守ってるし、みんなにとってはそれが当たり前になってるんだよ。
とりあえず、俺は悪魔神の居るところまでたどり着いた。
悪魔が出たところで消滅させられ、幹部を倒され、明らかに劣勢なのにも関わらず、余裕そうに腕を組み、その場から動こうとしない。
それに、ミカの雨も効いていないようだ。
「えっと…今から倒すね?」
とりあえず、そう言ってみた。
すると、美女の姿を借りていて、十二枚の翼をはためかせているサマイエイルは、腕を組むのをやめ、口を開いた。
「ブレイブの称号を持っていない偽の勇者に何ができる? それに、お前らはまだ、勇者の剣を手に入れていないだろう? ここへ来る途中に、トリアエリアル山の頂上で見つけたぞ」
そう言って、彼女は何も無い筈の空間に、闇の塊のような円形を作り出し、そこにまるで手を突っ込むようにして、何かを取り出した。
……鞘に入った勇者の剣だ。
……ていうか、魔物や悪魔が這い出て来ていた場所も何も無いって思ったけど、上から見るとなんか黒い闇の塊のようなものが展開されていて、そこから出てきているようだ。
いやぁ、気づかなかったな。
「ふ…勇者の剣はこちらにある。そしてお前は本物の勇者ではない……どうやって我を封印するつもりだ?」
そう言って、サマイエイルは再度、闇の中に勇者の剣をしまった。
「そっちこそ、シャイターンの幹部だってほとんど倒したし、仲間の悪魔や魔物なんて、あの黒い雲となんか黒い空間から出てきた瞬間この雨で爆ぜてる。……どう考えても、僕らの方が優勢だよ?」
それに対し、サマイエイルは鼻で笑った後、こう言った。
「ただの悪魔らなど我にとってはどうでも良い。……条件さえ満たせばいくらでも出せるからな。幹部達についてもそうだ。既に倒された幹部、5体は我にとっては捨て駒と同じよ……。我が本気を出せば、ここにいる人間共全員を一瞬の内に葬ることなど容易い」
なんか自信満々そう。
まだ、勝てるつもりでいるのかな?
勇者の剣だって、本物は見逃してたけれど、俺のお手製なら何本でも有るんだ。
「ふーん…そうだったんだ。でもね、勇者の剣だってボクは準備はできてるんだ」
そう言って、俺はマジックポーチから大勇者の剣を取り出して、見せつけた。
「ほう…それは確かに勇者の剣……しかし、我が持っているのも勇者の剣だ……一体、どうなっている?」
サマイエイルはひどく驚いている様子。
これで相手の高いはなを少しは折れた…かな?
はっきりいって、このサマイエイルの威圧感が半端じゃないけれど、驚かせるのには成功した。
「まぁ……そうだね、こういうことだよ」
そう言いつつ、俺は掌を上に向け、そこにダークマターを作った。
そしてそのダークマターは段々と形を変えていき、一本の剣となる。
そしてその剣が段々と姿を変え、最終的に、勇者の剣と同じ見た目と効果のものが完成した。
「……成る程な……つまり、小娘が己で作ったということか…そのスキルの力で」
「うん、それで合ってるよ」
サマイエイルから余裕の表情がなくなった気がする。
そして、彼女は俺から距離をとった。
「なぜ小娘が勇者を務めているかはわかった! 中々に厄介だ! 早めに潰さなければな」
サマイエイルがドロップロットを握ってない方の手を俺に向かって、何かを押し出すように、手のひらを開いて突き出すと、その先からは、例の黒い闇のような円形が発生した。
そこから、超多量の悪魔が這い出てくる。
なんだか、出てき方が水揚げされてポンプで汲み上げられて、そのポンプから出てきた魚達ににてる。
それは全て、ミカの雨により消滅しつつも、俺の方へと向かってくる。
俺は右手に持ってた大勇者の剣を一回だけ振った。
すると、悪魔達は簡単に倒れた。
おそらく、今出てきたのは全部倒したはず。
「ふん…やはりこの程度ではダメか……一応、我は今、幾度となく復活してきたなかで、過去最高の容態なのだが……」
うわぁ…なんか言い回しが本当に、漫画やゲームの世界の悪者っぽい。
今更だけれど、そう思った。
…って、そんな風に余計なこと考えてる内にもサマイエイルから、何やら黒い靄のようなものが見え始めていた。
羽も怪しく輝き始めた。
「我にも色々と技はあるが……小娘よ、お前には出し惜しみはできないな。本気で行かせてもらう」
サマイエイルはこちらに突撃してきた。
……俺もそろそろ、ゾーン展開したりして、本気出してもいいかな?
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