第146話 選りすぐる血筋

 俺はゾーンを解いた。


 そういえば、ティールさんが話の途中だったなぁ。


 なんか、気になること言ってた。

 メフィラド一族は"勇者を探す"って言ってたっけ?

 勇者を探す…か。

 なんとなく意味はわかるけれど、どうやって探すのだとかがわかんないや。

 こんなことになるんだったら、もっとよくいろんな本を読んでおくんだった。

 せっかく図書館の本をすべてラーニングしたのにね。

 まぁ、時すでに遅しか。


 ティールさんに訊こう。



「ティールさん、その…"勇者を探す"ってなんですか?」

「その言葉の通りの意味だよ。メフィラドの血を含む一部の人間は"勇者を探せる"んだ」



 その、どうやって探すかがわかんないんだけどなぁ。



「勇者を探すって…どうやって?」

「メフィラド家の人間は…他者のステータスを見れるんだよ。ステータスを見て見分けるんだ。生まれつき、そういうスキルを持ってるんだよ」



 なんだって? 他人のステータスを見れるだって?

 じゃあもしかして、ルインさんとかも俺のステータスを既に把握して?


 いや、違う。

 カルアちゃんもルインさんも、俺のステータスをもともと知ってたようなそぶりは今まで、一切見せなかった。

 ますます分からない。

 

 その考えを読んだのか、ティールさんは話を続けた。



「だけど…他人のステータスを見れるのはこの国じゃ、僕ただ一人だけだからね。どうやら、昔からメフィラド家に一番最初に生まれた者のみが、他人のステータスを見れるらしいんだよ」



 なるほど、だからカルアちゃんもルインさんも、国王様も、俺のステータスを見れないのか。


 ティールさんは滑らかな口調で話を続けている。



「メフィラド家が国王を代々しているのは、勇者を見つける義務があるからなんだ。昔、神様にそう定められ、ステータスを見れるスキルを授かったらしい。こういう時のためにいち早く勇者を見つけるためにね……だけれど……勇者は過去299年間一人も見つかっていないんだ。この国ではね」



 そう言いながら、彼は俺をジーッと見つめた。

 そして、はにかんだ。



「そんな状況に君が現れた。僕もお父様も、アリムちゃんがちゃんとした勇者じゃなくても、悪魔神には勝てるような気がしてるんだ。ふふ」

 


 おぉ、期待されてる。


 ルインさん、オルゴさん、リロさん、ミュリさんは俺を、本当の勇者じゃないと知って不安気な顔で見てこちらを見てくるけどね。



「ちょっと待ってください! 勇者じゃない? ならアリムちゃんは戦争に出すべきじゃないですよ! ティール様……アリムはまだ子供ですよ?」

「本当に…大丈夫なんですか? 本当の勇者じゃない……」



 ミュリさんとリロさんは俺を庇うようにティールさんに抗議をした。

 けれど、ティールさんは若干の笑みを浮かべながら答える。



「そう? でもステータスは…正直、SSSランカーの皆さんより強いよ? アリムちゃんは」



 俺やミカ、カルアちゃんも頷いた。



「ほ…本当か?」



 オルゴさんは、俺に向かって疑いを持ち呟いた。

 しゃーない、このままだったらこの人達を心配させたまま戦争に行くことになる。

 どうせこの人達も戦争に参加するんだろう。

 俺を心配しすぎて彼らの戦闘に支障がでても癪だ。

 いっそ、ステータスを見せてやろう。



「ふふっ、本当ですよ! これ…見てもらえます?」



 そう言いながら俺はトズマホを差し出した。

 俺のステータスを映した状態で。



「これはなんだい?」

「自分のステータスを映せるアイテムですよ」



 ルインさんの問いにそのまま答える。

 そう聞くなり、4人はトズマホの画面を覗き込んだ。

 スキルは表示していない。


 俺のステータスを見た4人は、それを見て硬直していた。

 オルゴさんに至っては、外れんばかりに顎が開いている。



「僕も最初にアリムちゃんのステータスを見た時、一昨日もう一度見ててみた時には本当に驚いたよ」

「いや、お兄様、これは驚くって段階のものじゃ…」

「あ…アリム、どうやったらこんなに……」


 

