第154話 シャイターン


 

 日は勇者宣言より1日遡る。


 ここはシャイターンの本拠地。

 アリム達が攻略した場所とはまた別にある。

 そこには悪魔の幹部達が集まっていた。



「さあ! サマイエイル様! ご復活なさるのです!」



 そう言いつつ、メフィストファレスは勇者の剣を、ドロップロットで折り、破壊した。

 

 破壊された勇者の剣から、とても禍々しい紫色の魔力と魂の渦が起こりドロップロットの中に少しずつ入っていく。



「いいですよー! その調子っ!」



 ドロップロットの中に紫色の靄が全て吸収されたのを確認するとメフィストファレスはただでさえ、常人より裂けている口をさらに口角をあげて広げた。


 そしてゆびをパチリと鳴らすと、どこからともなく、美しい女性……いや、もしかしたら10代後半の少女ほどの見た目の者が横立った状態で出現した。

 彼女はメフィラド王国王妃である。

 ゆえに既に死んでいる。

 だが、その死体は全く腐ることがなく、生きていた時となんら見た目は変わってないのである。


 メフィストファレスはつぶやいた。



「(いやぁ…11年前、強制契約による不治の病で王妃さんを殺すことができて、本当に良かったですねぇ……。カルア姫でも良かったのですが、この死体を盗むよりは若干難易度が上がりましたしね。アモンさんの能力によって、この死体が腐らないようにされることは予言されてましたし)」



 メフィストファレスは二マリと笑いながら、ドロップロットをその王妃の死体に握らせる。

 そのドロップロットから、またもや紫色の靄が出現する。


 靄は王妃の死体の耳、目、口、鼻から爪の間や毛穴に及ぶまで、人体の全ての穴から入り込んだ。



「苦節300年、とうとうこの時が……!」



 全ての靄が次第に入り込んですぐ、一瞬空気が異常に冷たくなる。

 その冷たさにメフィストファレス含む幹部全員が喜びを感じていた。一部例外を除いて。


 刹那、王妃の死体がドロップロットを握ったまま、スクッと立ち上がる。

 身体からは他のこの世の悪魔や魔物からは感じられない膨大な魔力を放っていた。


 そして死体は目をおもいきり見開く、その瞳は暗い虹色だ。

 それと同時に背中からは七色の巨大な羽根が12枚生えてきた。

 神々しい。そう思う者もいるだろう。

 実際その姿は美しかった。


 王妃の死体……生贄がもともと美しいのもある、だがしかし今の姿は人間的な美しさでなく、まるで超自然の美しさを体現してるかのようなそれだ。


 そしてメフィストファレスはつぶやく。

 それにつられ他の悪魔も言う。



「ご復活、おめでとう御座います。サマイエイル様。我らが母よ」

「「おめでとう御座います! サマイエイル様、我らが母よ」」



 サマイエイルと呼ばれた王妃は、その場にいる悪魔達に向かってこう言い放った。



「ふむ…300年もの間、ご苦労だった。我はついに復活を遂げた。それと同時に……忌々しき人間どもに復讐をしようぞ」

「「ハッ!!」」



 悪魔全員が立ち上がり、胸に手を当て敬礼する。

 ここでサマイエイルは何かに気づいたようだ。



「メフィストファレスよ、アスモデンスとアスタロードが居らぬようだが?」



 それにメフィストファレスは答える。



「……人間どもに、倒されてしまいました」

「ふむ、そうか……。ならば復讐に、葬いの意も込めよう……して、戦争の準備はできておるのだな? アモンの予知通りに」

「はい、もちろんで御座います。アモンさん、頼みます」



 メフィストファレスは後ろに下がり、そのかわりアモンと呼ばれたフクロウ頭の男が前に出る。



「サマイエイル様、ワシの予言によれば、今までの計画は全て秘密裏に動いていたため、人間どもは、勇者と兵の準備が万全ではございません。故に勇者はおらず、兵も1日2日で集まる程度の兵量しかないでしょう。国王の召喚する、召喚魔物とSSSランカー達にさえ気をつければ我々の勝利は確実でしょう」

「なるほどな、して戦争は何時だ?」

「明後日でございます」

「ふむ、結構。我の準備運動にはちょうどいい。敵の兵はいくつだ、ベリアル」



 ベリアルと呼ばれた悪魔は、前に出てサマイエイルに跪いた。



「1万5千で御座います。そのうち我が幹部達に匹敵するような強さの持ち主は4~5名程もおりませぬ」

「ふむ、ではこちらの兵量はいくつだ? ベリアルよ」

「はっ、陛下。我が軍は魔物含め52万2千2百8十で御座います」



 サマイエイルはその美しい顔をにこやかに笑わせてこう言った。



「結構、ちと多いような気もするが、まぁいいだろう、人間どもをいたぶり殺してやれ。それで問題はSSSランカーなのだが………」



 サマイエイルはメフィストファレス以外の重圧なオーラを発している3人なよ悪魔に目を向ける。



「ルシフエイル、ベアル、バルゼブブ、お前達が相手しろ」

「はっ!」

「……っ……御意」

「わかりやしたぜ」



 サマイエイルと同じような姿をした者、ルシフエイルと、カエル頭を持つ蜘蛛男、ベアルと、蝿の王、バアルである。

 彼らはシャイターンの幹部の中でもかなり強力な3人だ。



「それでは2日後……憎きメフィラドの血とその配下どもを……潰すぞ」



 悪魔達は動き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る