第169話 白い雨
「ば……馬鹿な………」
俺はとりあえず、目の前に立ちはだかった戦車野郎を一刀両断してみたけれど、あっけなく奴は力尽きた。
えーっと…ベリアルだっけ?
とにかくそいつからはSSランクの魔核が1個出てきた。
でも1つ違和感が。
なんか魔力が其奴が死んだと同時にサマイエイルの方向へ飛んでいった気がしたんだよね。
気のせいかな?
「おぉ、ミカ、起きたか!」
そう、国王様が言ったのが聞こえた。
とりあえず、そっちを振り返ると座禅を組んで、安全な場所にいたミカが、国王様の近くにいた
俺はミカのもとへ駆けた。
「ミカ! ため終わったんだね?」
「うん」
ミカは可愛らしく頷いた。
可愛い。いや、そんなことよりミカからは普段感じることのないような膨大な魔力を感じる。
「凄い…魔力だね?」
「でしょ? それより、なんか……敵、多いね。まだ戦争始まったばかりとか?」
ミカはキョロキョロと辺りを見渡すふりをした。
「ううん、違うよ。もう始まって1時間は経つかな。でも一向に敵の数が減らないんだよ……それどころか、増えてる……ですよね? 国王様?」
「そうじゃな、アリムのこの腕輪と像の結界のおかげでほとんど被害は無いが……敵が減っておらぬのもまた事実。……すでに何万も倒してるのだがな」
俺と国王様は非常に困った顔をした。
すると、ミカは得意げな顔になりこう言った。
「まぁ、大丈夫。私がなんとかする。多分、一気に敵を減らせるはずだから」
かなり自信満々そうだし、これは期待してもいいかもしれない。
「うん、期待してる!」
「えへへ、期待された!」
ミカはマジックポーチから神弓を取り出すと、それを思いっきりひきしぼり、上へと向けた。
ミカの魔力やMPが弓へと移っていくのがわかる。
「じゃあ、撃つからね」
俺に向けてそう言った。
俺が無言で頷くと、ミカはひきしぼっていた弓の効果で作った矢から手を離し、放った。
矢は空高く登っていき、途中、結構多くの悪魔や魔物を蹴散らしながら黒雲に到達。
するとドでかい魔法陣が空いっぱいに展開された。
魔法陣でかすぎる……これは多分、メフィラド王国全体に行き渡ってるんじゃ無いかな?
「ふぇ…やったぁ…成功」
そう言いつつ、ミカは力なく崩れそうになったから俺と国王様は慌てて支えた。
「ミカは今、何をしたんだ?」
そう、国王様は俺とミカに訊いてきた。
俺は答える。
「ん…いわゆる広範囲攻撃ですかね」
「ほぅ……どのくらいの規模の?」
それにはミカが答えた。
「大体…この国まるっと1つ分位ですかね?」
「そんなに!? ……だが、悪魔達はこの辺りのみを集中してるようだぞ?」
「えぇ…ここら辺だけなんですか? …だったら4時間位の瞑想で良かったのに………」
ミカはあからさまに凹んだ様子。
俺はボソッと耳打ちをした。
「そんなに落ち込まないでよ」
「知ってたら、アリムの勇者宣言見れたもん…」
「大丈夫だよ、ちゃんと撮ってるから」
「生で見たかったなー…むー」
そう言ってる間にも、白い雨が一粒、ミカの頬に落ちてきた。
その雨はミカにまるでスポンジに吸い込まれる水のように入り込んだ。
少し、1日魔力を貯めてたからか、不健康そうだったミカの顔が明るくなった気がする。
ふと、バリアの外を見ると魔物の1匹にまたポツリと一粒当たったのを見た。
すると、その雨が当たったCランクの魔物は、まるで風船のように弾けた。
そしてその場に残るのは魔核のみ。
よく見たら雨の代わりに度々、魔核が降ってくる。
そしてミカの頬に雨が落ちてきてから1分後、白い雨が土砂降りとなって降り注いだ。
みんな、突然雨が降り出してパニックになってるようだ。
……そういえば、勇者宣言の時に雨が降ることも言っておけばよかったかな?
いいか、別に。
みんなも魔物や悪魔が弾けてるのに対して、自分達には害が無いどころか傷が癒えてることに、そのうち気づくでしょ。
そう、土砂降りとなってからは悪魔と魔物はバンバンと破裂していた。
影から産まれたり、空の黒雲から発生して数秒も経たずに……だ。
いまや、そこらじゅうに魔核と雨が降り注いでる状態。
魔物と悪魔にとっては地獄絵図に違い無い。
「……あんなにいた魔物が一気に……すごいね…ミカ」
「でしょ、もっと褒めてもいいんだよ?」
ミカが何かするところを見られていたのか、大臣さんや大司教さんも説明を求めてきた。
しっかりと説明してあげた。
因みにミカによると、『人間に敵対する悪魔と魔物』と指定して雨を発動させたらしいから、ベヘモットや翼竜達はダメージを受けていない。
何はともあれ、これで俺達の勝ちはほぼ決まったも同然。
方々の連絡により、幹部もメフィストファレス以外全員倒されたこともわかってる。
さぁて……あとはサマイエイルとメフィストファレスを倒すだけだね!
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