第159話 開戦
何千か? 何万か?
数多の悪魔や魔物が俺たちの方に向かってくる。
仮眠を取っていた人達を慌ててお越し、俺らは応戦体制へと入った。
メフィストファレスとサマイエイルは、ここより上空、離れた場所で高みの見物をしている。
悪魔の中で先頭を走っていた悪魔が俺作成の像によるバリアによって行方を阻まれた。
それに、そのバリアにぶつかっただけでその悪魔は弱ったようだった。
いける。
というか、余裕かもしれない。
騎士の一人がその弱った悪魔をバリア内から剣で斬りつけた。
その一撃で悪魔は息絶え、消滅すると共にCランクの魔核を落とした。
それを例に、次々と襲いくる悪魔を阻むバリア越しから、皆、悪魔を切り刻んでゆく。
よしよし、順調だ。
問題が一つあるとすれば、魔物はバリアによって弱体化しないということだろうか。
ただこれも、俺の腕輪のステータス上昇によってごり押し出来てるみたい。
今のところは、E~Cランクの魔物や悪魔しか来ていないから、大丈夫なだけなのかもしれないけれど…。高ランク・高レベルの人達は何か物足りなそうにしているし…。
でも油断は禁物なんだ。
地面から攻めてくる敵はこれで良いとして、空を飛ぶ系の奴はどうかな?
鳥型の魔物、おおよそ15匹が一斉に魔法を唱え王都を上空から攻撃してきたところを見たけれど、特に何の問題もなくバリアは防いでくれた。
その鳥型の魔物は西側の魔法使いの誰かしらの攻撃によって撃ち落とされた。
空の方も大丈夫だね。
負傷者は誰もいない、だけど、悪魔と魔物の軍勢数は俺の目で見える範囲だけで現在、千は超えている。
俺らが攻めおとされることは無さそうだけど、いかんせん、数が多い。
埒があかない。
俺はこの戦争で試したかったことの一つをする事にした。
魔法の全力ぶっ放し。
これをやりたかったんだよ。
「騎士団長さん、ぼくも攻撃しますね?」
「あぁ…だが…お前にはなるべく魔力を温存して欲しい…」
「大丈夫ですって、MPなんて何回でも回復できますからね」
騎士団長さんはやれやれと首を振ったが、それ以上は何も言わなかった。
それを俺は許可と受け取り、バリアが張られているスレスレまで上空に飛んだ。
放つ魔法はサンダー・マーチレスのLv.5を5本。
MPは無駄に込めたりせずにそのままに、単純な魔力の高さに頼って攻撃してみたい。
魔法の形はレーザーのように光線型を想定し、俺の背後に雷様の太鼓のように五つの魔方陣を出現させる。かっこいい。
そしてそこから放たれるのは、俺の魔力いっぱいのマーチレス5本。
ものすごい爆音と共に、自分でも驚くほどの威力が放出された。
俺がうまく魔法のコントロールができていないのなら、下に居るみんなを巻き込んでたかもしれない。
俺は少しずつ身体を横にずらしていき、雷のレーザーで黒雲や影から出現する悪魔や魔物をなぎ払っていった。
マーチレスが当たった箇所は何も無くなる、という表現が正しいかもしれない。
俺の攻撃になす術もなく、悪魔や魔物は葬り去られていく。
無論、悪魔や魔物以外に被害が出ないようにきをつけてる。
そのため、主に狙っているのは空を飛んでいる敵。
ついでにメフィストファレスとサマイエイルにもこのレーザーの焦点を当ててみたところ、メフィストファレスは煙になって避け、サマイエイルは、一瞬だけギョッとした顔になったが素早く回避した。
最初はサマイエイルもこのサンダーマーチレスを受け流そうと思っていたみたいだけれどね。
俺が攻撃した場所にあった黒煙は、晴れる。
この攻撃は10秒程続いた。
これだけで何千もの敵を倒したはずだ。
俺は一旦攻撃をやめて、元の位置まで戻る。
俺が目に見える範囲の敵は上空の敵を消すついでに根絶やしにした。黒雲も消した。
………そのはずだったんだけど、黒雲はすでにもとにどり、根絶やしにしたはずの魔物はだんだんと数がもとに戻ってきている。
あー! も、本当。
なんなの…?
数多すぎでしょ。
それに、葬ったのは雑魚ばかりだったから、ろくに手応えがなくて面白くなかったし。
触れた先から相手が消えていくのって、あんまり楽しくないね。無双アクションゲームでももうちょっと敵を倒したという感覚は残るんだけど。
一方で、地に降りてみると国王様達のところに戻ってみると、俺の今の活躍により、騎士団達の士気が向上したと、騎士団長さんから伝えられた。
確かに、さっきよりも張り切って騎士さん達はバリアに近づく悪魔や魔物を攻撃しているようだ。
ただ、その出現する魔物や悪魔にも若干変化があり、まず、Eランクの敵は単純に数が増え、サンダーマーチレスを放つ前の5倍は増えた。
そして度々、Cの亜種やBランクの魔物も見えてきていた。
どうやら士気が上がったとはいえ、騎士達は敵の処理が追いついてないようだ。
もう一回マーチレスをぶっ放すか?
俺はそう考えた。その時。
「カルナ……………」
国王様が、そう、呟いた。
そして、唐突に俺の頭を軽く撫でた。
「よく、頑張ってくれたな……アリム。次はワシにやらせてくれ」
そう言うや否や、彼は着ていた豪華な服などを脱ぎ、動きやすそうな格好になる。
そして国王様から溢れる魔力。
それと同時にいつの間にやら、国王様の周りには大臣さん、騎士団長さん、大司教さんが揃い、各々、武器を構えていた。
「本当にやるのですか? 国王様」
武器を構えつつ、騎士団長は国王様にそう問いた。
「……ゴルド。今は国王様と呼ぶのをやめてくれ。それと敬語もな。日々思っておったが……違和感たっぷりだ」
国王様は騎士団長さんにそう言って、はにかんだ。
騎士団長さんも、口角が一瞬だけ上がる。
「わかった……やる気なんだな? ケルム」
「あぁ……早く、俺の妻をあの魔神から解放しなきゃならんからな。……それにアリムを見ていたら、昔を思い出してな……気分がたぎってきたんだ…。オラフル、クリス……お前ら二人も付き合ってくれるだろう?」
大臣さんと、大司教さんは頷いた。
「まぁ、ケルムがその気ならですね……」
「久しぶりの戦闘ですからなぁ…調子を取り戻すのに、少々時間がかかるかと思いますが……」
国王様…もとい、ケルムさんは、俺にも向かってこう言った。
「アリム…この国…メフィラド王国のSSSランカー、今は3人だが……20年前は一人だった。そしてその者もいつしか冒険者をやめ、一時期この国にSSSランカーは居なくなった。だが他国から何か言われることはない、それは何故かわかるか?」
俺は首を振って見せた。
「ふふ、わからぬか……ならば教えてやろう。そのSSSランカーこそがワシ……いや、俺だっからだ! そしてそのSSSランカーは4人でパーティを組んでいたのだよ! そして今……その4人が本気を出す……見てろよ、アリム。これが前世代最大パーティ……"聖なる四銃士"の力だ」
そう言い終わると、国王様の足元には、何時ぞやと同じ巨大な魔方陣が出現した。
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