 顎を伸ばしたオルゴさんをよそに、数分間の間、俺のステータスを十分に見た彼らからトズマホを返してもらった。

 そのあと、口々に皆んなは俺のステータスの感想を述べていっていった。



「……アリムちゃん、僕らはいらない心配をしてたみたいだね」

「ねぇー…ほんと。まさか、あの時会ったアリムちゃんが……さ」

「私達が口出しするような話ではなかったのでしょうかね…」

「あぁ、せいぜい、アリムの邪魔にならないようにしないとな」



 心配してやってきた筈の彼らの顔は、もはや数分前とは全く違う面がまえになっていた。

 俺に対する大きな心配なんて、心には既にないだろう。

 むしろ自分達の無力さを悟ったような顔をしてる。


 これじゃいかん。

 俺は一言声をかけてあげることにする。



「…….ねぇ、皆さん、戦争が終わったら修行にでもいきませんか?」

「へ? 修行?」



 唐突な俺の提案に、皆んなは戸惑う。



「そーです! ボクがここまで力を手に入れた方法を教えるので、それをここにいる皆でやるんです!」



 俺は膨らみかけの胸を張り、腰に手を当ててドヤ顔をした。

 すると、俺以外のみんな、互いが目を見合わせ始めた。

 ん? ビミョーな空気。

 この場の空気を変えるのには中々に良い提案だとおもったんだけどね? ダメだったかな?

 せめた誰か笑ってでもしてくれれば……。

 


「ふ……くくっ……がははははは」



 オルゴさんは大口を開けて笑い出した。

 ほっ…良かった。狙い通りに笑ってくれている。

 運良く、彼のドツボにはまったんだろう。



「ち…ちょっと、オルゴ!」

「ひー! いや、すまんすまん。まさかそんな事言いだすとは思わなかったから……」



 オルゴさんは未だに腹を抱えて笑っている。

 よかった、空気は変えられた…けど…。


 むぅ…。なんか癪にさわる。

 俺はすかさず膝カックンをして、オルゴさんを転ばせた。理由はない。



「どわっ!?」



 そう言って、転んだオルゴさん。

 すぐに立ち上がり、俺に転ばせた理由を訊いてきた。

 なんで俺ってわかったし。



「なんで転ばせたんだよ!」

「……なんとなくですよー」



 俺はできる限り、全力で無邪気なように見せかけた笑顔を作り出し、表情に浮かべた。

 そのおかげか、オルゴさんは黙った。



「……でも、きっと、修行はしましょうね! 約束ですよ?」



 俺は念のためそう言っておく。

 ほら、ゲームとか漫画でもラスボス戦前ってこういう約束事とかするじゃん?

 それ、憧れてたんだよねぇ。



「うんうん! 私、アリムちゃんとなら修行頑張っちゃうよ!」

「わ…私も頑張れますよ!」



 俺の笑顔が良かったのか、それとも約束という言葉にうごかされたのか、リロさん、ミュリさんは乗ってくれた。



「はは、ボクも、行かせてもらえる?」

「ボクも興味あるな」

「お、俺も行くぞ! 騎士は強くなってこそだ」



 ルインさん、ティールさんも乗った。

 カルアちゃんは…?

 俺はカルアちゃんに顔を向ける。

 


「あ…アリムちゃん、私もですか?」

「うん、国王様が許可すればだけど」

「行きたいです!」

「わかったよ」



 カルアちゃんも乗ったね。

 あとは、ミカだ。



「ミカは…?」

「…行くに決まってるじゃない」



 そう不満げに呟いた。

 見た目の態度ではそれでもあまり乗り気じゃなかったみたいだけど、それとは別に【一人にしないでよ、寂しい】と【アリムと離れるの嫌】と言うメッセージが送られてきた。

 可愛い。



「じゃあ全員、戦争終わったら修行しようね!」

「うん!」


 

 良かった、みんなの顔色が最初やさっきとは全然違う。良かった。

 

 話に区切りがついたと思ったのか、ティールさんが、部屋のドアを開けた。



「ルイン達の不安も取れたし、僕は戻るよ。アリムちゃん、明日、頑張ってね!」



 そう言って彼は去っていった。

 ルインさん達四人も、俺に一言ずつ声かけをすると、部屋から去っていった。

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