第145話 勇者の剣の効力
「あたたたた…な…何をするんだ、アリム!」
お尻からすっ転んだオルゴさんは、尻を撫でながら、俺に抗議した。
「殴らないとは言いましたよー、転ばさないなんて言ってませんけれど」
「ぐぬぬぬ」
一同大爆した。
ミュリさん、少し笑いすぎ。
まぁ、場が和んだのは良いことだ、別にそれを狙ってやったわけじゃないけどね。
「あはははは…ところで、だ。アリムちゃん」
そう、ティールさんは切り返した。
「一応、確認なんだけれど…アリムちゃんは勇者の剣を抜くことができるんだね?」
「ええ、まぁ。見ます?」
俺が出した問いに、首で頷いたティールさん。
「あぁ、是非見せてよ」
「わかりました」
俺はここにいる全員の前で大勇者の剣を取り出し、その刀身を鞘から抜き出した。
確かに抜け出せたのだが、何やら文献とは全く違う反応をした。
本来、勇者の剣は"戦いに使わず、見せる"という目的を持って抜いた時、その刀身はここ良いほどの白い輝きで満ちてるらしいんのだ。
でも、この大勇者の剣光ってない。
いろいろ改造してるとはいえ、基本的な性質はオリジナルの勇者の剣と変わんないはずなんだけどなぁ。ミスしちゃったかな?
本来の勇者の剣の反応を知っているのか、カルアちゃん、ルインさんは驚いていた。
ただ、ティールさんだけが何かを知っているかのように、只々にっこりと笑っていた。
「ほ…本当にアリムちゃん、勇者なんだぁ……」
「す…すごいですね…」
何も知らないであろう二人は、俺が剣を抜けたことに感嘆していた。
「ど…どうゆうこと?」
剣の本来の反応をしっているそぶりを見せていた者の中で、最初に声を出したのはルインさんだった。
「ん? ルイン、何かおかしい事があるのか?」
オルゴさんが、そうルインさんに問いた。
ルインさんは、それにつっかえつっかえで答える。
「オ…オルゴ、本当はな、勇者の剣は…人前で抜いたら、刀身が光るはずなんだよ」
「……ん? そんな効果、俺は誰にも教わらなかったぞ?」
「わ…私達もだよね? ミュリ」
「え、ええ」
そんな3人の疑問。
ティールさんが答えた。
「3人とも、知らなくて当たり前なんだよ。勇者の剣の刀身が光る事はこの国の、門外不出である最重要な文献の一部にしか明記されていないことなんだ。僕ら、"勇者を探す王家"……メフィラド一族の者にしか知らされないことなんだよ」
ティールさんの言う通り、俺が見た勇者の剣を作る時に活用した文献は、かなり丁重な扱いを受けていた。
なるほど、あの文献にしか刀身が光ることは明記されてないのか…。
俺は一旦、ゾーン状態に入り、すばやく、勇者の剣が光ることについて、トズマホで検索してみた。
だけれど、ヒットしたのはやはり、俺が勇者の剣を作る時に読んだ文献の内容のみだった。
……そうだ、忘れてた。
俺、まだ一度も大勇者の剣・勇者の剣を鑑定してないじゃん。
アイテムマスターは…ただ、作って終わりなんだ。
メフィストファレスに作らされたあの剣然り、俺は作っただけじゃ、俺の作った物の詳細を知りえないのは今後、注意しなきゃね。
てなわけだから、ゾーン状態のまま、俺が作った大勇者の剣を鑑定してみた。
【「大勇者の剣」
・状態→ 最良
・出来→ 最高
・価値→ 伝説
・材料→ ミスリル
オリハルコン
エンチャント
・種類→ 封剣
・説明
:攻撃力+1170(390×3)
:剣としての性能を超物的に上昇させる(切れ味、耐久性、攻撃力3倍)
:この剣に所有者以外の発する魔法は効かない。
:悪魔・魔神に対し、本来の10倍のダメージを与える。
:ある程度弱った魔神ならば、この剣に封じ込めることができる。
:この剣でつけた傷は所有者の任意により瞬間的に塞がる。
:この剣はとある例外を除き、[ブレイブ]の称号を持つ者にのみ鞘から抜くことができる。
:[ブレイブ]の称号を持つ者がこの剣を鞘から抜いた場合、この剣は悪を滅し、人々を魅了する光りを放つ。
:程よい軽さにする
:壊れない
:常に最良の状態を保つ 】
ブレイブ? なんだそりゃ。
やっぱり俺にはそんな称号はない。
この称号について詳しく見てみた結果、ステータスや経験値に補正がかかるという効果があるらしかった。
また、この称号は先天性のものなのだそうでブレイブの称号を持つ者はアナズム中に同時に3人しか存在しないらしい。
……つまりあれだ、この称号こそが勇者の証みたいなもんだったんだ。
本来だったら俺は勇者なんかじゃない。
それに今回、王様達はこの開い国内に1人しかいない[ブレイブ]を持つ人間を2日間で探さなきゃいけなかったわけだ。
国内の人間全員を一人一人見なきゃいけないし、それに見つけたとしてもその人が戦闘経験があるとは限らない。
……これ無理ゲーじゃね?
あぁ、それが相手側の作戦か。
この作戦、どうせメフィストファレスとかいう奴が考えたんだろ、振る舞い的に知将っぽかったし。
そうか、だから王様は勇者(仮)として俺を選んだんだ。
多分…王様は勇者の剣の効果に書かれていた、剣を鞘から抜ける勇者以外の"例外"を知っていたんだ。
作った人間は勇者の剣を抜けることを。
勇者の剣を俺に作らせ、俺が勇者の剣を抜ける条件を満たし、その上で国民に俺が勇者の剣を抜くとこを見せ、勇者として認識させる。
国王様も考えるわー…。
ていうか、それしか方法がないか。
うーん、うまく敵味方共に俺は、良いように使われてる気がするけれど仕方ないよね。
アイテムマスター、本当に便利だもん。
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