第160話 聖なる四銃士
国王様……もとい、元SSSランカーのケルムの魔方陣から何かが出てくる。
…召喚魔法か。
魔方陣からまず最初に、象の鼻と象牙がみえる。
象…? 国王様が召喚するのは象なのか?
でも…さすがに大きすぎる。
その見えている鼻と象牙だけで軽く5階建の建物くらいの大きさはあるんだけど……。
それにしても象…か…。
そういえば、国王様の部屋の椅子、象の刺繍がしてあったけど…それってまさか、この今出てこようとしている象の事なんだろうか?
考えている合間にもだんだんと象は姿を現していく。
まるで幽霊が井戸から這い出るかのような出方が気になるけれど……。
そして、象の耳を含む顔が完全に出切った時、その象に国王様は声をかけた。
「久しぶりだなぁ! ベヘモット」
ベヘモットと呼ばれた象は目だけで国王様を見て、抑えたようなかすれた感じで鳴くと、頭の中に直接語りかけてきた。
いわゆるメッセージだ。
【おひさー! ケル君元気してたー?】
…………。
思ったより口調が軽い。
「……そう呼ぶな、ベヘモット。今では俺は、一国の王だからな。何回もそう言ってるだろう」
【あはー、そうだった~! めんごー……で、どういう要件なの?】
おそらく、メフィラド城一戸分はありそうな大きさの象と、この国の王が仲よさげに話している。
その光景はなかなかにシュールだ。
「前を見ろ」
【うわぁ…悪魔だねぇ……え!? 悪魔!」
「そうだ。お前を呼び出したのは他でもない。悪魔の殲滅に協力しろ」
【あちゃー……悪の魔神が復活しちゃったんだねぇ……で、悪の魔神が復活したって事は勇者もいるんでしょ? だあれ?】
「この娘だ」
国王様は俺の側までより、俺の頭を2回ほどポンっと優しく叩いて、ベヘモットに示した。
【えっ! 小さな女の子じゃん!? むさ苦しいお兄さんかと思ったのに……可愛い!】
そう言いつつ、ベヘモットは鼻を俺の方まで伸ばしてきた。
特別、生き物臭い匂いがしたりはしない。
「アリム、ベヘモットの鼻先を撫でながら自己紹介すると良い」
「へっ…あ、はい」
俺は言われた通りに鼻先を撫でる。
ちなみに、ベヘモットの体はお腹の真ん中らへんまで出てきていて、すでに前足は地に着いてる。
「ぼく……アリムって言います。アリム・ナリウェイ」
【そうか…アリムちゃんかぁ…よろしくね! こんなに小さいのに、勇者なんて大変だね?】
「……だからベヘモット、お前を呼んだんだ。この娘の負担を減らすため、なるべく多くの悪魔と魔物を蹴散らせ。」
ベヘモットは鼻を下げ、足を引きずり出す。
全身が出きった。
それとともに魔方陣も消える。
【了解! じゃあ一丁、やりますか!】
「あ、言っておくが悪魔と魔物以外は吸い込むなよ?」
【わかってるって】
ベヘモットはバリアから外に出た。
一歩歩くたびに地面が揺れることをよそうしたけれど、そんな事はなかった。
どうやら、魔法で衝撃を抑えてるらしい。
バリアの外に出たベヘモットはたちまち悪魔や魔物に飲み込まれた。
だが、なにやら魔物や悪魔の数がみるみるうちに減っていく……。
正確に言えば、吸い込まれている。さらにはその巨体にぶつかるだけで滅する悪魔・魔物も居た。
よくよく見てみると、ベヘモットは鼻から悪魔と魔物を吸い込んでいるようだった。
そしてあっという間に北口近辺一面の魔物・悪魔はサマイエイルを抜かして消えてしまった。
それでもなお、ベヘモットは吸い続ける。
ついには北口方面には、バリアまでたどり着く敵の量がさっきまでの3分の1以下になっている。
「はっはっはっ! どうだ、アリム。これが[巨獣の大召喚士]と呼ばれたワシの実力だ!」
国王様は俺に自慢をしてきた。
すごい、本当にすごい。
「まだまだ、これだけじゃないぞ? アリム。クリス…オラフル…ゴルド! "アレ"をするぞ?」
あれって……なんだろう?
気になる。
そう考えていると、国王様はさらに魔法陣を出した。また召喚魔法だ。それも3つ!
「いでよ! 嵐翼竜、炎翼竜、木翼竜!」
そう言うや否や、魔法陣からは3匹の魔法でできた翼竜が出てきた。
…木翼竜って、召喚するとこんな見た目だったんだね。
「わかりましたよ」
そう言って大司教さんは、杖を空高く上げた。
そして補助魔法を呟き始める。
……だが、その補助魔法の量がものすごい。
何重にも、何重にも重ねがけをオラフルさんとゴルドさん、それに3匹の木翼竜にしていた。
とあることに疑問に思った俺は、国王様に問う。
「あんなに補助魔法を重ねがけしたら……」
「あぁ、副作用だろ? その心配はクリスにはあまりない。なぜなら奴は『副作用を極軽減する』スキルを持っているからな」
なるほど、そうだったのか……。
そんなスキルもあるんだね。
そして、大司教さんの補助魔法によりステータスが底上げされた騎士団長さんと翼竜3匹はバリアの外に突撃し、大臣さんはバリアの中で魔法を唱え始めた。
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